第2話 獣族の王女
白い髪の美少女はミカと名乗った。
どうして彼女が僕の飼っている猫の名を名乗るのだろうか?
僕が疑問に頭を悩ませていると、白い髪の少女は僕の頬をなめた。
あまりのことに僕は心臓が口からでそうになる。でもこの感覚、覚えがある。このざらざらとした感覚は猫のミカの舌と同じだった。
「君はミカなのか……」
僕はその言葉を絞り出す。
「そうだよ、私はミカだよ。本当の名前はミカエラ・ムーンシャドウっていうの。この亜人族の国
ふふんっとミカは大きな胸を張る。それはそこいらのグラビアアイドルよりも大きくて豊かなものだった。
「ご主人が私の呪いをといてくれたんだよ。ありがとうね♡♡」
今度はミカは僕の頬にキスをする。こんな美少女にキスをされて、天にも昇る気持ちになる。
ミカエラ・ムーンシャドウことミカは僕にいきさつを説明した。
ミカの住む
軍事的勝利をえられないことをさとった帝国は魔女エミリアを派遣した。
魔女エミリアは月影王国の首都に潜入し、王族の一人にある呪いをかけた。
その王族というのが、ミカだった。
ミカは猫の姿にされ、異世界に強制的におくられたというのだ。
「異世界の人間に愛されるのが、呪いを解く条件だったみたいなのね。ご主人のおかげでミカはもとにもどれたんだよ」
とあらためて頬に感謝のキスを受けた。
あまりにも荒唐無稽な話に僕は、これは夢ではないかと思い、頬をつねった。
しっかりと痛かった。
「ほら、命の恩人のご主人にお父様が会いたがってるんだ。私についてきてよ」
僕はミカに手をひかれて、その部屋をでた。
連れてこられた部屋はファンタジーの映画なんかでよくみる大きな広間であった。
そこにはミカのような獣族のほかにいわゆる
一番奥の玉座に獅子顔の人間が座っている。座ってはいるがその肉体はかなり鍛えられたものだというのがわかる。
たぶん、その人がミカの父親であるラファエロ王だろう。
「お父様、ご主人じゃなくて佐藤広樹さんを連れてきたよ」
ミカはペコリと頭をさげる。
僕もつられて会釈する。
「そうか、そなたがミカエラを救ってくれた恩人か。感謝する。このラファエロ、その恩にむくいるため、そなたの望みをなんなりとかなえてやろう」
よくとおるバリトンボイスでラファエロ王は僕にそう告げた。
あまりの展開に僕の脳はショートしそうだ。
なんでも願いをかなえてくれるっていわれても、なんて答えたらいいのだろうか。
ちらりとミカを見るとにこにこと微笑んでいる。
それにしてもミカの美少女ぶりには驚かされる。
猫のミカもかわいかったけど、ケモ耳娘になったミカもかわいいな。
こんな子が彼女だったらいいなと僕は思った。
「ご主人、それがいいよ」
まるで僕の心を読んだかのようにミカが小声でささやく。
そんなこと言っても怒られないだろうか。
僕のようなただのオタクが王女様をくださいなんて言ったら、このライオンみたいな王様はどうするだろうか。
どこの馬の骨ともわからぬ貴様に大事な娘はやれぬなんていって、かみ殺されるかもしれない。
その様子を想像して、僕の背中に冷たい汗が流れる。
「私、ご主人とずっと一緒にいたいんだ。ご主人だって私のこと大事に思ってくれたから保健所に連れていかなかったんでしょう」
ミカは僕の耳元でささやく。
そうだ、僕は彼女の恵美よりもミカをとったんだ。
ミカは大事な家族だ。そのことをラファエロ王に伝えよう。
「そ、そのミカ……ミカエラさんと家族になりたい」
僕がどうにか絞り出しながらその言葉を吐き出した。
長い沈黙が大広間に流れる。
背中どころか体中にどっと冷たい汗が流れる。
じろりとラファエロ王は僕をにらんだ。
「そんなことでよいのか」
それは思ってもいない答えだった。ラファエロ王にとってそんな事だったのか。
「それは当然ではないか。ミカを君にやろう。それぐらいでは余の気持ちはおさまらぬ。他には望みはないか?」
まさかミカをもらうことがラファエロ王にとっては当然の条件でさらに望みをかなえてもいいというのだ。
でも僕はミカだけで十分だ。
「いや、これ以上は……」
僕が恐縮しいているとラファエロ王は大きな声で笑った。
「まあ、よい佐藤殿。この
ガハハッとラファエロ王は牙をむき出して笑う。
こうして僕は亜人の国である
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