第三話・ポンコツ言うな!

 ハナさんの衝撃的な魔法の力を見せつけられた舞衣と隆之。


「サラ! 私もやりたい!」


「さっき説明したじゃろが。思えばいいだけじゃ」


「ちょっと外行ってくる!」


 ダッシュで外へ向かう舞衣。

 その後にサラ、隆之、ハナさんが続いて歩いて行く。


「ハナさんスゴいですねぇ」


「そうかしら? それにしても、いつの間に手品使えるようになったのかねえ?」


「手品じゃなくて魔法だよぉ。異世界に来たから魔法使えるようになったんだよぉ」


「あらあら。イセカイって所に引越したのかい? 全然気づかなかったよ。最近の引っ越し屋さんは凄いのね」


 隆之が異世界に転移した事を力の限り説明したが、ハナさんに異世界という物が伝わることは無かった。


「何かよく分からないけども、ここが日本じゃない事は分かったわ。魔法が使えるようになる国なのね。何て国かしら?」


 そう言えば、妖精の国とは聞いていたが、何と言う国かは聞いていないことに気づく隆之。


「ねぇ、サラ」


「なんじゃい坊や」


「妖精の国って何て名前なのぉ? 国の名前ってあるんでしょ?」


「妖精の国は妖精の国じゃ。他に呼び方なんてないぞ」


「そうなのぉ? 他に国は無いの?」


「他には『人の国』『獣の国』『龍の国』『天の国』『魔の国』があるぞ」


「えっ? 人の国もあるのぉ?」


「あるぞ。ここからは遠いがな」


「行くのは無理かなぁ?」


「行きたいのか? じゃが簡単には行けんぞ」


「そうなのかぁ······」


 隆之がガッカリしたタイミングで舞衣の居る場所に到着した。

 何やら赤い顔で踏ん張る舞衣。


「出ろ! 火、出ろ!」


 その手からは何かが出る兆しが見えない。


「サラー! 何にも出ないわよ!」


「ふん、ポンコツ……」


 舞衣に追いかけられて必死に逃げるサラ。

 飛べばいいのに律儀に走って逃げるサラが舞衣に捕まる。


「この口かー! この口がポンコツ言うのかー!」


「いひゃい! にゃにうぉしゅるー!」


 舞衣に思い切り頬をツネられて悶絶するサラ。


「全然出ないじゃないのよ! どうなってるのよ!」


 頬を擦りながら舞衣を睨みつけるサラが恨めしそうに答える。


「誰でも魔法を使える素質はあるんじゃ。ただし、適性もあるんじゃ」


「適性?」


「得手不得手じゃな。マイは火魔法の適正がないんじゃろ」


「じゃあ何なら適性あるのよ!」


「それは私にゃ分からんよ。祠の水晶で調べればある程度分かるはずじゃ」


「行こう! 今すぐ行こう!」


「無理じゃ。ここから歩いて二日かかる。行くなら準備が必要じゃ」


「そうなの? 残念だわ……」


 落胆した舞衣は、座り込んでどこか遠くを見ていた。


「サラ! 僕もやってみていいかなぁ?」


「坊やはどうかな?」


「長年の夢だったんだよぉ。じゃあ行くよぉ!」


 隆之にしては引き締まった表情。

 何やらポーズを決めながら右手を前に突き出した。


「盟約に従い我の元へ集え! 真理の扉を開きその力を解き放て! 豪炎を持って眼前の敵を薙ぎ払うがいい! インフェルノファイヤー!」


 隆之の右手が真っ赤に燃える。

 そして、その指先にライターのような火が着いた。


「ひゃーはっはっはっ! なんじゃそりゃー! 恥ずかしすぎるわー!」


 右手よりも顔を赤くする隆之。


「えっ? なになに? 豪炎がどうしたって? 笑えるわー! 腹痛い腹痛い!」


 涙を流しながら笑い転げるサラ。


「そ、そんなに笑わなくてもぉ……」


「ぼ、坊や、戦闘中にそんなベラベラ喋るなんて聞いたことないぞ。そんなことしてる間に攻撃されて終わるぞ。バカなのか?」


 膝を抱えて無言で舞衣の横に座る隆之。


「今度祠に行って調べてみればいいじゃろ。何かしら適性はあるはずじゃからな」


 捨てられた子犬のような目でサラを見つめる舞衣と隆之。

 その近くでは、ハナさんが楽しそうに炎を飛ばしまくっていた。


「ふんっ、二人揃ってポ」


「ポンコツ言うなー!」


 【ポンコツ二人がパーティーに加わった】

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