第4章:これまでの終わりとこれからの始まり
プロローグ
恋のライバル(美美子視点)
*** 美美子視点 ***
「まひるー、今日も一緒に帰る?」
金曜日のお昼、私は今日もまひるに一緒に帰るかを尋ねていた。高橋君と喧嘩を始めてからと言うものの、毎日のように一緒に帰ってた。
そもそも真夜君が一緒に帰るべきなんじゃとも思ったんだけど、当の本人が『悪いが、今はそっとしてやりたいんだ』と言い、下校拒否をしていた。
(こういう時の真夜君って、気遣いが出来ると言うか、女心を理解してないと言うのか……)
とても判断がし辛い。でもそれは、真夜君の優しさから来るものだと思えば、不思議と納得出来るから困る。そういう所も大好き。
そんな事を考えていると、まひるは私の問いに対して答えた。
「ごめんね、みーちゃん。今日はその、一緒に帰れないの」
「ありゃ、そうなの? と言う事は他の誰かと帰る感じ?」
「う、うん……」
まひるの顔がじんわりと赤くなる。きっとその相手は、真夜君だと察せた。それは皆も同じで、途中2月のアレで盛り上がったけど、何とか軌道修正をして、まひるに真夜君と帰るのかと確認したら、思いもしない回答が来て驚いた。
「か、帰るというより、その……、シンヤに何処か一緒に行かないかって誘ってて……」
(うえぇぇぇぇ!?)
あのまひるが、始めて真夜君とデートすると言うのだ。これを驚かなくてどうする。
(でも、そっか。とうとうまひるも秒読みかぁ……)
それはつまり、私の恋の終わりを意味している。
だって、まひるが認めたらもう無理だよ。真夜君には少しでも私に気持ちを傾けさせると伝えておきながら、結局今まで以上に進展できたとは到底思えない。
(でも嫌だ。そんなのは嫌だよ……)
そんな暗い気持ちを必死に押し留め、普段の私として、まひると接する事にした。……どうして私は、こんなにも損をする役割をやっているんだろう。
そんな自分が嫌になる。
***
その日の夜、LIMEからメッセージが来たので、確認してみると、差出人はまひるからで、思わず心臓がビクンとびっくりした。
(まひる、もしかして……)
放課後、私はまひるに精一杯の虚勢として『これでようやく、恋のライバルになれるかな』と言った。だってそうしないと、心が挫けそうになるから。
必死に強がって隠してるけど、恋を自覚してからというもの、自覚していないまひると真夜君の絡みを見る度に、本当はずっと胸が苦しいし、心が痛い。
そして、嫉妬してた。
(やだ、見たくない。見たらもう終わっちゃう。……そんなの嫌だよぉ)
こんなにも彼に恋焦がれてるのに、何も出来ずに終わるだなんて、そんなの辛すぎる。でも、それでも見ないとと思い、震える手で何とかメッセージを確認した。
:今、時間いいかしら
怖い。まひるとメッセージのやり取りをするのが怖いって、初めて思った。
:大丈夫だよ
それだけ送ると、直ぐに返事が返ってきた
:明日の朝8時頃、みーちゃんのお家の近くにある公園で会えないかな?
「明日……」
まるでこれから断罪される罪人のような感覚に陥る。わざわざ会いたいと言うなんて、そんなのもう……。
それでも必死に暗い気持ちを押し殺して、"大丈夫だよ"とだけ送って、嫌な緊張と共にその日は終えた。
***
「会いたくない……」
早朝、まひるとの約束の場所に到着した私は、そんな事を呟きながらベンチに座ってる。
心臓からはドクンドクンと、嫌な緊張の音が聴こえる。そうして待っていると、『みーちゃん!』と、まひるの声がした。
「まひる……」
ダメだ、声が震えちゃう。
それに、今聴こえたまひるの声色は今までと違った。今週の何処か元気がなかったまひるでも、それ以前のまひるとも違う。
もう、それだけで察してしまった。
(まひるが、真夜君に恋をしちゃったんだ……)
まひるから直接言われた訳じゃない。それでも分かる。だって同じ人を好きになった、大切な大切な私の親友なんだから。そして自然と目に涙が溢れる。
「ごめんなさい。待ったかしら?」
「だ、大丈夫だよ」
「みーちゃん。あの声が、それに……」
そうだよね。バレるよね。でも、無理だよ。
「だ、大丈夫だから。それより、どうしたの?」
震える声でそう尋ねると、まひるは私の隣に座り、私をジッと見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「あのね、みーちゃん。……私、ちゃんと認めれたよ。私も、シンヤに恋をしたよ」
ズキンと、心臓に強くて鈍い痛みがあった。
もうやめて欲しかった。これ以上、私に残酷な事を言わないで欲しい。だって、この後に紡ぐ言葉は絶対に──。
「でもね、シンヤに告白してないよ」
「……………………え?」
まひるの言葉を聞いて、頭が真っ白になった。
意味が分からない。なんで?
なんで告白をしてないの?
だって両想いなんだよ?
高橋君の時とは違うんだよ?
真夜君が彼と同じ事をしないのは、まひるが1番分かってる筈なのに、なんで?
「……な、なんで?」
「みーちゃんと、ちゃんとした恋のライバルになりたいから」
「ライバル……」
以前、私がまひるに告げた事だ。まひるに向いてる真夜君の心を私に傾けさせる。それを誓う為に、なけなしの勇気を振り絞って、まひるに宣言した。
でも、本当は気付いてた。私とまひるじゃ、恋のライバルになる事は出来ない。だって、真夜君の好きな人はまひるなんだから。
(何で、どうしてそんな事を言うの? 私にむざむざ負け戦を続けろって言うの?)
そんな負の感情が表に出そうになるけど、必死に押し留めながら、まひるの言葉を待った。
「シンヤに恋を自覚してから、帰るまでずっと考えてた。それで1つ、覚悟した事があるの」
「覚悟?」
それが、無性に気になった。
「うん。……私ね、みーちゃんになら、シンヤを盗られても後悔しないって」
「なっ!? ……な、何、言ってるの?」
その言葉に驚愕した。
意味が分からない。
「みーちゃんが言いたい事、分かるわ」
「でもね、みーちゃんからは、シンヤの事が本当に好きなんだって伝わる。毎日恋を更新してるんだって、今なら分かる。……だけど、このまま私とシンヤが付き合ったとしたら、どうしてあの時って、絶対にみーちゃんは後悔するわ」
「それは……」
そうかも知れないと思った。私の知らない所で、まひるが真夜君に恋をして、そのまま告白して付き合ったとしたら、私は絶対に後悔する。
そして、それは昨日だと思った。
「私はシンヤの事が大好き。初めて男の子にどうしょうもない程に恋をしたの。そしてシンヤも私の事が好き。だから本当は直ぐにでも恋人になりたい」
「……だけどね、今まで中途半端だった私が、自覚したからと言って、シンヤと付き合うのは違うと思う」
「自分勝手な事だけど、そんな事をしたら、私はもう2度と、シンヤやみーちゃんと対等でいる事が出来ないって思っちゃうの」
「私はね、みーちゃんに後悔して欲しくない。雫ちゃんも言っていたでしょ? 後悔も悔いもして欲しくないって」
──皆にはどんな結果であろうとも後悔も悔いも残して欲しくないんだ
百瀬さんが告白した時、雫ちゃんがそう言っていたのを思い出した。
そうだ。このまま、まひるたちが付き合ったら絶対に後悔した。何も出来ていない自分を許す事が出来なかった筈だ。
「それに、今はそうかもしれないけど、明日になったらシンヤの心はみーちゃんに向いているかもしれないわ。……明日がダメでも、明後日、明々後日と、先の未来は誰にも分からない。私の心が健斗からシンヤに染まったように」
俯いてる顔を上げ、私はまひるの顔を見た。その表情はこれまでよりも強い、恋する女の子の顔だった。
「だからね。今度は私からみーちゃんに宣言するわ。…………2月のバレンタイン。そして3月のホワイトデー。それまで、全力で戦いましょう!」
「2人のありったけの想いをシンヤにぶつけて、ホワイトデーの時にはっきりさせましょう! その時、私たち2人のどっちにシンヤの心が向いてるのか、恨みっこ無しよ!!」
「まひる……」
知らなかった。恋を自覚したまひるは、こんなにも心が強いんだ。それに微かにだけど、まひるの両手が震えてる。
そんなまひるを、ただただ見る事しか出来ないでいると、まひるはその後の言葉を紡いだ。
「みーちゃんは絶対にこの勝負を受けるわ。……だって、同じ人に恋をした私の大切な大切な親友が、シンヤへの恋心を後悔を残したまま、中途半端に諦めるなんて事、絶対にしない」
「シンヤの中に自分を刻むと、私にそう強く宣言出来るだけの強い心を持ってる、恋する女の子なんだから!!」
「っ!」
酷い話だよ。まひるも言ってたけど、自分勝手にも程がある。わざわざ私の為に、両想いの真夜君へ告白もしなければ、むしろ奪われても後悔しないとか言うなんて……。
しかも、私を焚き付けるような事も言うし、そんなの悪女がやる事だよ。
でも──。
(でも、まひるの言う通りだ)
私が後悔を抱えたまま、中途半端に真夜君を諦められる筈がない。
彼への想いが、この程度で終われる筈がない!
両想いが何?
真夜君がまひるの事が好きだからって何?
そんなの、今に始まった事じゃない!!
それに、まひるの言葉を聞いて気付いた事がある。
(今の状況って、前の真夜君と同じだ)
──現状の高橋との関係性から何をどう頑張っても勝率は限りなく0だろう。なので勝率を上げるためにも先ずは情報を集めて、彼女らの事を知ろうとしてるんだよな
そうだ。あの時、真夜君の勝ち目はほぼ0だった。にも関わらず、彼はやり遂げた。高橋君から自分へと、まひるの心を向けさせる事に成功した。
(……あはっ、じゃあ一緒だ)
こんなにも残酷で、こんなにも嬉しい事はない。だって私は今、彼と同じ気持ちを味わえてる。共感出来る! これは、私だけに許された権利だ。
そう思い至ったら、さっきまで落ち込んでいた心に火が灯る。どうしようもない程に真夜君への想いの炎が燃え上がる。
この気持ちはまひる以上なんだって、そう言いきれる!
だから!!
「そうだよ。私の、真夜君への想いがこの程度で終わる筈ないよ! この想いは絶対にまひる以上だって言える。……だからね、まひる。その勝負受けるよ!」
だからこそ、私にラストチャンスを与えたまひるに宣言する。
「前回のはまひるの勝ちだけど、もう負けない。今度こそ絶対に私が、まひるに向いてる真夜君の心を奪ってみせる!! そうなってから後悔しても遅いからね!」
「ふふふ、ええっ!! それでこそ、私の親友よ! でもね、私の方がみーちゃんよりもシンヤを想っているわ。……だって、私だけの王子様なんだから!」
「えぇー、違うよ。私だけの執事様だよぉ!!」
「「あはははは!!」」
この日、私とまひるは本当の意味で親友になれたような気がする。
それからは、まひるから昨日のデートの事を聞いたり、いつ真夜君へ話すのかを話し合った。
それと、おんぶとか物凄く羨ましいと思いながら、これからどうやって真夜君を揺さぶるかを考えてみる。
真夜君の事を考える時間は大好き。だって、貴方の事を考える度に、私の想いは更新される。その度に恋をする。
あぁ、早く貴方の声が聞きたい。
そして──。
──もっと私に、貴方に恋をさせて下さい。
────────────────────────
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここからが4章スタートとなります
恋を自覚した迷いのない真昼は強いですね
色々悩みましたが、これまでの積み重ねに対して、1番しっくりくる形になったのではないかと……
それと、健斗との決着については、なるべく皆さんに納得出来るようにするつもりですので、お楽しみにして下さい。
それでは、また明日の投稿でお会いしましょう!
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