第2章 第2話:「忘れられないメッセージ」

万年筆が戻ってきたことで、彩花はほっと一息つき、いつものようにノートを開いた。仕事のアイデアを書き留めようとペンを走らせたが、その手が途中で止まった。


「あれ?」


ノートの隅に、見覚えのない文字が書かれているのを見つけたのだ。細く美しい筆跡でこう書かれていた。


「焦らずに、星のように輝いて。」


その言葉に彩花は驚きながらも、どこか心が温かくなるのを感じた。誰が書いたのだろうか?考えているうちに、自然と店主の顔が浮かんだ。


「あの……このメッセージ、店主さんが?」

彩花が尋ねると、店主は少し驚いたように目を丸くした。


「いえ、私は書いていませんよ。でも、その万年筆を大切に思う人が書いたのかもしれませんね。」


「万年筆を置き忘れたのは私なのに……不思議ですね。」

彩花は首をかしげながらも、その言葉が心に響いているのを感じた。


「たまに、このカフェには特別なことが起こるんです。小さな奇跡のようなことがね。」

店主はコーヒーカップを拭きながらそう話す。その言葉に彩花はふと思い当たる。星空カフェに通い始めてから、確かに心が軽くなる出来事が多かった。


「もしかして、このカフェ自体が特別な場所なんですか?」

彩花の問いに、店主は少しだけいたずらっぽく微笑んだ。


「それは、お客様次第かもしれませんね。」


その曖昧な答えがかえって不思議さを増し、彩花はノートのメッセージを見つめた。忙しさに追われる日々の中で、ふと立ち止まることを教えてくれる言葉だった。


彩花はペンを握り直し、ページの片隅にこう書き足した。


「私も星のように輝きたい。」


その小さな願いが、また新たな奇跡を呼ぶかもしれない。そんな予感を抱きながら、彩花は静かに夜を過ごした。


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