仲直り

健斗の葛藤(健斗視点)

*** 健斗視点 ***


「はぁ、俺は一体、何をしているんだろうな……」


 そんな事を1人呟きながら学校に登校する。この間の土曜日、俺は真昼とデートをした訳だけど、途中で真昼と喧嘩をしてしまった。


 理由は明白。真夜の悪口、侮辱に近い事を言ってしまったからだ。いや、それよりも前から口論になっていたか。どっちにしろ、その全てに真夜が関わっている。


(そりゃ、友達の事を悪く言われたら、怒るよな……)


 今更ながらあの時、つい口に出してしまった言葉に後悔する。微塵もそんな事を思っていないのかと言われたら違うけど、それでも俺はあいつのこれまでを知っている。


 あいつが優しくて他人にも気を遣える奴って事くらい、そんなの分かりきってるのにな……。


 そんな事を考えながら教室に入ると、既に皆が揃っていた。


「おはよ……」

「「おはよう、高橋」」

「高橋君、おはよー!」

「……」


 皆は普段と変わらないけど、真昼は1言も俺に挨拶をする事はなかった。俺が悪いのは知っている。それでも真昼にだって、悪い所はある。


 真夜に惹かれてるなんて、想像もしたくなかった。だから俺も意地を張り、1人自分の席に向かう事にした。


 そうして、机に突っ伏しながら脳裏に過るのは、あの時の真昼の言葉だ。




──だからはっきり言うわ。私の大切な人に対して、侮辱した今の健斗なんて、好きじゃないわ!!




(あぁぁ、俺はぁぁぁ!!)


 確実に取り返しの付かない事態になってしまったと思った。だって真昼から直接、と言われた。


 仮に怒って咄嗟に出た言葉だとしても、その言葉が出ると言うことは、薄々そう思っていたからに違いない。


 それに真昼ははっきりと、真夜の事をと言った。それってつまりはなのだろう。



(なんでだ。どうしてこうなった……)



 真昼の方に視線を移せば、普段と変わらずに山口や真夜と話している。でも、どうも様子がおかしい。どこか元気がないように見える。


(もしかして、俺と喧嘩した事に罪悪感を感じてるとかか?)


 そんな、あり得ない馬鹿げた考えをしながらも、時間は勝手に過ぎていき、気が付けば真昼と1言も話す事なく、昼になっていた。



***



 昼、今日は男3人での飯だ。真昼とは喧嘩をしているから一緒に食べる事が出来ないでいる。それに弁当だってそうだ。久しぶりに真昼の弁当じゃなく、母さんの弁当を食べている。


「高橋、真昼と喧嘩したらしいな」

「……なんで、真夜がそれを知ってるんだ」

「俺が真夜に伝えたんだ。藤原さんが怪我をしたから手を貸してくれって」

「……は?」


 真昼が怪我!? そんなの俺は知らないぞ。母さんからは『真昼ちゃん、今日からお弁当作らないって言ってたわよ』としか聞いてないのに……。


 その事実に驚愕していると、真夜が俺の顔を見て、何やら察したらしい。


「怪我の事、知らなかったのか? 真昼からは『瞳さんには伝えた』と聞いてたが、その様子からすると、反省しろの意味合いで敢えて伝えなかったとみた」

「そうっぽいね」

「な、なんで、また、真夜が……」

「今回の喧嘩について、俺が原因だと言うのは知ってる。……だからな高橋、ちょっとついて来い」

「は? ついて来いってなんだよ」

「2人っきりで話すという約束があるだろ。……いいから行くぞ! 雄太、悪いが少し席を外す」

「分かった。行って来い」


 真夜はそう言って席を立つ。そして『さっさと行くぞ!』と言うので、仕方なくついて行く事にした。


 とは言え、俺もあいつに言わなきゃならない言葉がある。



***



「屋上……、か」

「そうだ」


 真夜と来たのは屋上だった。一体何を話すつもりだ? それに俺からはもう真夜に聞く事なんて……。


「先ずは謝っておく。今回の件、すまなかった」


 とりあえず、びびった。だっていきなり真夜が謝るもんだから、思考が停止しちまった。


「な、何、いきなり謝って……」

「俺が決意した時、さっさとお前に伝えておけばよかった。……真昼を優先するあまり、お前に対して扱いが雑になってた。いや、自分自身に甘えてた。そんな中途半端な対応と、適当にはぐらかしてきたツケが回って、今回の喧嘩に繋がっちまった」

「だ、だから、一体何の話を──、っ!?」


 真夜にそれを問おうとしたのだが、聞けなかった。あいつの表情はこれまで見た事がないくらい真剣な表情だったからだ。


「高橋、真昼の事はか?」

「は? いきなり何を……」

「いいから、言え」


 意味が分からねぇ。それは真夜たちも既に知ってる事だろう。だからはっきりと真夜に伝えた。


「あぁ、真昼の事はだよ。それはお前らだって──」

「俺もだ」



「…………………………は?」



「俺も、真昼の事がだ」



 頭が真っ白になる。今、こいつはなんて言った? 真昼の事が好き? だって、俺という存在がいながら……。



「一目惚れだ。それも、転校前からのな」

「なっ!?」

「お前らに接触したのも、初めは真昼の気を引くために友達から始めようと思ったからだ」

「ま、待ってくれ! それって、つまり……」

「俺は、……最初っから真昼の事が好きだったよ」

「───」


 その事実に何も言い返す事が出来なかった。今までも何度もそうじゃないかと思ってたが、その度に真夜は否定していた。


 だけど、看病の一件からそれが嘘だと言う事に行き着いた。それでも信じたかった。真夜は真昼の事が好きじゃないんだと。


 だが、今はっきりと真夜は真昼の事が好きだと言い放った。ふざけるなよ……。


「とは言え、お前含めて今は、大切な友人だと思ってるのもまた事実だ」


「お前、なんで今になって……」

「お前がムカついてるのは分かる。同じ立場なら、俺だってそうなる。それでも、やっぱりお前にはもっと早い段階で、はっきりと伝えるべきだった」


「それに、今回の喧嘩の発端として、その中心に俺がいると言うなら尚更だ。……だからお前には、俺の気持ちをはっきり伝えているんだ。これ以上、真昼とお前が喧嘩をしないようにな」

「なんだよ、それ……」


 意味が分かんねぇよ。なんで、真昼なんだよ。山口がいるじゃねぇか。なんで、わざわざ俺という存在がいる真昼に手を出すんだよ。


 さっきから俺の頭の中はそんな考えがぐるぐると回っていた。それと同時に、真夜に対して怒りが沸き上がる。


「これまでのは、全部お前の戦略だってのか。……なんで真昼なんだよ! 山口だっているだろ!! それに、のは俺なんだぞ!」

「恋愛に早いも遅いも存在しない。誰が誰に恋をするのか、それは自由だ。……それは真昼だってそうだ。彼女が高橋以外を事だって自由なんだ」



「っ! ……ふ、ふざっけるなっ!!」



──バヂンッ!!



 その言葉にカッとなり、思わず真夜の顔を思いっきり殴ってしまった。


 人を殴るのは初めてだ。拳が痛いのも当然だが、それ以上に友達を殴ったと言う罪悪感から、胸の奥が物凄く痛い。



「っつぅぅ……、これについては、甘んじて受け入れよう」



「……正直、俺は真昼を諦めようと考えていた時があった。だがな、お前が絡む度に真昼は悲しんだんだ。泣きそうな顔でグッと我慢していたんだぞ! 好きな女の子のそんな表情を何度も見て、諦められるか? 俺には無理だ。……彼女を守りたい、幸せにしたいと、心の底から思ってる」

「それは、……俺の役目だ!」


「無理だ」

「なっ!?」


 たった1言、はっきりと真夜から否定された。


「お前には真昼を幸せにする事は出来ない。いつまでも自分の気持ちだけを押し付けてる、お前にはな」


「……それに、仮に真昼と付き合えたとしても、どこかで確実に決壊する。今回のように、他でもないお前の手によってな」

「なんで、今回の喧嘩もそうと言えるんだよ。それに喧嘩の理由は……」

「そうだな。理由自体は俺が原因だ。だがな、本当にそれだけか?」

「そ、それは……」




──何が、話をズラすよ! それは健斗の方でしょ!? いつも私だけが我慢して我慢して、健斗の話に耳を傾けていたわ! どれだけ言っても健斗ははぐらかすし、都合の良い事だけを通そうとする。どれだけ私が我慢してたと思っているのよ……




 真昼は俺に対して不満を持っていた。ずっと我慢していたと……。俺はそんなにずっと、真昼に負担をかけていたのか?


「その顔を見るに、心当たりはあるようだな。……いいか、高橋。自分を見つめ直せ。じゃないと、本当に取り返しが付かなくなるぞ」

「なんで、お前がそんな事を……」

「友達だからだ。例え恋敵だとしても、お前が俺にとって大切な友達の1人である事に変わりはない。だからこうして腹を割って、お前と2人で話しているんだ」


「…………」


「もう一度言うぞ。自分を見つめ直せ。このまま、真昼と喧嘩別れみたいになってもいいのか?」

「それは……、嫌だ」

「なら見つめ直して、ちゃんと仲直りしろ。今回、俺は真昼と約束してて手を貸すことが出来ない」


 もう何が何だか、分からなくなっちまった。



 真昼と大喧嘩をした。

 真夜から今更になって、真昼の事が好きだとカミングアウトされた。

 真夜から真昼の事を幸せに出来ないと言われた。

 真夜から真昼と仲直りしろと言われた。



(もう、どうすりゃいいんだよ……)


「今直ぐに見つめ直せとは言わない。焦らずにちゃんと自分と向き合って、真昼と仲直りするんだ。……さて、俺からの話はこれで終わりだ。そろそろ戻るか」



 いつもの調子でそんな事を言うから、余計に調子が狂う。けど、その前に真夜には言わなければならない事がある。



「真夜」

「なんだ?」

「……その、さっきは殴って悪い。それと、真昼と喧嘩した時、お前の傷の事で酷い事を言っちまった。どっちも、カッとなっちまったんだ……」

「そうか。別に怒るつもりは微塵も無いから安心しろ。つーか、俺に謝れるなら、真昼にもちゃんと謝れるな」

「ほんと、意味が分かんねぇよ。お前は……」


 それから俺たちは2人で教室に戻った。柊からは『青春でもしてきたか?』と言ってくるから、やっぱりこいつも真夜が真昼の事が好きだった事を知っていたようだ。


 俺だけが知らなかったらしい。



(俺は、どうしたらいいんだよ……)



 いつ、何処で間違えた? 真昼が真夜に惹かれていて、そんな真夜も真昼の事が好きだと俺に言った。そんなの、もう両想いじゃねぇかよ……。



 今まで真昼は、ずっと俺だけを想っていると信じていた。だが実際は、俺への想いから離れてしまっている。


 その事実にいつまでも答えが出ず、ただただ時間だけが無情に過ぎていくだけだった。



────────────────────────



ここまで読んでいただき、ありがとうございます


今回はあの時あった真夜と健斗の裏話となります


きちんとBSS物ならではのあのセリフを入れてみましたが、うん、健斗に合いますね


ここまで読んでる方ならある程度察してると思いますが、健斗は根がいい奴なんです

なので、険悪なムードにするつもりはなく、割とマイルドな感じに真夜からの告白を入れ込みました。


長くなりましたが、他視点から真夜視点への復活はそろそろになりますので、もう少々お待ち下さい


それでは、また明日の投稿をお楽しみに下さい

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