第3話 想定外の展開

『設定①馴れ初めについて

あんたが私のことを好きすぎて、めちゃくちゃ告白して仕方なく私が付き合うという体。

だから、これから1ヶ月くらい私に猛アタックしてくること。

そんで、付き合った後も私のこと大好きなムーブをすること。


 設定②デートについて

擬似彼氏と言えど、デートとかしてないと怪しまれるから2週間に1回デートすること。

その時は毎回写真を撮ってSNSに載せるから、ちゃんとした格好でくること。


 設定③交際期間について

ひとまず、交際期間は半年とする。

別れる理由とかはまだ考えてないけど、そこら辺はこのあと考えるから。


 だいたいこんな感じね。

後は必要なことのすり合わせとかあれば聞いて。』


 こんな文章が送られてきた。


 今更ながら大きなため息が出る。

まさか...犯人があの聖堂だったなんて...。


 ベッドにダイブしながら思わず苦笑いを浮かべる。


「...めんどいことになったな」


 まぁ正直なところ、栗原さんについては無理だと分かっていたから、好きという事実に関してはバラされても良かった。


 ただの一方的な片思いだし、そもそも話したことすら一度もない。

テストの件で名前くらいは認識しているかもしれないが、顔までは間違いなく知られていないだろう。


 ...だが、片思いの件は知られても盗撮+趣味がエロ漫画とエロ小説執筆という事実を知られるのは避けたかった。


 両思いにならなくていいけど、嫌われたくはなかったから。


 だからこそ、俺はこの擬似彼氏の提案を受け入れざるを得なかった。


 しかし...謎は結局残る。

一体、彼女はこの部屋にどうやって入ったか...だ。


 質問すれば答えてくれるかもしれないが...。やっぱりやめておこう。


 適当にスマホをぶん投げて、俺はそのまま眠りについた。


 翌日からのことを考えると、寝る以外に現実から目を背ける方法がなかったからだ。



 ◇翌日


 いつも通りの時間に登校すると、いつも通り聖堂は女子と楽しそうに話していた。


 一旦、自席にカバンを置いて、話すタイミングを伺う。


「それでね!そしたら、愛がさ〜」

「なになにー!?どしたの!?」


 随分と話が盛り上がっているようだ。

このタイミングで話しかけるとか絶対変な空気なるじゃん。

そう思っていると、聖堂と目が合う。


『早く話しかけてこい』という目をしていた。


 深呼吸してから立ち上がり、聖堂に声をかける。


「...聖堂さん。おはよ」


 すると、何かを話しかけていた彼女の友達が俺の顔を見て黙る。


「あっ、一条くん!おはよ!」

「...」と、気まずさに負けてそのまま席に戻るとすぐに携帯がダイブする。


『上司と部下か。義務挨拶だけ済ませて帰る奴がいないだろ。なんかうまいこと会話をしろ』と、友達と話しながらノールックでRINEを送信してくる。


 ガラケーじゃねーんだぞ...。

スマホでノールックって...。すごいな。


 つっても、聖堂と共通の話題なんてねーし...。


 そう思いながらも仕方なく彼女に声をかける。


「でねー「あ、あの...聖堂さん」と、再びやってきた俺を見て、少し怪訝な表情をする友達。


「ん?どうしたの?」

「えっと...」と、無策で突撃した故に何も言えなくなった俺にこう言った。


「...あぁ、もしかして私たちの関係について?うん、いいよ?言っても」と、微笑みながら俺のことを紹介する。


「私、一条くんと付き合うことになったんだ」

「「「...えぇー!?!?」」」と、叫ぶクラスメイト達。


 正直、俺も「えー!」と叫びたかったが、彼女の中で何か作戦変更があったのだと理解する。


「おいおいおい、ついに四天王の一角が崩れたのか!」

「しかし、奴は四天王の中で最弱...。我々にはまだ3人の女神が残っている!」

「やはり最初に崩れたのは不人気季節の冬か!」


 もうそれ絶対本人に聞こえてるよ?と思っていると、案の定顔をピキつかせながらなんとか笑顔を保っていた。


 そして、すぐにこのニュースは学校中に広まり、今年一のビッグニュースとしてみんながヒソヒソ話を始める。


 それから、変な気を使われて、小休憩の時も彼女の周りには友達が集まらず、俺と彼女の会話している様子を遠くから眺めていた。


「すっかり人気者だね、一条くん」

「...そうで...そうだね」


 すると、教室にあの四天王3人が入ってくる。


「冬和ちゃ〜ん!彼氏できたって本当〜?」と、相変わらずのゆるふわな雰囲気で話しかける早乙女さおとめ秋奈。

「お、おめでとう...冬和」と、小さく拍手をする財前ざいぜん 流夏。

「...」と、少しだけ悲しそうな表情をする心春さん。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091774310790


 すると、まるで見せつけるかのように俺を引き寄せて「うん!付き合うことになったの!」と、笑う。


 この時、俺の中の一つ違和感のようなものを覚えたのだった。

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学校で4番目に可愛い美少女の擬似彼氏に選ばれました〜それから何故か他の四天王にも迫られるようになりました〜 田中又雄 @tanakamatao01

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