第2話

じいちゃんが軽トラの窓を開けておじさんと世間話をし始める。


短パンにタンクトップ姿、そして公園でラジオ体操とかいうこれまた時代錯誤な修行を終えたらしいその小学生3人組は、じいちゃんの知り合いというおじさんに連行されて家まで帰るところだったらしい。


その3人組はこちらを見て何やらひそひそ話していた。表情からみるに、あまりこちらに友好的でないのは見て取れた。

想像するに、こんな会話をしていそうだった。


「見ろよ、助手席に乗ってるやつ、あきらかに都会のボンボンって顔してるぜ、肌も病人みたいに真っ白だし」

「いいなぁ、毎日涼しい部屋でおやついっぱい食べてんのかなぁ」

「バーカおめぇ、んなもん当たり前に決まってんだろ、都会なんだから。ゲームだって死ぬほど持ってるに違いねぇよ」

「あいつにゲーム借りられないかな」

「貸してくれるわけねぇよ、都会の奴らケチだから」


……とか、そんな感じだ。


3人のうち一番背の大きいやつは気が小さそうに話していたけど体つきだけは中学生にも見えた。一番小さいやつは見るからに性格悪そうな顔をしている。真ん中のやつは赤いタンクトップ姿ですり傷があちこちにあり、やんちゃしまくってるガキ大将的な存在なのかなと思った。


まぁこういう田舎でよそ者は排除される傾向にあるのはなんとなくわかる。

共通の憧れがあったりコンプレックスがあったりする分、攻撃の的にしやすいからだ。

だからこういう場合は他人に極力関わらないに越したことはない。


と、そう思っていたにも関わらず。

「ほれ、浩太郎も挨拶しなさい」

と助手席に座る僕にじいちゃんは言い放った。

仕方なく僕は「おはようございます、どうも」と頭を下げた。

「うちの孫です。昨日から2週間程うちに来てましてな」


じいちゃんがおじさんにそう伝えたのとほぼ同時に

「あのー、コータローくんとこ、後で遊びに行ってもいいですかー?」

と、大中小で言うと中ぐらいの赤いタンプトップの子が手を挙げてきた。

小のやつが「くひひ」と小物キャラみたいに笑っている。

3人で僕をダシにしてなにかしてやろうという魂胆がみえみえだった。


「おお、そうか。ちょうど暇してたんだよな、なぁ浩太郎?」

こちらを振り向くじいちゃんの顔は笑っている。

だけどその顔には『久しぶりに会った孫って、何か怒ってるみたいだし、何話したらいいかもわからないし、誰か同年代の子がいてくれると自分が何も相手しなくていいなら助かる』と書いてあった。


僕は自分1人の時間を満喫しているから遊びに来るのはやめてほしい、ということをなんとかオブラートに包もうとことばを考えていると


「お前ら、冴島さえじまさんに迷惑かけんじゃねぇぞ」

と引率のおじさんが言い、3人組は「はーい」と声を揃えた。


全員グルで、僕の日常をぶち壊そうとしているんじゃないかと思った。


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