第5話



 俺が状況理解に努めている間、女子たちは自己紹介していた。


「時田燈子です。冬汰とは、保育園から一緒の幼馴染です」

「ウチは栗原美希でぇーす。ニイとは血ぃ繋がってない妹」

「高瀬明依です。この中では一番年上かな? 冬汰くんのバイト先の先輩です」

『チョコっていうニャ。よろしくニャ。フータとはネットのフレンドニャ』


 よろしく~って感じで和気あいあいとしている。なんで話が弾むんだよ。

 こういうのって、殺伐としないの?

 一気に付き合ったからみんな平等、横一線だからライバル関係とかでもないってことなの?


 俺をよそに、四人の会話が進んでいる。


「冬汰とはこれからもずっと一緒にいるって、なんか想像できた。一緒にいないほうがイメージができなくて、隣にいないって考えるだけで切なくなって……そこで『ああ、私冬汰のこと好きなんだ』って自覚した」

「やば。トーコちゃんのエピ、ガチでニヤけるんだけど。センパイはー?」


「わたし? 冬汰くんって頼りがいあるでしょ。見かけによらず」

『「「わかる」」』


「一個下のくせに、わたしの心配とかまでしてくれるし、『俺のこと、頼ってくれても全然大丈夫っすからね』って、言われたときに、キュンとビビビビが同時にきたんだよね。年下のくせにさ、さわやかスマイルでそんなこと言うの、ズルいよ」


「冬汰って、言葉にしますよね……キザというかそういうクサいこと言うし。美希ちゃんは?」

「ウチ? 本能的にってカンジ? ニイは結構顔いいじゃん。それに、お風呂上がりのムキってるところ見ちゃって『ニイとの子供ならほしいかも』って……中二なのに、ヘンかもだけど」


「そんなことないと思う」

「うん。それって女子にしかないセンサーだよね~」


 本人がいる前で、俺のことを好きになったエピソードトークされると、くすぐったい。むずむずしてくる。

 四人が仕掛け人なら、こんなことをわざわざしゃべらないだろう。だって、嘘告白なんだから好きでもなんでもないんだ。

 ずっと待ってるけど、仕掛け人らしき人物は出てこない。

 だから、本当に本当に本当に、本っっっ当に、ドッキリじゃないんだ。


 手の平を返されるかも、とかそんな心配しなくてもいいし、様子を見て笑う人物はいないんだ。


 ……ドッキリじゃないとわかった今、俺が取るべき行動はひとつ。


 さっき言った言葉は、俺の真剣な気持ちだ。誰一人悲しい思いはさせたくない。それに偽りはない。


 本命じゃなくていい、という彼女らの発言に甘えてしまうことになるけど、責任を持って彼女たちと付き合っていきたい。


 俺は頭を下げて本気で本心で覚悟を口にした。


「みんなと全身全霊で向き合います。なので、四人とも、俺と付き合ってください」


 みんなの本気の恋に、俺は不誠実な選択を取ったのかもしれない。

 でも。

 本気でみんなを幸せにしたい。

 俺もみんなのことが大切で好きだから。


「「「「はい」」」」

「誰とも差はつけないし、大好きだから一人一人平等に……その……」


 口にするのは勇気が必要だったけど、宣言しよう。

 みんな、こんな俺のことを好きだって告白してくれたんだから。


「愛します」


 自分でも顔が赤いのがわかる。


「は、はい……っ」

 燈子は照れたようにうつむいた。


「た、ったりまえだし……」

 美希も面食らったあと、それだけどうにか言って、顔を背けた。耳が赤いので、照れたらしい。


「み、みんな照れさせてどうする気なのかな? んもう……あ、暑い……」

 先輩も頬を朱に染めながら、手を団扇みたいにしてパタパタと仰ぐ。


『フータ、ボクも愛してるニャ』

 やっぱおまえだけ軽いよな? リモートだから、みんなのこの様子や臨場感や空気感が伝わってないみたいだ。まあいいけど。


 こうして、俺たちの恋人関係がはじまった。






 俺の日常生活に大きな変化はなかった。


 朝起きて美希におはようと言って、学校の支度をする。

 いつもの待ち合わせ場所に行けば、燈子がいて、二人並んで登校する。

 放課後、バイトがあれば明依先輩と顔を合わせて、仕事を頑張って終われば一緒に帰る。

 千夜子とは夜一緒にゲームする。


 これまでと違うのは、関係が前進したため、小さな刺激があることだった。


 手をつなぐ。

 キスをする。

 デートに行く。

 そして、体を重ねる。


 燈子も美希も明依先輩とも、誰も遅れることはなく、誰かを置き去りにしてステップを踏むことはなかった。

 会えば全員が大好きなカノジョで、俺は誰かを特別に贔屓したりしなかった。


 ただ千夜子だけはやっぱり変わってて、肉体的な繋がりよりは精神的な繋がりを大切にしたいみたいで、キスしたりしたいわけじゃないとか。何か何までデジタルなやつだった。


 普通のカップルみたいに、機嫌を損ねたり、ケンカしたりもした。

 けどそれは、どこのカップルも経験するようなことで、複数と付き合っていることが原因というわけじゃなかった。


 彼女たちを幸せにできているかはわからない。

 接しているとき、俺は楽しいし幸せだから、この気持ちを少しでもお返しできればいいなと思って、今日も四人と同時に付き合っている。

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【短編】幼馴染&義妹&先輩&ネトフレから同じ日に告られた話 ケンノジ @kennoji2302

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