欠陥転生者は"英雄譚"を否定するようです。
小之先 出口
第1編 欠落転生者は"冒険譚"を開始するようです。
序章 プロローグ
Ⅰ まず神様を『アンタ』呼びするのが失礼なことに気付いてない
地平線まで続く鏡面の床。
どこか神聖で、穏やかな光に満たされた空。
そして、目の前には─────腰辺りまで伸びた、透き通った艶のある髪、ある種の
あの世って、実在したのか。
どこか的外れな思考を、未だ
奇妙な感覚だった。
自身の死を、その人生の
何より、この究極の
「目覚めたか、若者。」
不意に、純白の
舌足らずな幼稚さが残る
「私は道を示す者。哀れな魂よ、君に選択肢を与えよう───────。」
なにやらお決まりじみた
「アンタ、カレーうどんとか食べる時もその
「───────────えっと。」
俺の質問に、少女が浮かべた表情は、想像より遥かに人間らしい『困惑』だった。
「全く、神聖さを出すのも難しいんだよ?まぁ元より私はそういう『らしさ』なんて要らない派なんだけど、上が人間の想像する神や天使の様に振る舞うべき!って息巻いてるからさ~困っちゃうよね。」
何というか、とんでもない拍子抜け感を味わいながら、俺は急に饒舌になった少女の話を聞いていた(因みに、先程の問いの答えは「魂だけみたいな存在だから食事なんて摂らないよ?」というこの上なくつまらないものだった)。
なんだろう、さっきまでの荘厳さを返して欲しい。いや、絶対
「んで?なんだっけ────あぁそうだ自己紹介だよね。私はセラ。君達の
「んな罰当たりな」と思ったが、良く考えてみると天使とか神とかそういう相手にカレーうどん食べる時どうすんのソレとか言い放った俺の方が5000倍は罰当たりだ。というかこの子じゃなきゃ普通に死んでたんじゃないか?いや、もう死んではいるのだが。
「えーっと、俺が悪かったから本題に入ってくれ。アンタ言ってたよな、『俺に選択肢を与える』って。」
その間もペラペラと自分語りだったり、上司の愚痴だったりを可憐な声で喋り散らかしていたセラの話を強引に軌道修正して、俺はそう問い掛けた。
「あぁ、そういえばその話をしてたんだった。」
セラは、ばつが悪そうに微笑んで、ふと、目を閉じたかと思えば。
「ねぇ、君。」
「────────
「ないです」
沈黙。
「えっと……最強とかに憧れは……」
「興味ないです」
気まずい沈黙。
「誰かに褒め称えられたりとかは……」
「目立つのは嫌いです。」
悲痛な沈黙。
「い、異世界転生とかって、興味ある……?」
「あ、それはちょっと気になるかも」
「────君なんなんだよぉ!!!!!」
この人間の事が何一つ分からない、といった様子で頭を抱えるセラ。
……どうやら俺は、この
欠陥転生者は"英雄譚"を否定するようです。 小之先 出口 @exit_329
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