第4話 愛猫が神だった件


 私の名前は黒姫くろひめ 寧子やすこ

 28歳、ブラック企業勤めのOL。


 ある日愛猫とともに、異世界に転移(転生)した。……なぜか、幼女の姿で。


「みーみー」


 場所は、洞窟の中。

 祭壇の部屋みたいな場所。


「とりあえじゅ……状況はーくしないと」


 舌っ足らずなのは、わざとではない。

 私の体は現在、推定五歳なのだ。

 こうなってしまうのは、仕方ないのだ。恥ずかしいけど……。


「みー」


 私は、神に出会い、そして異世界に送り込まれた。

 でも、聖女召喚の儀式に巻き込まれてしまった。


 召喚主である、バカデカント王太子の会話からわかったことは……。


・ここは危険な森の中であること

・私は召喚された聖女であること

・しかし召喚主は私を捨てたこと


「森のなか……」


 この洞窟に、さっき魔物が襲ってきた。

 あんな感じのが、外ではうじゃうじゃいるのだろう。


 とはいえ、愛猫のましろがいれば、魔物は倒せるようだ。


「君……なんだか、強いみたいだし」

「みっ」


 えっへん、とばかりに、ましろが胸を張る。可愛い。

 正直……一人でこの状況に放り込まれてたら、危ないところだった。


 精神的に病んでいたと思う。

 現世に未練がないとはいえ、ここは全く知らない土地。

 私からすれば、外国みたいなところだ。


 しかも、魔物(推定)が居る分、外国より治安が悪い。

 そんな場所に、幼女の姿で放り込まれたのだ。一人だったら恐怖でパニックを起こしていただろう。


 ましろがいるから、落ち着いてられる。


「ありがと、ましろたん」

「み~♡」


 膝の上の白猫を撫でながら、現状把握を続ける。

 自分が危険な森の中にいて、身寄りが無いことが判明した(召喚主であるバカデカントは私を捨てて出て行ったし)。


「早めに……この森、出ないとね」


 私の身につけてるものを、見やる。

 白いワンピースが1枚。のみ。食べるものも、飲み物もないのだ。


 早晩、餓死(または飢え死に)してしまうだろう。

 一刻も早く、食料と水、そして安心して眠れる場所が必要。


 それらを手に入れるためには、ここを出て、街へ行く必要がある。


「方針、決まった……。次は……何できるかの、確認ね」


 私にできることを、きちんと把握しておこう。

 あの下級神とやらは、私にましろだけでなく、色々力を与えるといっていた。


 どんな力を持ってるのか、今の私ではわからない。

 こういうとき、異世界漫画だと……。


「すてーたす……おーぷん!」


~~~~~~

【名前】黒姫くろひめ 寧子やすこ

【種族】半神デミゴッド

【レベル】1

【HP】100(+4900)

【MP】100(+4900)

【攻撃】10(×100)

【防御】10(×100)

【知性】10(×100)

【素早さ】10(×100)

【加護】聖女の加護、猫神の加護

【スキル】

・アイテムボックス(最上級)

・鑑定(最上級)

【固有スキル】

・聖女スキル

 結界(lv1)

 治癒(lv1)

 浄化(lv1)

・猫神スキル

 猫召喚

~~~~~~


「なんか……いっぱいでた!」

「みゃっ!」


 ぴょんっ、とましろが膝から降りる。


「ま、まってよー」

「み!」


 てててー、とましろが出て行ってしまう。

 ……一人にしないで欲しい。


 でも、ましろ、というか猫ってそういうもの。

 気まぐれに居なくなってしまう。


 ……私を置いてくことって、ない……よね?

 急に不安になってきた。大丈夫かな。


「ま、ましろたんっ。帰ってきて~」

「みっ!」


 しゅおんっ、とましろが私の膝の上に現れる。


「ええっ? な、なんで?」

「みー!」


 用事が無いなら、喚ぶなとばかりに、ましろが去っていく。

 ……もしかして、ステータスに書かれてる、この【猫召喚】ってスキルの効果だろうか。


 というか、ステータス見たけど、数値の部分については、よくわからない。

 まあ、でもレベル1ってことは、最弱のステータスってことでいいだろう。


 ゲームだと(母が生きていた頃、一昔前のRPGはやったことある)、ゲームスタートすると、最初はみんな最弱(レベル1)だもの。


「スキル……【鑑定】!」


~~~~~~

猫召喚

→契約してる猫を、手元に召喚する

~~~~~~


「なるほど、これね」


 このスキルがあれば、いつでもましろを、手元に呼び出せるみたい。

 ほっ……。


「鑑定……便利」


~~~~~~

アイテムボックス(最上級)

→物体であれば、無制限に入れること可能。容量、大きさを無視できる。


鑑定(最上級)

→対象となる物体の、秘匿されている以外の情報、全てを読み取れる。


聖女スキル

→聖女の加護を持つものに、与えられしスキル。結界、治癒、浄化がセットされてる。

結界lv1→前方に、防御の盾を作る。

治癒lv1→対象者1名の、擦り傷を治す。

浄化lv1→対象の毒を、浄化する。

~~~~~~


 鑑定のおかげで、ある程度、自分のできることがわかった。

 鑑定ほんとうに便利だ……。それに、アイテムボックスがあってたすかる。


 聖女スキルも、有用だ。身を守れるし、もしかりにケガしたときに、治すことができる。

 異世界に来て一番怖いのは、ケガや病気だ。


 飢えや渇きもそうだけど、でも、こっちでケガ病気すると、そのまま死に直結してしまうから。病院があるか不明だし、あっても治療を受けさせてもらえるかわからないし。


「1。ってことは、鍛えれば、レベル上がるのかな……?」


~~~~~~

スキルlv

→使用する、あるいは、魔物を倒して経験値を稼ぐことで、レベルは上がり、多様な効果を発現する

~~~~~~


 やっぱりそうみたい。

 となると、聖女スキルは、早めにあげていかないと。

 どんなケガ、病気をするかわからないし。身を守れるようにならないとだし。


「あとは……ましろたんを調べるか……」


 あの毒蛇(推定モンスター)を、一撃で倒してしまうほどの、パワーを持ってるんだ。

 きっとただの猫ではない。


 私のステータスに記載されてる、【猫神】にも、何か関係してるかもしれないし……。


『条件を達成しました』


 ……?

 そのとき、頭の中に、女の声が響いた。な、なにこれ……?

 『条件を達成しました』……?


『レベルが上がりました』


 ……はい?

 レベルが、あがった……?


 え、どうして……?


『条件を達成しました』

『条件を達成しました』

『条件を達成しました』……


 その後も、謎の『条件を達成しました』アナウンスが流れ続けた。

 その他にも、スキルレベルがどうのこうって発言も聞こえてきた。


 不安になった私は……とっさに、


「ましろたんっ、帰ってきてっ」


 猫召喚を使用した。

 目の前には白い猫……じゃあない。


「ぎゃっ! ま、ましろたん……ち、血でべったり!」


 白猫のましろが、ペンキを頭からかぶったみたいに、真っ赤に毛が染まっていたのであるっ。


「いま、治癒を……」

「みゃっ!」


 ぷるぷる、とましろが首を横に振るった。

 ……すっごく今更だけど、この子って……頭良すぎない? 普通に私と意思疎通してるけど。


 まあ、ただの猫じゃあないなら、意思疎通できて当然か。

 でも……首を横にふるって?


「治癒は……いらないの?」

「みっ!」


 今度はこくんとうなずいた。

 

「じゃあ、なんで血だらけなの?」

「みゃっ!」


 ふふん、とましろが胸を張っている。

 えー……わからない。どういうこと……?


 自分の血じゃないってことは……相手の血……?

 相手? 誰……?

 もしかして……魔物?


 さっき、ましろは一撃で、蛇をやってつけた。

 ということは、この子は魔物を倒す力がある。


 ……つまり、ましろは、今どこかへいって、魔物を倒してきた?

 ましろが魔物を倒したから、私のレベルがあがった……とか?


 ……確かめないと。


「すてーたす、おーぷん!」


~~~~~~

【名前】黒姫くろひめ 寧子やすこ

【種族】半神デミゴッド

【レベル】91

【HP】9100(+4900)

【MP】9100(+4900)

【攻撃】910(×100)

【防御】910(×100)

【知性】910(×100)

【素早さ】910(×100)

【加護】聖女の加護、猫神の加護

【スキル】

・アイテムボックス(最上級)

・鑑定(最上級)

【固有スキル】

・聖女スキル

 結界(lv3)

 治癒(lv3)

 浄化(lv3)

・猫神スキル

 猫召喚

~~~~~~


「れべる91!?」


 お、おかしい。

 さすがに、レベル1からいっきに91は、おかしすぎる。

 

 いくら魔物を倒してきたからって、そんなにレベルアップするの?

 というか、魔物を倒したのはましろであって、私じゃあないのに……。


 ましろ、やっぱりオカシイ。


「か、鑑定!」


~~~~~~

【名前】ましろ

【種族】猫神バステト

【レベル】∞

~~~~~~

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