クリスマスイヴを真夜君と過ごす(美美子&真夜視点)
*** 美美子、真夜視点 ***
「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう! 真夜君をデートに誘っちゃったぁ!! あっはぁぁっ!!」
その日の夜、私はベッドの上で悶えていた。理由は簡単。明日、真夜君とイルミネーションデートが出来るからだ。真夜君にはその気がないのは知ってるし、まひるが好きなのも知ってる。
それでも、どんな理由であれ、やっぱり好きな人とクリスマスイヴを一緒に過ごせると言うだけでも、胸が高鳴る。
「お姉ちゃん、うるさぁい!」
「え、あぁ、ごめんね太一。それよりもちゃんとノックしなさい」
私が声を上げながら悶えていたので、太一が文句を言いに私の部屋に入って来た。いくら弟とは言え、女の子の部屋にノックも無しに入るのはダメだと注意したのだけど、『ノックしたもん』と返されてしまった。
それだけ私は、周りの音が聞こえないくらい、明日のデートで頭がいっぱいになっていたと至り、恥ずかしくなった。
「そうなの? だったらごめんね」
「いいよ。それよりもお姉ちゃん、明日どこか行くの?」
「うん。真夜君とね、イルミネーションを見に行くの」
「お兄ちゃんと!? いいなぁ、僕も行きたい!」
「絶対にダメ!!」
「えぇー」
太一には悪いけど、明日だけは絶対に、誰にも邪魔だけはされたくない。別に告白をするつもりはないけど、好きな人と過ごせる時間を少しでも多く、なるべく長く欲しい。いつかその時のために。
太一は文句を言いながらも部屋を出て行ったので、ふとスマホに視線を落としてみると、LIMEでメッセージの通知が来ていた。一体誰からだろうと思い、確認してみると──。
(あれ、まひるからだ)
こんな時間にどうしたんだろうと思いながら、メッセージを確認することにした。
:こんばんは、シンヤへのプレゼントを最初に渡すのは、みーちゃんからだったね
このメッセージを見て、まひるは私よりも先に渡さないんだと思った。
:まひるは渡さないの?
:私は25日に渡すわ さっきシンヤにも25日の朝、少し早めに会えないかって聞いたから
どうやらまひるは25日の朝にプレゼントを渡すらしい。なんで放課後じゃないんだろう。それが気になったので、まひるに聞いてみることにした。
:放課後じゃないんだね
:うーん。それもいいけど、クリスマスだし、朝の方がいいと思ったのよね
:そっか じゃあもしかしたら朝、一緒に貰ったプレゼントのお披露目できるかもね
:確かにそれはありそうね
:まひるも明日、高橋君とでしょ? デート楽しんできてね
そのままゴールインしないかなと悪い考えをしちゃったけど、今のまひるは以前ほど高橋君に盲目という訳でもない。もしかしたら……。
:楽しむつもりよ
(つもり……、ね)
そのメッセージだけでも、今のまひるは高橋君一筋じゃなくなってきているのが分かる。
:楽しんでね、まひる!
:その前に、明日はテスト最終日だけどね
:言わないで!
背けたい現実に目を逸らしながらも私たちはその後もメッセージのやり取りをし、その日は終わった。
***
「よし。じゃあ、行くかな」
今日は中間テスト最終日。今日は割と楽な教科ばっかりなのでそこまで心配することもない。
どっちかと言えば、今日はイヴなので、どうしてもそっちに思考が偏ってしまう。
(プレゼントの準備良し、イルミネーションについても見る場所は決めた。何一つ、問題はないな)
念入りにバッグの中や、今日の行く場所についてシミュレーションを行い、問題ない事を確認した後、そのまま家を出て、学校へと向かって行った。
***
「「終わったーーー」」
「ふふふ、お疲れ様、2人とも」
「お疲れ、よく頑張ったな」
中間テストも全て終了し、全てから解放された2人は歓喜の雄叫びを上げている。
「高橋たちはこれからもう行くんだろ? 楽しんで来いよな」
「あぁ! まひる行こうぜ」
「ふふふ、そうね。それじゃ、みーちゃん、シンヤまた明日ね!」
「また明日ね、まひる!」
「また明日」
そう別れの言葉をかけた後、真昼が俺の所まで戻ってきた。何かを伝えたい表情を浮かべているので、何だろうと思いつつしゃがむと、耳元でそっと明日の朝の件について囁いた。
「シンヤ。明日の朝、待っててね」
「っ!?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、真昼はそのまま高橋と一緒に教室を出て行ったのだが、マジで今のは心臓に悪い。
(めっちゃ、ドキドキした……)
「真夜君はこの後、人に会うんだよね? 何時にどこで待ち合わせする?」
ミミは俺に時間と場所をどうするか尋ねてくるが、どうやら昨日言った事についてまだ理解していなかったようなので、ネタばらしをすることにした。
「ん? まだ分かってなかったのか?」
「何が?」
「野暮用ってのはミミと会うことだったんだが……」
「……へ?」
どうやら本当に気が付いていなかったようだ。だけど、次第に状況を理解してきたミミはボンっと一気に顔が赤くなった。
「流石に、イヴの日にミミたちが知らない人と会うことはないさ」
「そ、そうだったんだ……。そうだよね、うん」
ミミは驚きながらも嬉しそうな笑みを浮かべている。まぁミミからしたら、これから夜まで一緒にいられると分かったんだから、嬉しいよな。
「それじゃ、夜まで遊びながら時間潰すか。まずは昼だな」
「うん! いっぱい遊ぼう、真夜君!」
満面の笑みを浮かべならそう答えるミミと共に、俺たちはファミレスに行き、その後はカラオケで歌ったり、ゲーセンに行ったりしながら、夜になるまで楽しい時間を過ごすことが出来た。
***
「きれーい!」
「これはまた、綺麗だな」
時間は既に夜の6時を回っており、辺りはすっかり暗くなっている。そんな俺たちは今、渋谷のイルミネーション、"青の洞窟"というイベント広場に来ている。
雄太たちと出くわす可能性は捨てきれないが、ここは名前の通り、一面が青一色のイルミネーションで飾られている。それをどうしても見たかったので、ここへ来たのだ。
「ちょっと、本当に青一色だよ!!」
「綺麗なのはそうだけど、こうも青一色じゃ、逆に目がおかしくなりそうだな」
「あははは、確かに!」
俺たちは一緒に写真を撮りながら、ゆっくり歩くことにした。
「ひゃああ、目が痛いね」
「意外と眩しいな」
思いの外、青一色は眩しさがより際立つのか、想像以上に目が痛くなる。
「まぁそれも1ついい思い出になるんじゃないのか?」
「そうだね! 一緒に眩しいって共有できるのもなんだかいいかも」
そんな話をしながらまっすぐ進んで行くと、どうやらイルミネーションの終わりまで着いたようだった。
「あちゃ、もう終わりかぁ」
「帰りもあるから、まだまだ堪能できるぞ」
「そうだね!」
それからも俺たちはイルミネーションを思う存分堪能し、もういい時間だったので、帰ることにした。
***
「今日はありがとうね、真夜君! とっっても楽しかった!!」
「俺も楽しかったよ」
帰り際、近くの公園のベンチに座りながら俺たちは今日1日の出来事について話しているが、流石にこれ以上は親御さんも心配するだろうし、そろそろミミにプレゼントを上げることにした。
「ミミ、日ごろの感謝を込めてのクリスマスプレゼントだ」
「……ありがとう、真夜君!」
「ずっと、いつ渡されるのかってそわそわしてただろ」
「あははは、そりゃね。じゃあ私からも! これ、受け取ってください!」
「ありがとな、ミミ」
俺たちはその場でプレゼントの交換を行い、開けてもいいかと確認しようとしたのだが、ミミの方から『今開けて欲しい』と逆に言われたので、開けることにした。
「……財布か」
どうやら俺には財布をプレゼントしてくれたようだ。それも前から欲しいと思っていた二つ折りの財布で色も紺色と実に俺好みだった。
「よく財布が欲しかったって気が付いたな」
「えへへへ、前々からお財布が真夜君には合わない気がしたんだ」
「これは中学の時に親父が俺にって渡した奴だからな。微妙に俺のセンスと合わないんだが、流石に親からのプレゼントを無下にもできなかったからな。だからこうしてプレゼントされるとは思わなかった。ありがたく使わせてもらうよ」
「っーーーーー! うん、是非使って!!!」
その後、ミミは『私も見ていい?』と確認してくるので、俺はコクリと頷き、ミミは俺のプレゼントを確認した。
今日は嬉しい事がいっぱいあった。学校のテストが終わったら、イルミネーションを見に行くまでは真夜君と過ごせないと思ってたのに、野暮用の相手は私だったと知った時は物凄く驚いたし、物凄く嬉しかった。だって、今日1日ずっと一緒に居られるんだから。
それから放課後以降はずっと楽しかった。ファミレスで、初めて2人だけで一緒にご飯を食べた。カラオケで一緒に歌った。意外と歌が上手くてびっくりした。物凄くカッコよかった。その後もゲーセンに行ったり、甘いものを食べたりと2人っきりの時間は本当に幸せだった。
イルミネーションだってそうだ。好きな人と一緒に見られるって事だけで、いつも以上に楽しく、幸せな気持ちになれた。これが恋なんだって実感できた。
真夜君にお財布をプレゼントして中身を確認した彼の表情は本当に嬉しそうだった。プレゼントしてよかったって心の底から思えた。もうこれ以上の幸せなんて、それこそ告白して恋人になれた時くらいだと思ってたけど、どうやらそこに至るまでには段階があったらしい。
「私も見ていい?」
真夜君から貰ったプレゼントの中身を確認していいか聞いたら、コクリと頷いてくれたから、確認したんだけど──。
「綺麗」
彼からのプレゼントは白いブレスレットだった。それに青紫色の綺麗な宝石が付いていて、思わず見とれてしまった。
「タンザナイトだ。ミミの誕生日石らしい」
「とっても綺麗。こんな綺麗なブレスレット、本当に貰っていいの?」
「俺がミミにと思って買ったんだ。俺が貰って欲しいんだ」
そう言われるだけで胸が高鳴る。今すぐにこの場で告白したい願望にかられるけど、グッと我慢した。
(まだ、ダメ……。まだ、この気持ちを噛みしめさせて……)
「ありがとう、真夜君! ……その、付けて貰ってもいい?」
「お安い御用だ」
そう言って、真夜君は私の利き手とは逆の左手にブレスレットを付けてくれた。照明と月明かりに照らされた白く輝くブレスレットは本当に綺麗だった。
「うん。やっぱりミミに似合ってるな」
「大事にする! 一生大事にするね、真夜君!」
「あぁ」
それから、『そろそろ帰ろう』と彼は言うので、時間を確認したら確かにそろそろ帰らないと怒られそうだと思ったので、そのまま初めて彼に家まで送ってもらったんだけど、最後にこれだけは許して欲しい。
「ねぇ、真夜君」
「ん、どうし──」
私は真夜君に近づき、腕をグイッと引き寄せると、グラッと片方向にバランスを崩す。そしてそのまま──。
──チュッ
ピョンっと、小さく跳ねるように身体を浮かせ、彼の右頬にそっと、唇を重ねた。
「────」
「じゃ、じゃあねっ!」
私はもう色々とパンクしそうだったけど、それ以上に幸せだった。君が私で顔を赤くするのも、私が君で熱くなるのも、全部が私にとって、幸せでしかなかった。
勢いよく家に入り、そして寝るまでの間、プレゼントしてくれた、ブレスレットを眺める。
(しちゃった、しちゃった、しちゃったぁぁ!!)
「っーーー! っーーーーー!!」
それと同時に、頬にキスした時の感触を思い出し、バタバタと悶え続ける。それだけの事なのに幸せで、胸いっぱいだった。
だからいつか、ちゃんと伝えよう。
──貴方の事が、大好きなんですって。
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