ただ男の死
目の痛む焦燥に身を灼かれながら目を覚ます。意識が冴えていくにつれて腹の痛みがサアッと全身から血の気を奪い攫っていく。眠気が絶えず手を引いて舟に乗せようとしてくる。この睡魔と心中するのも悪くない、と目を閉じそうになる。家族も誰も僕を必要としていないのだからどこで死んでも同じ事、後悔はない。ただ空っぽになった魂の入れ物が間抜け面で寝そべるだけだ。
嫌悪感のある湿り気に、流れ出た自分の血液に苛々とする。止まらない事に溜飲が下がる。覚悟が崩れたジェンガのようにみっともなくそこにある。肩で息をして、涙目で、何にでもなく謝っている。突然、寂しくなって大声で泣き出してしまう。僕は今から死ぬ、誰にも知られる事なくひっそりとどこかも知らない廃工場の脇で。立ち上がることもできずに足はダランとしている。脳が時間を伸ばしてうつらうつらと痛みを長引かせている。どうやら楽になど死ねないらしい。
だけどどうして酷く悲しい。
僕はスッと全神経を抜糸されるように眠りに落ちた。
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