第3話 ちくちく
王城の自室に戻った私は、持ち帰った布おむつを机の上に広げ、深くため息をついた。教会で使っている3歳児用の布おむつを、自分に当てようだなんて……。
(まずはおむつカバーを作らなきゃ。このままじゃ布おむつを当てられない)
私は王城のテーブルクロスに目をやる。王家の紋章が白地に刺繍された、美しいそれは、食事の時に使われるはずのものだが、今は私にとって必要不可欠な材料だ。もちろん、勝手に切り取って使うわけだから、怒られるのは目に見えている。それでも、他に方法はない……。
私はそっと手を伸ばし、クロスの一角を掴む。
(こんなこと……私がするなんて……)
躊躇しつつも、赤ん坊の魂が次第に私の心を後押ししているのを感じる。心のどこかで、もうこれ以上悩む余地なんてないと思い始めていた。鋏を手に取り、静かにクロスを切り取る。刺繍の部分も切り離すように、慎重に作業を進めた。
手元には、白地の布が数枚できあがった。次に、これをおむつカバーにするために裁縫を始める。針と糸を用意し、いつも児童たちのおむつカバーを修繕するときに使っていた技術を思い出しながら縫い始めた。
(まずは布を折り返して、両端にボタンを付けて……)
両サイドに計4つのボタンを付け、腰にフィットするような形を作る。最後に刺繍された紋章が、カバーの前面に位置する形で仕上がった。
(これで大丈夫……かしら?)
手に取った即席おむつカバーは、自分用にしてはあまりにも手作り感が強すぎた。けれど、これしかないのだ。
(さあ、これで準備は整った……あとは、誰にもバレずに教会で誤魔化し通すだけ)
心にわずかな不安を抱えつつ、私は初めてのおむつを当てたまま、ベッドに横たわった。
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