「早朝の畳の上」「見上げる」「猫」

 すやすやと眠る横顔を眺めて、福島はふっと唇をゆるめる。いつまで経っても宮城の寝顔は幼いままだ。診療所での彼からは、あまり想像のできない寝顔だ。いつもは皮肉っぽく歪められている唇は、半開きになっている。試しに指を近づけてみたら、ちろりと指先を舐められた。

 寝惚けている振りなのか、本当に未だ寝ているのか。

 どちらなのだろう、と思いながら、指先を滑らせる。鎖骨をなぞって、肩口から、指先まで。それからまた、反対側も。肋骨の一本一本もなぞっていくと、手を掴まれた。

「いつから起きてたんだ?」

「あばらはくすぐったいんだよ」

 手を掴んだそのまま、宮城は福島の上に圧し掛かる。

 まるで猫みたいだ。

 身体の上の宮城を見上げて、福島は小さく笑う。

「……何」

「なんでもないよ」

 まだ夜は明けたばかり。早朝の畳の上、猫のように戯れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜伽に代えまして ritsuca @zx1683

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説