第2章:カフェでの小さな奇跡
第2章 第1話:「消えたお気に入りのペン」
再び星空カフェを訪れた彩花は、いつものようにカウンター席に座った。前回とは違い、少しだけ肩の力が抜けた自分を感じる。この場所は、彼女にとって日常の合間に訪れる隠れ家のような存在になっていた。
「今日は何を飲まれますか?」
店主の穏やかな声に、彩花は「星空ブレンドをお願いします」と答えた。温かな笑顔とともに、いつもの香りが漂うカップが目の前に置かれる。
カバンからノートを取り出し、仕事のアイデアを書き留めようとした彩花は、ふと首をかしげた。愛用している万年筆が見当たらないのだ。金色のペン先が特徴のそのペンは、大学時代に友人からもらった大切なものだった。
「あれ、どこに置いたっけ……?」
カバンの中を探しても見つからず、最近の記憶を辿るが心当たりがない。焦る彩花を見て、店主が静かに声をかけた。
「何かお探しですか?」
「はい、万年筆が見つからなくて……先日ここで使っていたんですが、置き忘れてしまったのかもしれません。」
店主は少し考え込むような表情を浮かべると、カウンターの棚を調べ始めた。彩花はその様子をじっと見つめながら、期待と不安が入り混じる。
「これでしょうか?」
店主が差し出したのは、間違いなく彩花の万年筆だった。彩花は思わず声を上げる。
「これです!ありがとうございます!」
「置き忘れられたのを見つけて、大事そうだと思って保管しておきました。」
店主のその言葉に、彩花は深く安堵し、そして少しだけ恥ずかしくなった。
「本当に助かりました。このペンは特別なもので……」
彩花がそう話すと、店主は静かに微笑み、「大切なものが戻ってきてよかったです」と答えた。
何気ない出来事だったが、彩花にとっては小さな奇跡のように思えた。星空カフェの温かさが、さらに心に沁みる夜だった。
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