第2話 走者編
「九回の裏、ツーアウト三塁、得点は1対1の同点。今、四番の柴田が打席に入ろうとしています。解説の高田さん、ここまで三打席連続三振を喫している柴田ですが、このサヨナラの場面で打つことができるでしょうか?」
「そうですね。打率が三割を超えている彼からすると、そろそろ打つ頃ですが、ピッチャーの田中もここまでヒット二本に抑えていますからね。四番としてのプレッシャーも相当あると思いますし、打つのは難しいのではないでしょうか」
緊張した顔で打席に入る柴田を見て、三塁ランナーの土井にある考えがよぎった。
(あの様子じゃ、とても打てそうにないな。一点取るには、ここで盗塁してホームに帰るしかない。単独のホームスチールなんて、20年くらい前に新庄さんがオールスターゲームで成功して以来見たことないから、もし成功したらとんでもない騒ぎになるぞ)
ピッチャーの田中が振りかぶった瞬間、土井はホーム目掛けて駆け出した。
(よし! スタートは完璧だ! バッテリーも意表を突かれて慌てているし、これは成功したも同然だな)
土井がそう思った瞬間、柴田がバットを振り、打球は三遊間を抜けていった。
(なにー! 柴田のやつ、余計なことしやがって。せっかくヒーローになれるチャンスだったのに……)
味方の選手がサヨナラ打を放った柴田に群がる中、土井はとぼとぼとベンチに帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます