第4話シナリオ
侵入者の疑いがあったが、具合の悪さから、咲枝は別室の寝台をあてがわれ話をする運びとなった。少年は武器を肌身離さないまま、寝台の脇に木製の簡素な椅子を寄せ、席に着く。そんな彼に向け、咲枝は日本や東京、それらが地上にあるという説明をする。俄かには信じられないと難しい顔で唸る少年。だが、彼――沐漣の話す彼の国の話のほうが、咲枝にとっては信じ難いものだった。
彼の国の名は金糸雀帝国。彼の名にも国名同様漢字が使用されているが、長く一つに束ねてある頭髪は眩しい白金色で、両の目は透き通るような青色をしており、日本や東京も知らない様子。明らかに生粋の日本人ではない容姿から察するに、他の漢字圏の国の人でもなさそうだった。
彼によると、地上は大量の【魔気】というものに覆われ、もう何十年も前から人の住めない場所となっているらしい。魔気という言葉が既に咲枝にとって未知のものだが、沐漣が嘘をついている様子もない。
次に沐漣は、今乗っているこの船を飛ばしているのは人の力ではなく、【聖気】と呼ばれるものの塊である結晶石を媒体に、燃料を捻出しているのだと説明した。咲枝の中へ消えた石がそれだという。
魔気に聖気と、不可解な言葉が飛び出す度、咲枝の頭は混乱する。沐漣はそれを無視して椅子から立ち上がり、「お前のことは本国まで連行し、陛下に処遇の判断を仰いでもらう」と告げる。陛下というのは、日本の天皇陛下のことではなく、金糸雀帝国の皇帝のこと。竜蹄という国に王がいることもほのめかされ、咲枝は頭が痛くなりそうだった。
(……なんか、違う世界にでも来ちゃったみたい)
常識はずれなことだというのは咲枝自身もわかっていたが、そう考えれば、不思議と腑に落ち、沐漣の言うことにも全て納得がいくのだった。
ともかく今は、金糸雀とやらに連れて行かれるしかないらしいと、咲枝が諦めた時。侍女が一人、【魔物】が出たと告げに来た。沐漣が入れ違いに部屋を出て行くが、「その女は見張っておけ。部屋から出すな」と、侍女に釘を刺すことも忘れない。
戸が閉まり、咲枝は侍女と二人きりで部屋に閉じ込められる。侍女は、何か妙なものでも見るかのように、時折ちらちらと咲枝のほうを盗み見ている。その空気も気詰まりなものだったが、咲枝の胸を不安にさせたものは、もっと別のものだった。
(【魔物】って何……? なんかとんでもなくアブナイ場所に来ちゃったんじゃないの、わたし?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます