第6話 最弱からの出発


【スキル名】自己再生(小)LV10→自己再生(中)LV1に進化しました。



【スキル名】自己再生(中)LV1


【効果】自らの身体を自己再生させる。再生量が増えるため再生速度アップ。欠損部位の再生も同じく速度アップ。




「ふーーーーーっ! これで全部か」



 洞窟内にいたスライムを100匹喰らいつくしたところで、自己再生(中)スキルに進化した。



 失ったはずの手足は完全に再生され、受けた傷の痛みも引き、身体は元通りだ。



 瀕死の際に得た収奪スキルの力で得た自己再生スキルのおかげもあって、スライムに皮膚や内臓を溶かされる程度の傷なら、瞬きする間に再生するくらいにはなった。



 たぶん、大怪我をしても数時間くらいジッとしてれば傷は癒えると思われる。



 当面の危機を脱したのはよかったが、洞窟内をくまなく歩きまわり、スライムを全て倒してみたものの、出口らしき場所は一向に見つからない。



 ただ、一つだけ気になっている箇所があった。



 それは水が溜まって水没している場所があるのだ。



 水が溜まっているということはどこからか流れ込んでいると思われる。



 俺はその水没している場所の前に立ち、顔を両手で叩いて気合を入れる。



「行くしかねえ! ここで留まってても死ぬだけだ!」



 水面に飛び込むと思ったとおり、水の流れ込んでいる穴の存在があった。



 必死に泳ぎ、穴の奥へと進んでいく。



 息が苦しくなりかけたところで、出られそうな水面が見えてきた。



「ぶはぁあああっ! 新しいところに出たぞ!」



 新たに出た場所は洞窟の湿った壁と、無数の鍾乳石が作り出す幻想的な光景が広がる場所だった。



 よく見ると足元には、無数の骨が散らばり、洞窟のあちこちに置かれた松明の明かりの中で、不気味に輝いている。



「新しい場所に出られたのはいいけど……。あんまり長居したい場所ではじゃないな」



 そう呟きながら、俺は慎重に歩みを進めた。すると、遠くに何かが動く気配を感じた。



「誰だ!」



 俺は声を張り上げ、周囲を警戒する。洞窟の奥の方から、けたたましい音が聞こえてきた。



「カカカカッ」



 けたたましい音の主は、骸骨の姿をした魔物、スケルトンだった。



「スケルトンか……」



 スケルトンは、スライムと同じく何度か戦ったことがあるダンジョンの中でも比較的弱い魔物だけど――。油断はできない。



 俺は身構えると、スケルトンに近づいた。



 スケルトンは、こちらを認識したようで錆びついた剣を振り上げ、襲い掛かってくる。



 振り下ろされた錆びた剣が、俺の腕に食い込んだ。



「ぐぅ! いてぇ!」



 剣が腕に食い込んだまま、寸断された肉の再生が始まる。



 スケルトンは剣を引き抜こうとするが、そうはさせなかった。



「捕まえたぞ! 逃がしてたまるかぁあああああっ!」



 スケルトンの肩を掴むと、膝頭を弱点である腰の骨に向かってぶち込んだ。



 ゴンという骨と骨の音がぶつかり合う鈍い音がする。



「カカカカッ」



「一発じゃ砕けないか。なら、もう何発も喰らわせてやるよっ!」



 抱え込んだスケルトンの腰の骨に、力いっぱい膝頭を何度も叩きつける。



 四度目の衝突で腰の骨が砕け、スケルトンはバラバラの骨になって、そのまま崩れ落ちていった。



 腕に引っかかったままのサビた剣を引き抜くと、収奪スキルが効果を現したようで、スケルトンが持っていたスキルが光の球となって身体に飛び込んできた。




【スキル名】骨の鎧LV1


【効果】刃物に対する自身の防御力を上昇させる。




 骨の鎧か……。刃物に対する防御力を上昇させることができるっぽい。



 これがあれば、より強力な敵との戦いでも生き残れるかも。



「カカカカッ」



 スキルの効果を確認していたら、奥の方からさらに二十数体のスケルトンが姿を現し、こちらに向かってくるのが見えた。


 

 その手にはさっきのスケルトンと同じように錆びた剣が握られている。



 落ちている錆びた剣を手にすると、俺はスケルトンの群れに向かって駆け出した。



「カカカカッ」



 スケルトンが振り下ろしてきた錆びた剣をさっきと同じように腕で受け止める。



 錆びて刃こぼれした剣の刃は、俺の皮膚を切り裂けなかった。



 何度か、スケルトンの振り下ろす剣を受け止めてみるが、一向に皮膚が裂ける様子はない。



 いたくねえ……。これが、骨の鎧の効果か。



「クハハハッ! いたくねえぞ! お前らは俺に傷を負わせられない! 潔く、俺の成長の糧になりやがれっ!」



 握った拳でスケルトンを殴り飛ばすと、手にした剣の柄を使って弱点である腰の骨を無慈悲に砕く。



 腰の骨を失ったスケルトンは人の形を維持できずに、骨が地面に散乱していった。



「次はお前だ! 俺のために死ね!」



 新たなスケルトンに向かい、剣を薙ぎ払う。



 剣は弾かれたが、一気に距離を詰めると、固めた拳で頭蓋骨を殴り飛ばす。



 頭を飛ばされたスケルトンは視界を失ったようで、あたふたとし始め、その隙を突いて腰の骨を剣の柄で砕いてやった。



「もっとだ! もっと、俺を成長させろ! 全部残らず俺の糧になりやがれ!」



 襲い掛かってきたスケルトンたちの攻撃を避けることなく、次々に拳で頭蓋骨を殴り飛ばしながら、視界を奪い、弱点である腰の骨を砕いた。



 二十数体いたスケルトンは、俺に一つの傷も負わせることができずに倒された。



 吸収されず黒い石となったスキルと、スケルトンが持ってた武器を拾い集めていく。



 骨の鎧はLV10まで上がったが、進化しないみたいだ。



 自己再生スキルとの違いは、スキル名の後ろにある(微)、(小)、(中)の表記があるかないかだけど――。



 進化するやつは、括弧書きが付くと判断してよさそうだ。



 黒い石と錆びた剣を集め終えた俺は、置かれていた松明を取り、スケルトンたちが来た方へ出口を求めて進むことにした。

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