第2話 犯人は...

「...ん...ぃちゃん...お兄ちゃん!」

「ん?何?」

「何じゃないよ...箸止まってるけど大丈夫?」


 心配そうに妹の芽衣めいが俺の顔を覗く。


 芽衣は俺の一つ下の高校1年生であり、同じ白蘭高校に通っている。

性格は俺と全く反対の明るくアクティブで、勉強は嫌いだが結構できてしまう天才タイプだ。

 特別に仲がいいわけではないが、仲が悪いわけでもない、普通の兄妹の関係である。


「あぁ...ちょっとぼーっとしてた」

「勉強のしすぎじゃない?折角テストが終わったんだから、少しくらい羽伸ばせばいいのに」

「...次のテストまで1か月と2週間だぞ。ゆっくりなんてできるかよ。そもそも、模試も...ん...ぃちゃん...お兄ちゃん!」

「ん?何?」

「何じゃないよ...箸止まってるけど大丈夫?」

「あぁ...ちょっとぼーっとしてた」

「勉強のしすぎじゃない?折角テストが終わったんだから、少しくらい羽伸ばせばいいのに」

「...次のテストまで1か月と2週間だぞ。ゆっくりなんてできるかよ。そもそも、模試も同じ時期にあるし...羽を伸ばしてる場合じゃないっての」


 そうして、再び箸を動かし始めると、芽衣が話しかけてくる。


「そういや、お兄ちゃんって四天王の人たちと友達だったりするの?」

「...話したこともほとんどねーよ。...そんくらいわかるだろ」

「ふ~ん。そうなんだ。そうだよね~。ご馳走様~」と、そのまま食器を片付ける。


 それより...俺には考えるべきことがある。

あの写真と手紙の差出人についてだ...。

しかし、犯人なんて限られている。


 だって、俺の部屋に入ってるんだぞ?

いや、不法侵入も含めれば全人類が容疑者になるが...犯人がそんなリスクをとるとは考えられない...。

だとしたら...やっぱり家族が犯人?俺の趣味について気付いてやめてほしいと考えてあえてこんなことを...?


 ...それもあんまりピンとこないな。そもそもあれがバレたら普通に家族会議を開くようなタイプだと思うしな。

現に妹も普通に話しかけてきてるわけで...。


 結局、犯人を特定することもできないまま、もやもやした気持ちを抱きつつ、その日は眠りについた。



 ◇数日後


 あれから数日過ぎたが...特に何も起こらないままだった。

てっきり、何らかしらの脅しをされると思ったが、何もないままだった。

それが...余計に気持ち悪かった。


 そうして、今日も特にないまま1日が終わろうとしていた。


「んじゃ、HRはこれで終わりだな。号令~」

「起立~、礼~」


 机に乗った鞄を肩にかけて廊下に出て、生徒用玄関に来たところで聖堂せいどう 冬和とわに声を掛けられる。


「あっ、一条いちじょうくん!間に合ってよかった!えっとね、榊原さかきばら先生が呼んでたよ!」

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091712970061


「え?あ...そう...」

「えっとね、進路相談室で待ってるって言ってた!」

「わかった。ありがとう」


 聖堂冬和とは同じクラスだったが、当然話したことすらなかった。

なんで彼女に先生が?


 榊原先生は俺の1年の時の担任であり、進路について何度も相談しており、2年になって今でもお世話になっていた。


 いわれた通り進路相談室に向かう。

進路相談室は1階の端にあり、あまり使われない教室だった。


 なんだろう?7月にある模試に関する話だろうか?

そうして、進路相談室に入るが、まだ先生は居なかった。


 待っていれば来るか...と、適当な椅子に座る。


 すると、扉が開くとそこに立っていたのは聖堂だった。


「...聖堂さん?」


 そのまま、中に入ってきて扉にカギをする。


「...え?」

「ごめん。先生が呼んでるっていうのは嘘」

「...どういうこと?」

「少し話をしたくて...//」と、顔を赤くしながらそんなことをいう。


 おいおい...まじかよ...。これってまさかそういうことか?


 少しずつ近づきながら、「...私ね...実は...一条君のことが...好きなんだ//だから...付き合ってほしい//」と言われる。


 ...まじかよ。

接点なんて同じクラスであるくらいで、ほとんど話したこともない俺のことを?

なんか...少し怪しいな。

まぁ、どっちにしろ、答えはNoだ。だって、俺には...好きな人がいるから。


「ごめん。気持ちはうれしいけど、俺...好きな人がいるから」

「...そっか。その好きな人って...小春でしょ?」

「...え?」


 すると、彼女は徐に鞄からとある3枚の写真を取り出した。


「まさか、あの秀才が自分で書くくらいエロ漫画が好きだったなんてね~?いや~、ちょっと驚いた。まぁ、人の趣味をとやかくいうつもりはないけど...こっちはだめでしょ?」と、彼女は床に1枚の写真を投げる。


 それは...送られてきたあの3枚目の写真だった。


 その写真とは...栗原くりはら 小春こはるを盗撮している俺を盗撮してる写真だったのだ。


「...それ...まさか...」

「そうだよ...私が犯人だよ。この数日怖かったでしょ?普段、何事も動じず何でもこなす一条君がキョロキョロしてる様は結構傑作だったよ?」と、いつもとは違う雰囲気で笑いながらそんなことを言う。


「...それで?いったい何が目的だよ。...正直、四天王の人から脅されてまで頼まれることなんて、思いつかないんだが」

「もうお願いならしたでしょ?私と付き合って。もちろん、本気で付き合えって意味じゃない。疑似彼氏ってやつ?もしくは契約彼氏?まぁ、何でもいいけどそんな感じの。ほら、私ってめちゃくちゃモテるじゃん?他の3人と違ってコミュ力高いし...そのせいで四天王最弱とか言われるし。いちいち断るのも面倒し、ちょうどいい隠れ蓑を探していたの」と、退屈そうにそう呟いた。


「...なんで...俺なんだよ」

「一番丁度いいから。あんまりレベルが低い人選ぶとあんたと別れた後、今以上に告られそうだから。学年1位ってハードルはちょうどいいから。それだけ...っていうのは嘘だけど、まぁあんたが知る必要はないし、どうせ拒否権もないでしょ。それじゃあ、とりあえず連絡先を交換しよ。詳しい設定内容については今日の夜に送るから、全部頭に叩き込んでおいてね」


 そうして、俺と彼女は連絡先を交換した。


「明日からよろしくね、私のことが大好きな私の彼氏君」

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091713014392

「...」


 こうして、俺の平凡な高校生活は終わりを告げたのだった。

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