第2話シナリオ

現代日本とは異なる世界、【輝華】。【飛空艇】と呼ばれる空飛ぶ船の上で、物思いにふける少年がいた。一体いつまで、このようなことを続けていられるのか。自分はいつまで、こうしていられるのか? そう考え、少年が顔を歪めていると、侍女の一人が血相を変えてこちらへと駆け寄ってくる。ただならぬ様子に、少年が気を引き締め直すと、侍女から「燃料室から不審な物音がする」と知らされる。少年は侍女に先導され、燃料室へ向かう。


 一方、その燃料室には、地球から飛ばされてきた咲枝が倒れていた。

鈍色のマーブル模様の視界に、耳鳴りのようなものもする、奇妙な感覚。内臓が身体の中からも外からも圧迫されているような、急激にGがかかっているかのごとき不快感。吐き気がする……咲枝がそう思った瞬間、突然、皮膚が剥がれ落ちるかのような痛みが全身を襲う。ほんの一瞬の出来事だったが、確かに激痛がし、直後に床らしき場所に顎から墜落した。


 自分は死んだものと思っていた咲枝が恐る恐る目を開くと、そこは金属質な壁でできた部屋のような場所だった。身体を確認すると、怪我らしい怪我といえば、床でぶつけた顎程度。


 ふと、そばで硬質な石のようなものが山積みにされているのに気がつく。その一つ一つは透き通っており、薄く淡い光を発していた。辺りの様子を窺うと、ゴウンゴウンという重い音が鳴り響いており、何かの動力部のような印象を受けた。見たこともない石の山に、咲枝が思わず近寄ると、突然、辺り一帯の光が強まる。あまりの眩しさに腕で目を覆うが、弱まることのない光に、咲枝は次第に恐怖を覚えた。けれどもそれは、意外な形で終息する。光ごと石の一つが、咲枝の中に文字通り吸い込まれてしまったのだ。


 石が一つ減り、山は始めと同じにぼんやりと淡く光を放ち続けた。自分の身に起こったことと、目の前の光景の因果を結ぶことができず、咲枝は知らず後ずさる。直後、背を向けていた方向から、声が複数聞こえてきて、咲枝は驚きに肩を飛び上がらせた。くぐもった男女の声がだんだんはっきりと聞こえてきて、最後にガチャガチャ、と、鍵の外される音がする。咲枝はそこで初めて、この部屋に鍵がかかっていたことを知る。無情にも鍵は開いて一人の少年が部屋の中へと入ってくる。少年は目を見開くと同時に、咲枝へ小型ナイフを飛ばす。それは咲枝の鼻先をかすめ、背後の壁をズダンと打ち抜いた。

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