第6話 コレクション
その日から、店の従業員が次々と姿を消していった。不思議なことに、誰も気づかないようだった。新しい従業員が補充され、店は普段通り営業を続けている。
明美のクローゼットには、新しい服が日々増えていく。それぞれが不思議な輝きを放ち、時折かすかに震えている。中には、うめき声を上げるものもある。その声は、明美の首筋の傷跡と同じリズムで脈打っていた。
全ては、完璧な調和を保っている。苦痛と歓喜が混ざり合い、永遠の美を作り出している。それは、あの女性が明美に教えた通りの光景。
ある日、警察が店に訪れた。失踪した従業員の捜査のためだった。
「こちらのジャケット、素敵ですね」
中堅の女性刑事が明美の着ているジャケットに目を留めた。彼女の目は鋭く、何かを見抜こうとしているようだった。その目つきは、かつて明美自身が持っていた、真実を追い求める眼差しそのものだった。
「特別な染料を使っているんです」
明美は穏やかに答えた。その声には、かつて彼女自身が聞いた誘いの響きが含まれていた。
「どんな...染料なのかしら」
女性刑事の声が、少し震えた。彼女の目が、ジャケットに吸い込まれていくように見つめている。その瞳に映るものは、きっと明美が最初に見た光景と同じはず。
明美は満足げに微笑んだ。新しいコレクションが、また一つ増えることになる。そして、それは明美自身の変容の記憶を、また一つ塗り替えていくことになる。
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