第3話
肩より少し下あたりで揃えられた黒髪に、パッチリとした瞳。
麗奈が美人系に入るとするならこの子は可愛い系だ。
1つ下の中学3年生らしい。
少し問題はあったが、麗奈が「先にお昼食べよっか。」と言ってくれたおかげで二人とも我に帰ったようだ。
バツが悪そうに視線を逸らしてから、一向に視線を合わせることがなくなった。
『何やら後で色々と聞く必要があるな…。』
そう麗奈と視線で語るのだった。
やはり終始会話は弾まず、何故か俺と麗奈の言い争いが始まったところで予鈴がなり、俺たちは解散することになった。
◇
空が薄く黄金色に染まる頃。
俺は彰人と二人で下校の道を歩いていた。
俺と彰人と麗奈は家が隣同士で、俺の家を中心に右に麗奈の家、左に彰人の家となっている。
ちなみに3人とも一人暮らしだ。
「初日なのにだいぶ疲れたな。」
『そうだね』
やっぱりだ。
いつもより元気がない。
「彰人、あの後輩と知り合いなのか?」
俺は単刀直入に聞くことにした。
彰人のペンを持つ手が一瞬止まったが、すぐに
『今日初めて会った人だよ』
と返されてしまった。
そう返されてしまっては俺も深追いできない。
「そっか。」
そう言って俺たちは無言のまま家へと帰るのだった。
※麗奈視点
翔真『やっぱりなんかありそうだけど、彰人はダメだった。』
「はぁ。」
私は彼女に聞こえないようにため息をついてスマホから視線を戻す。
「麗奈先輩!何歌います?」
私は今、今日知り合ったばっかの後輩と一緒にカラオケに来ている。
なんで中高一貫校なのに今までこの子のことを知らなかったのか。
「ななちはどっかから転校してきたん?」
私はデンモクを彼女から受け取ってお気に入りの曲を探しながら質問した。
「あ、気づいちゃったっスか?実は2ヶ月ぐらい前にこっちに引っ越してきたんっスよー。」
「へぇー。どっからきたん?」
「山口っス!」
「山口?あのフグが有名なとこだっけ?」
「そうっス!」
彼女は目を輝かせながら言った。
そんなに嬉しかったんだね…。
内心苦笑いする。
そこで私はふと思い出したことを言う。
「そういえば彰人、小学校の夏休みで山口に1ヶ月ほど旅行に行ったとか言ってたような気が…。」
「ッ!」
私がそう言うと途端に彼女の表情が曇った。
「ご、ごめん!なんか歌おっか!」
流石に切り込みすぎたかと内心焦る。
だが彼女は少し間を置いて話し出した。
「いえ、いずれは話さないといけないことなので…。」
私を見る目は先ほどのように曇ってはいない。
しかし、微かに寂しさも感じてしまった。
「聞いてくれますか?私とあきくんのことについて。」
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