どんな時も
高麗楼*鶏林書笈
第1話
王が亡くなったことにより、元にいた太子が帰って来た。頭のてっぺんから爪先までモンゴル風の恰好で、すっかり元の王族のようになっていた。おまけに元の皇帝の娘を妻にめとっていた。
そんな彼が高麗国の王になるのである。朝廷の人々の気持ちは複雑だった。
三別抄が滅亡した後、高麗は元の支配下に入った。それは仕方のなかったことで既に受け入れていた。だが、モンゴル人のような人物が玉座に就くことには何処となく違和感があった。
歳月は流れ、開城の町には、モンゴル人、回回人の姿が、日常的に見られるようになった。そして、人々の服装もモンゴル風が主流になった。若い娘たちの間では、回回人の売る双花という菓子が人気を集めていた。庶民たちは、取り敢えず安定した社会の中で日々を送っていた。
宗主国である元には定期的に貢物をせねばならず、それは人々にとって負担でもあった。
だが、これを利用して元の朝廷での成功を夢見る者も現れた。貢女や宦官として元の王宮に入り、寵愛を得たり、また功績を立てて出世した者が現れたためである。
元朝最後の皇后になった完者忽都皇后(奇皇后)はその代表例といえよう。
豊基郡守として赴任した周世鵬は、かねてからの夢を果たした。朱子学をもたらした安珦をまつる書院を立てたのである。
前王朝はモンゴルの支配下にあったが、それでも我が祖先たちは新たな学問や綿花、火薬等を輸入した。
どのような状況下でも価値あるものは学ばねばと書院の建物を見ながら世鵬は思うのだった。
どんな時も 高麗楼*鶏林書笈 @keirin_syokyu
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