第8話

 さて、ななと彰人も帰って…って


「麗奈お前いつ帰るんだよ。」


普通に家が隣とはいえ、女子高生を一人で暗い夜の中帰らせるのは気が引けるのだが…。


「そ、その…ね?」


「お、おう、どうした?」


なんかもじもじしてるんだが?

可愛い。


「今日泊まってもいい?話したいことがあるから。」


マジかよ…。

正直予想の斜めはるか36000度斜め右方向上すぎて頭が困惑しそうなんだが?

というかもう困惑してる。

こいつこんなに色系あったっけ?

めっちゃドキドキ。


「ま、まぁ別に大丈夫だとは思うが…。一応香奈美かなみさん(麗奈のお母さん)には確認しとくぞ?」


「う、うん。」


LINNで香奈美さんにメッセージを送る。


翔真

『突然ですいませんが今日うちに麗奈を止めてもいいですか?話があるみたいなので。』

20:20 既読


香奈美さん

『あら、全然大丈夫よ。孫の顔が楽しみだわ。』

20:20


それでいいのか香奈美さん…。

とりあえず『何言ってるんですか』とだけ返してスマホの電源を切る。


「とりあえず許可は取れたぞ。変なこと言ってたけど…。」


「う、うんありがとう。」


なんかいつもの麗奈と違う。

俺も妙に色気のある仕草にドギマギしてしまう。


「と、とりあえずお風呂先どうぞ。」


「そ、その…ね?今日は一緒に入らない?」


「は、はぁ!?」


な、何言ってんだ麗奈のやつ!?

ふ、風呂ってそれっては、裸が見えるじゃねぇか!?

それよりも!


「れ、麗奈?そういうのは好きな人と一緒にするもんなんだぞ?」


そう言うと麗奈は顔を真っ赤にして言った。


「私!翔真のこと好きだから!」


「ッッ!!」


麗奈は社交的で、友達と話す時は基本的に一人称は『うち』だ。

だけど根はとても繊細でか弱いのだ。

辛い時や寂しい時は『わたし』になるのを俺は知っている。

麗奈に無理をさせていたのだという事実が俺の胸に酷く縛りつく。

だがそれ以上に…


「やっと弱いところ見せてくれた。」


「えっ?」


ずっと心配だった。

でも今はちゃんと…


「な、なんで私泣いて…。」


俺は麗奈の元へ歩み寄りその華奢な体を抱きしめる。

単純に麗奈は我慢しすぎていたのだ。

本当に幼馴染は二人とも不器用すぎて困るな。


「これからは俺がずっとそばにいるからさ、ちゃんと辛い時や寂しい時は頼れよ。」


「うん…うん。」


「遅くなったけど言わせてくれ。」


「うん。」


「好きです。幼稚園の時からずっと。俺と付き合ってください。」


※麗奈視点


その言葉で私の目からはとめどなく涙が溢れる。

不安。

後悔。

怒り。

悲しみ。

寂しさ。

そんな負の感情を全て流し出してくれているようで、翔真の体がとても暖かく感じた。


「遅いって。」


涙を流し終えた私は言う。


「そ、それは悪かったって。」


そう言って翔真の耳が赤く染まる。

こういうところもほんとに愛おしい。


「翔真。」


「ん?」


「大好き。」


「俺も大好きだ。」


「ちなみにさっき翔真が言ってた『変なこと』って?」


「そ、その…それは秘密だ!」


ふふ。

可愛い。

隠しきれてないよ。


「あと三年待ってね♡」


「ッッ!!覚えとけよ。」


「もちろん♡」


なんか全てを忘れた気がするな。

私は確信した。


これが『恋』なんだと…。

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