第7話 何でも喰らう
松明の明かりを頼りに洞窟の奥深くへと足を進めるにつれ、空気はますます重く、湿った冷気が肌を這う。
魔人ヴィネによってこの洞窟に投げ込まれてから、どれほどの時間が過ぎたのかは分からない。
この洞窟に来てから口にしたものは、死んだスライムの液体だけだ。
なので、空腹感は耐え難いレベルになってきた。
松明を頼りに、なんとか道を探していた時だった。視界の端に、何かが動く。
目を凝らすと、そこには想像を絶する数の巨大なネズミが群れを成していた。
どうやら、ここはジャイアントラットたちの巣だったらしいな……。
巣を荒らしに来たと思われたようだ。
巨大な牙をむき出しにし、赤い目をギラギラと輝かせ、こちらに向かってくる。
「こいつら、焼いたら食えるかな……。やべえ、腹減りすぎて、ごちそうに見えやがる。涎が止まらねえ」
溢れる涎を拭うと錆びた剣を抜き、構える。
先頭を走ってきたジャイアントラットが、足元に飛びかかった。素早く避けると同時に、錆びた剣を振り下ろす。
「ギギィイ!」
首を落とされたジャイアントラットの断末魔の叫びが響く。
【スキル名】危険察知(小)LV1
【効果】敵の接近や罠などを事前に察知した場合、赤い輝点で警告表示が出る。隠蔽スキル持ちは察知できない。察知範囲は狭い。
収奪スキルの発動で、新たに得た危険察知(低)スキルが発動する。
俺に対して害意を持つ生物がいる場所が、赤い輝点で示された。
まだ遠くに見えてるやつは、輝点が灯ってないみたいだし、察知できる距離は数メートルと短いっぽいな。
でも、こいつは進化するスキルらしいから、ぶっ殺しまくればもっと察知距離が伸びるはず。
仲間が放った断末魔の声に釣られて、ジャイアントラットが、次から次へと襲いかかってくる。
「キュキュキュッ!」
飛びかかってくるジャイアントラットの首を刎ね飛ばす。
十匹ほど倒したところで、錆びた剣は使い物にならなくなった。
「スケルトンの持ってた錆びた剣を大量に持ってきておいてよかったぜ。かかってこいよ」
仲間を倒され、怒りを示したジャイアントラットたちの攻撃は過激さを増した。
怒り狂い飛びかかってくるジャイアントラットを、剣で捌き切れずに組み付かれ、鋭い爪を突き立てられた。
「いてて、爪には骨の鎧は効果を発揮しねえのかよ。だが、自己再生できるから、関係ねぇ! お前らは俺の腹を満たすために死ね!」
身体に爪を立てたジャイアントラットの首を錆びた剣で貫く。
生臭い血が大量に顔へ振りかかった。
引き抜いた勢いを利用して、新たなジャイアントラットの身体を薙ぎ払う。
ジャイアントラットの命を奪い血を浴びるたび、俺は自分が強くなっていくのを実感していた。
同時に強くなることへの渇望が一層高まった。
「もっと、俺に喰わせろ! お前らの持つスキルも、肉も全部奪ってやる! 俺が強くなるための糧になりやがれぇ!」
俺を食い殺そうと飛びかかってくるジャイアントラットたちを次々に剣で斬り殺していく。
スキルLVが上限に到達すると、新たなスキルに進化する。
【スキル名】危険察知(小)LV10→危険察知(中)LV1に進化しました。
【スキル名】危険察知(中)LV1
【効果】敵の接近や罠などを事前に察知した場合、赤い輝点の警告表示が出る。隠蔽スキル持ちは察知できない。察知範囲は広い。
スキルが進化した瞬間、察知範囲が一気に広がる。
俺に害意を持つ敵の存在を示す、赤い輝点が視界内をびっしりと埋めた。
あと100くらいは、いそうな感じだな。
いいぞ、全部食い尽くしてやるぜ!
それからは襲ってくるジャイアントラットを錆びた剣で斬り伏せることに全力を注ぎ、死骸とそれから流れた血が足元を濡らしていた。
「ギギィイ!」
最後の一匹が断末魔の声をあげ、首を刎ね飛ばされて、絶命する。光の球が俺の身体に取り込まれた。
【スキル名】危険察知(中)LV10→危険察知(大)LV1に進化しました。
【スキル名】危険察知(大)LV1
【効果】敵や罠などを事前に察知した場合、黄色の輝点で警告表示と対象までの距離が出る。敵がこちらの存在に気付いたら赤く変化して警告音がする。隠蔽スキル持ちや隠蔽された罠は、赤色にならない限り察知できない。察知範囲は広い。
視界に浮かんでいる輝点の状況を確認していく。
さらに進化したらしいな。今、赤い輝点が出てるやつはなく、黄色い輝点で一番遠いのが1kmくらいだ。
だいたい1kmくらいの察知範囲があると思っておいていい感じだろう。
動いてるやつは魔物、動いてない黄色の輝点は罠とみるべきか。
隠蔽中の相手は発見できないらしいが、あるのとないのじゃ、大違いすぎるな。
スキルの確認を終えると、空腹が限界を突破したことを知らせるようにお腹が鳴った。
「飯にするか。燃料になりそうなのは……あいつらの巣に使われてる枝や草ってところか」
手早く、枝や草を集めて焚火にし、松明の火を点け、ジャイアントラットの死骸を放り込む。
焼ける肉の匂いが、限界を突破した俺の食欲を刺激する。
火に炙られ滴る脂を見ていると、口の中に唾が溜まった。
「焼いてあれば何とでもなるはずだ……我慢できねえ!」
焼けた肉を口に運ぶ。
硬く、焦げ付いた部分もあるが、それはどうでもいい。
味なんてのは二の次だ。腹を満たすのが最優先。
俺は焼かれたジャイアントラットの肉を食い、空腹と体力を回復させることにした。
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