第4話 おむつの朝
朝、私は目を覚まし、ゆっくりとまぶたを開いた。心地よい眠りから覚め、ベッドの中で伸びをしながら、いつものように体を動かす。
(あ……また……)
目覚めと同時に、下半身の違和感を感じた。いつもの感覚だ。毎朝繰り返される、忌々しい現実。しかし、今日は少し違う。ベッドに目をやると、シーツや掛け布団はいつも通りにきれいなままだ。シミもなく、湿り気もない。
(……ベッドが濡れてない……?)
驚いて体を起こし、そっと布団を持ち上げ、自分の下を確認した。おむつを触ると、そこにはいつものように濡れた感触があったが、どうやら今回はすべての尿をおむつが吸い取ってくれていたらしい。ほんの少し安堵が胸を撫で下ろす。
(ふぅ……助かった……でも、またおねしょしちゃった……)
毎朝こうして目覚めるたびに、自己嫌悪に襲われる。私は聖女として、子供たちの手本でなければならない存在だというのに。しかも、教会では児童のおむつはずれを積極的に促している。その発案者が、ほかでもない私なのだ。
教会では、おむつの在庫不足が深刻だった過去の経験から、おむつはずれを重要視する方針が打ち出された。私が設立した教会は、他の教団の孤児院と比べても児童たちのおむつはずれが早いことで知られている。シスターエレナもその方針に敏感に対応し、成果を上げてきた。
しかし、そんな私が……今やおむつを使っているとは……。
(これが誰かに知られたら……いったい、どうなってしまうのかしら)
私は恐怖を覚えながら、おむつの隠蔽を図る方法を頭の中で整理した。幸い、今は就寝時だけの問題だ。昼間は通常のショーツに履き替え、何事もなかったかのように振る舞えばいい。おむつの使用は、誰にもバレないようにしなくてはならない。
私はベッドからゆっくりと立ち上がり、足元の床に脱ぎ捨てていたドレスを拾い上げ、鏡の前に立つ。
(まずはこの濡れたおむつをなんとかしないと……教会の児童たちが使ったおむつと一緒に洗えば……バレないわよね)
私はおむつを外し、丁寧に折りたたんだ。それを布袋に隠し、自室の机の上にそっと置いた。今日も、いつものように教会で業務をこなせば、誰にも気づかれないままで済むはずだ。
(まだオムツを当てる必要はない……朝はショーツに履き替えれば大丈夫)
私は自分にそう言い聞かせながら、ショーツを履き替え、普段通りの姿に整えた。赤ん坊の魂が心の奥底で不安を煽っているのを感じるものの、今は何も考えず、目の前の現実に集中するしかない。
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