第1話シナリオ
ヴァンパイア――いわゆる吸血鬼の実在する現代日本の都会にある、とある私立高校の昼休み。サボリ魔として学校で有名な一年生・狭山織羽は、お気に入りの場所である旧校舎の裏庭で、惰眠を貪ろうと茂みに寝転がっていた。
ところが、複数の女生徒の声と、ドスンと何かが倒れるような音が耳に届き、眠りを邪魔されてしまう。どうやら集団で誰か一人に詰め寄っている様子だったが、女子同士のつまらない言い争いに関わるのを面倒に思った彼は無視を決め込む。
しかし、織羽の早くどこかに行ってほしいという願いとは裏腹に、女生徒たちの攻撃はエスカレートしていき、ゴンッと、一際鈍い音が庭に広がる。そこで織羽の鼻はある匂いを捉え、無視できない状況だと判断し、彼女たちの前に姿を現した。
「ちょっとヤバいよ、コイツ流血事件起こしたことあるって……」
現れた織羽に怯える女生徒たちは、彼にまつわる噂を鵜呑みにし、危害を加えられてはたまらないと、標的にされていた一人を残して立ち去ってしまう。残された一人は校舎の壁に背を預け、黙って座り込んでいたが、織羽が声を掛けるなり、畳みかけるような勢いで謝罪しながらお辞儀を繰り返す。その拍子に彼女の胸ポケットから何かが落ちるが、鳴り始めた予鈴に気を取られた彼女は落とし物に気づかずに、新校舎のほうへ駆けていく。
仕方なく織羽がそれを拾うと、落し物は権田利駆と書かれた生徒手帳だった。どうやら同じクラスのようだが、返しに行くのは億劫だった。見なかったことにしてしまおうか、そんな風に考えていると、ふと、若い男女と幼い子どもの写った写真が挟まっていることに気がつく。子どものほうの面影から、彼女と彼女の両親だろうと推測した織羽は、なんとなく気が向き、久しぶりに教室に出向いてみることにしたのだった。
久々の教室はやはり居心地が悪く、織羽は中には入らずに、後方の入り口から利駆を探す。彼女は先ほどまで嫌がらせを受けていたとは思えないのんびりした所作で、授業の準備をしているところだった。利駆の席に向かい、手帳を返していると、突然ワァッと辺りがざわめく。クラスが注目している方向に目を向けると、先ほどまで織羽が立っていた教室の後ろの入り口から、ずいぶん目立つ派手な容姿の男子学生が入室してくるところだった。
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