第27話 それぞれのその後(ホワイトレイク)
北方都市ホワイトレイクから更に北へ向かい山を下ると眼前には北部海が広がる。
その浜へと上がり、野営を行うダレン一行。
「冬になる前にここを通過できて良かった。急ぎの移動に付き合ってもらい感謝する」
焚き火にあたりながらエルフ族のエスミーは言う。
「一緒に行きたいって言ったのは僕たちですから気にしないで下さい」
ダレンは笑顔で答えるつつ、ホワイトレイク出身のリアに質問をする。
「リアは本当に家に寄らなくて良いのかい?」
「ダレン様、流石にくどいですよ!私はどこまでもついていきます!」
丁寧語こそ抜けないが、少しずつリアも砕けた物言いをするようになってきてダレンは頬を緩める。
「ダレン殿は変わった趣味をお持ちですね。『くどい』と怒られてニヤつくとは」
「違いますよ!怒られたからニヤついたわけではないですっ!」
エスミーのツッコミを慌てて否定をするダレン。
当然、ダレンもリアと離れたいわけではない。ただ、聖女クレアを救おうとした際は『寺子屋』を作り、孤児院の監視を強化し、事業に巻き込んでしまえば救えると思っていた。
魔族エラロッテに襲撃されたり、魔素が濃くなり魔物が凶暴化したことはイレギュラーだったのだ。
しかし、これから向かう後の大魔導師ハンナは両親を魔族に殺される運命にある。
救おうと思うと魔族と戦闘になる危険性は高い。
もちろん、そうならないようにせっかく得たエスミーとの出会いを活用しつつ、戦闘にならないようにすることを計画している。
ただ、元教員として……いや、リアを大切だと思う一人として、危険性が少しでもある場所には極力連れていきたくないと思ってしまう。
「ふふ。家族へ会いたくないと言えば嘘にはなりますが、やはり離れる気持ちはありませんからね!……ただ、また時間がある際には一緒にホワイトレイクでも冒険者活動しましょう!“精霊の住む湖”」なんかはとても美しいですよ!」
リアはダレンの思いをしっかりと把握した上で伝える。
「“精霊の住む湖”って?ホワイトレイクは“悲愛の湖”が由来じゃなかったっけ?」
「ダレン殿は珍しくことを言う。ホワイトレイクの“精霊の住む湖”は大陸中から観光する貴人がいるほど有名だぞ」
「博学のダレン様でも覚え違いはあるんですね!新しい発見です」
(あれ?ゲームだと“悲愛の湖”は黒騎士との戦闘場所だったんだけどな)
ダレンたちがそのような会話をしながら西の公国にある大森林を目指しているとき、ホワイトレイクのある館では言い争いが起きていた。
「だからオレは反対していたんだ!姉さんが冒険者になることを!」
「落ち着きなさい!まだ行方は分かっていないが伯爵様も相当な人員をかけて探している!」
「それでも見つかっていないじゃないか!ダレンなんかについて行かせなければよかったんだ!だいたいアイツは聖女様を買おうとしたって話じゃないか!!」
「滅多なことを言うんじゃない!!それは当の聖女様すら否定をしてるじゃないか!」
「聖女になるくらいなんだ!騙されたって、買われたって許すくらいの人格なんだろ!目撃者だっているんだ!!当人が許しても人買いには変わらない!」
バンッと大きな音を立てて扉から出ていくリアの弟。
廊下に飾ってある黒鎧から黒剣を外して庭で素振りをする。
「オレが、姉さんを探しに行くんだっ!」
「絶対に見つけてやる!」
「ダレンがいたら……オレは絶対に許さない!」
「年が明ければ神授式が受けられる!そしたら……」
リアの失踪という知らせを聞いてから鬱憤や不安を払うように欠かさず行っているこのトレーニング。
不思議と黒剣は手に馴染むようだった。
飾られた黒鎧の、そこにあるはずもない目が赤く怪しく光ったように見えたが、誰も気付くことはなかった。
※※※
次回更新 未定
またお知らせします。
どうやっても追放しないといけないみたいです。 小林夕鶴 @yuzuru511
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます