第3話 【Side】下級神トゥアハーデ

 わたしは下級神トゥアハーデ。

 最高神さまから仕事を委託されてる神の一柱だ。


 わたしの今回の仕事は、現実世界から人を一人、送り込むというもの。

 ちょっちトラブルあったけども、一人の人間を、無事異世界に送ることに成功……!


 今日も良い仕事したぁ~。

 って、んん?


 神スマホがプルルってなってるぞ?

 誰だろ……って、げええ! 


 相手は、わたしの上司である神様!

 最高神さまだ!


「も、もしもーし! なんすか最高神さま? え、仕事? もっちのろんで、ちゃんと送り込みましたよ! 聖女をひとり!」


 本当は一人と一匹だけども。

 ま、そこは許容範囲っしょ!


 最高神さまから、好きなものをプレゼントしてやれって言われてたし~。


「ええ、新しい聖女は、ええ、バステト神を一緒に連れてきたいと、ええ」


 あの女性……たしか、黒姫くろひめ 寧子やすこさんか。

 ヤスコさんの連れていた猫は、バステトっていう、えらーい猫の神さまだ。


 バステトさまは、なんかいろいろな事情で、地球に子猫として転生していたらしい。

 そんときに、あのヤスコさんにお世話になったんだって。


 で、ヤスコさんを助けて欲しいって、バステトさまから、最高神さまに依頼があった。

 で、最高神さまから、わたしに仕事が降りてきた……って次第。


「はいはい。ええ、ちゃーんと転生した……は? ちょ、は!? 聖女召喚に巻き込まれた!? ええ!?」


 お、オカシイ……。

 予定では、裕福で、優しい公爵家のもとに、送り込まれるはずだった。


 でも……異世界の聖女召喚と、ちょうど時期がかぶってしまって、転生先がズレてしまったぁ!?


「え、えと……聖女召喚の時期……は、把握してませんでした……はい……すみません……」


 最高神さまが、電話の向こうで、めっちゃキレてる……!


「え、は、は、はい。その……地上への干渉は、できないので……連れ戻すことはできない……ひぃ! すみません! え、転生先ですか……? 直ぐ調べます!」


 わたしは神パソコンを開いて、転生先を調べる。

 なあぁ……!?


「あ、奈落の森アビス・ウッド……でした……」


 奈落の森アビス・ウッド

 世界四大秘境の一つだ!


 Sランクの、強大凶悪な魔物がうろつく、秘境の森!

 別名、死の森……!


 そこに、バステト神に愛されしヤスコさんを、わ、わたしが送り込んでしまったというわけで……ひいぃいい!


「すみません! すみません! え、謝らなくて良い……? バステト神が直ぐに向かったから……よ、よかったぁ……」


 良かったじゃあない、と最高神さまが、電話の向こうでキレてるし……!


「しゅみましぇん……はい……はい……え!? しかも、幼女の姿になってる? お、おかしいな……召喚と転生が同時に行われたせいで、バグが起きたのかな……」


 いずれにしろ、とんでもないイレギュラーな事態に、ヤスコさんは巻き込まれてしまったようだ……。


 ヤスコさん……強く生きて……。


「え? 召喚の儀式を行ったのは……? はいはい、あ、ゲータ・ニィガ王国ですね」


 王国制度をとってる国だ。貴族がいて、伝統を重んじる国。

 比較的治安はいい国ではあるが、それゆえに不敗が起きやすい。


「ゲータ・ニィガの王太子、バカデカントってひとがヤスコさんを喚んだみたいです。ええ、バステト神はお冠? 王子が酷いことした? ばっかでー」


 あーあ、バステト神さまって、結構神格(神様としてのくらい)が高い神さまなんだよ?

 その神様をおこらせたんだから、破滅するのは目に見えてる。


 終わったな、あの国。


「どーするんすか? え、ほっとく。わかりやしたー」


 どうやらバカデカントの、ヤスコさんへの対応がカスだったらしい。

 だから、罰を与えると、最高神さまがそうおっしゃっていた。


「はい、はい……。これからは気をつけますので……ええ、ハイ……すみませんでした……」


 最高神さまは、わたしをお許しになってくれた。

 サンキューゴッデス。


「はあ……」


 ヤスコさん、バステト神が一緒だから、まあ大丈夫だろうけど……。

 強く生きてくださいね。

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