沼とタクシー

天川裕司

沼とタクシー

タイトル:沼とタクシー


私はその日、タクシーに乗り込んだ。

「どこまでですか?」

「あ、道言いますのでよろしくお願いします」

「わかりました。ドア閉めますね」


それからじゅんじゅん走って都内を出、

人里離れた郊外へ。


「そこの道、まっすぐお願いします」

と言ったところ、運転手は急に豹変した。


「あのちょっと、どこ行ってるんですか??」

「……チクショウ…」

小さくそう言ったかと思えば運転手は

アクセル思いきりふかし、

目の前にあった沼へ直行した。


「ちょ、ちょっと何してるんですか!やめ…キャアァアァア!!」

ぶくぶくぶく…


タクシーは沼に突っ込み、そのまま沈んで行った。


それを傍(はた)で見てた女の人が居た。

「な、何なの今の…」

でもその女の人は警察にも救急車にも通報せず、

我関せずを決め込み、そのまま歩き去った。

面倒な事に関わり合いになるのが

嫌だったんだろう。


それからその女の人は交差点に出て、

タクシーを拾って帰ろうとした。


「どこまでですか?」

「あ、道言いますから」

「わかりました。ドア閉めますね」


都内を出て郊外まで行き、

ちょっとした公園横の道を走った後、

タクシーの目の前には沼が広がっていた。


「ちょ、ちょっと何してるんですかあなた!」

「チクショウ…!」

小さくそう言ったかと思えばその運転手は

アクセルを思いきりふかし、タクシーごと沼の中へ。

ぶくぶくぶく…そのままタクシーは沈んで行った。


その沼のほとりへ、先駆けて来ていた報道陣が居た。

「見てろよ。ここにタクシーが突っ込んで来るから」

「ほんとに来るんですかあ?」


それから少しして、文字通り、

タクシーが1人の乗客を乗せてそこへ走り、

キキィー!というブレーキ音と共に

沼の中へ車ごと突っ込んだ。


「な、なんで…?!ほんとに…!」

「な?!そうだったろ!見たろ!?」


報道陣たちはすぐに帰り、

記事にしたかもしれない。


そして今日も都内から郊外に向けて、

1台のタクシーが走って行く。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=sYUsOe3cGdc

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沼とタクシー 天川裕司 @tenkawayuji

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