サヨナラゲーム

丸子稔

第1話 打者編

「九回の裏、ツーアウト三塁、得点は1対1の同点。今、四番の柴田が打席に入ろうとしています。解説の高田さん、ここまで三打席連続三振を喫している柴田ですが、このサヨナラの場面で打つことができるでしょうか?」


「そうですね。打率が三割を超えている彼からすると、そろそろ打つ頃ですが、ピッチャーの田中もここまでヒット二本に抑えていますからね。四番としてのプレッシャーも相当あると思いますし、打つのは難しいのではないでしょうか」


 周りが緊張に包まれる中、柴田は打席に入った。


(ここで打てば、三打席連続三振の汚名が返上できる。何としても打って、ランナーをホームへ帰すぞ)


 意気込む柴田に、田中は気合の入った顔で初球を投げ込んだ。すると、気合が入り過ぎたのか、球は柴田の得意な真ん中高めにいってしまった。


(よし、いただき!)

 

 柴田がそう思った瞬間、三塁ランナーがスタートしているのが目に入り、彼は絶好球を空振りしてしまった。


「セーフ!」


「ああっと! なんとここで、三塁ランナーの土井がホームスチールを成功させ、ジャガーズのサヨナラ勝ちとなりました! 高田さん、土井はまた思い切ったことをしましたね」


「そうですね。恐らく彼の独断で敢行したのでしょうが、もし失敗していたら、判断ミスでは済まされないところでしたね」


(土井のやつ、余計なことしやがって。本当は俺がヒーローになるはずだったのに……)


 味方の選手が笑顔で土井を迎える中、柴田はとぼとぼとベンチに帰っていった。 




 








  

 

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