第3話シナリオ
利駆の口から訥々と語られる過去。幼い頃に両親を亡くして以来、茜の家に住まわせてもらっていること。茜は芸能界に入る以前から、その容姿の良さから女子に人気があったこと。そんな中、一緒に住んで親しくされている利駆に、当初から嫌がらせは絶えなかったこと。はじめのうちは、利駆もそんな状況に抵抗していたが、その努力は虚しく空振りし、嫌がらせが止むことはなかったこと。
「喋ったらもっと怒られるんです。黙っていれば、そのうち皆さんの気が済んで終わるんです。ですからわたしは、終わりを待つことを覚えました」
そう言う利駆に、茜の言うことをきくのをやめればいいと伝える織羽。しかし彼女は、茜には恩があるからそれはできないとつっぱねる。織羽は「恩返しと使いっ走りをはき違えている」と指摘するも、彼女は意外と強情で、意見を曲げない。
意識を変えさせることを諦めた織羽は、利駆に自分の体操着を貸す。数日後、利駆はいつも通り旧校舎裏の中庭で寝ていた織羽に、借りた体操着を返しに行く。
「本当にありがとうございました、狭山くん」
【狭山くん】。そう呼ぶ利駆に、織羽は、茜を名前で呼んでいるのだから、自身のことも狭山くんと呼ぶのはやめないかと提案する。同時に、利駆のことも呼び捨てする。
「お友達に下の名前で呼んで頂いたのは茜くん以外では初めてなので、なにやら気恥ずかしいのですが、嬉しいのです」
そう言いながらはにかむように笑う利駆。しかし織羽は、先に茜のことをほのめかしたのは自分のほうなのに、利駆が茜の名を出してきたことが何故だか少し気に障った。利駆が中庭を去った後、受け取った体操着を枕にして、織羽は再び元のように寝直そうとするも、自身の先ほどの感情を持て余し、常ほどうまくは寝つけなかった。
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