第5話 感情と共に生きる私の居場所

感情のアップダウンが激しいことは、昔から私の悩みの種だった。怒り、悲しみ、不安──それらの感情に飲み込まれるたびに、自分がどうしようもなく弱い存在に思えてしまうことがあった。けれど、最近になってようやく気づいたことがある。それは、感情を完全に「なくす」ことも「抑え込む」ことも必要ではないということだ。むしろ、感情と共にどう生きていくかを学ぶことが、私にとって本当の意味での成長なのだということ。


ある日、職場での小さな出来事がきっかけで、私は再び感情に振り回されていた。同僚の何気ない一言が胸に刺さり、いつものように「何でそんなことを言うんだろう」と考え込んでしまった。でも、その日は少し違った。「これは本当に私に対する攻撃なのか?」と自分に問いかけてみたのだ。驚いたことに、それだけで少し気持ちが楽になった。今までは感情の波に飲み込まれるばかりだったけれど、少し距離を取ることで、波を見つめることができた気がした。


もちろん、すべてがうまくいくわけではない。イライラが募る日もあるし、胸が締め付けられるような悲しみに襲われる夜もある。それでも、自分の感情を「悪いもの」として切り捨てるのではなく、「これが私なんだ」と認めることで、心の中に少し余裕が生まれるようになった。


「居場所」という言葉は、私にとって長い間、外部の環境や人間関係を指していた。でも今は少し違う。居場所は、誰かが用意してくれるものではなく、自分の心の中に作るものだと感じている。自分の感情を受け入れ、自分を許し、そして小さな一歩を踏み出していく。そのプロセスこそが、私の居場所作りの一部なのだ。


最近では、自分の感情がアップダウンすることを「特別な能力」と考えるようにしている。他の人には気づけない細かなことに敏感であるというのは、時に辛さを伴うけれど、それは私だけが持つ感性でもある。その感性を活かして、誰かに共感したり、小さな幸せを見つけたりする力に変えることができるのではないかと思う。


仕事の中でも、少しずつ自分なりの「適応」を見つけるようになった。雑音やストレスが多い環境でも、自分が好きな部分を見つけてそこに集中する。息苦しくなったら山に行く。そんな小さな選択が、私の心を軽くしてくれる。


感情と共に生きることは、決して簡単ではない。でも、それは「弱さ」ではなく、自分の中にある大切な一部だ。感情を否定するのではなく、少しずつ受け入れながら歩んでいく。それが、私にとっての「生きる術」になりつつある。


そして、今も私は居場所を探している。でも、その居場所はきっと「ここだ」と決めるものではなく、日々の中で少しずつ作られていくものなのだろう。感情と共に、これからも私は自分の居場所を探し続ける。そして、どんな日でも「これでいい」と思える自分でありたい。

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居場所を探して:感情の波と共に生きる 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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