幼馴染のクリスマスイヴ(健斗&真昼視点)
*** 健斗、真昼視点 ***
「高橋たちはこれからもう行くんだろ? 楽しんで来いよな」
「あぁ! まひる行こうぜ」
「ふふふ、そうね。それじゃ、みーちゃん、シンヤまた明日ね!」
「また明日ね、まひる!」
「また明日」
ようやく中間テストが終わった。テスト結果についてはあまり考えたくない。だがそんなのはどうでもいいんだ。何故なら今日はクリスマスイヴ! 前々から真昼と約束していた恋人になれる記念日だ!
俺と真昼は真夜たちに別れの挨拶を入れて教室を後にするんだけど、その前に真昼が真夜の耳元で何かを伝えていた。そして何を言ったのかは分からないけど、真夜の顔が赤くなったのが見えた。
(真昼? 何を伝えたんだ?)
それが気になったので、遅れて来た真昼に尋ねてみることにした。
「真昼、さっき真夜に何を伝えたんだ?」
「ん? ちょっとした事よ」
「ちょっとした事?」
「そうよ」
どうやら内容については教える気がないらしい。今日から恋人になるというのに……。なんだかモヤモヤするな。だけど、気にしていても仕方ないので、俺は早速お昼をどうするか聞いてみることにした。
「今日はこの後、俺たち2人っきりだし、いつもと違う所で食べないか?」
「と言うと?」
「実はさ、最近見つけた定食屋があるんだ。そこの海鮮丼が美味くてさ、真昼もどうかなって」
「へぇ、そんな定食屋さんがあったのね! ふふふ、良いわよ。じゃあそこにしましょうか」
「本当か!? やったぜ」
学校を出る前にお昼を決めた俺たちは揃って学校を出て一緒に定食屋に向かうことになった。そういえば、こうして真昼と一緒に帰るのも何だか久しぶりだ。最近は朝も一緒に登校出来てなかったし、放課後も真夜がいたり、山口がいたりと2人っきりになる時間がなかったんだよな。
「そういや、こうして2人でいるのも久しぶりだよな」
「そうね。最近はシンヤやみーちゃんがいたものね」
「なぁそろそろ朝とかも一緒に登校しないか? テストも終わったしよぉ」
「どうしようかしら。朝、みーちゃんたちとお話するの結構楽しいのよね」
「いやいや、でもよぉ」
今日から恋人なんだから、やっぱり一緒に登校するのがいいと思うんだ。だからそれを真昼に伝えようとしたんだけど──。
「あ、健斗、信号変わっちゃうわよ。早く渡りましょ!」
「え? あ、待ってくれよ真昼」
伝える前に真昼が信号を渡り始めてしまい、言うタイミングを逃してしまった。
(まぁ伝えるのは何時でも出来るからいいか)
そう楽観的に考え、ひとまずはこれからの時間を真昼と楽しむ事にした。
***
「うわぁ、すっごい綺麗ね!」
「へぇ、こんな感じなのかぁ」
すっかり辺りが暗くなり、俺たちは今、丸の内のイルミネーションを見にやって来た。なんでもメインストリートを中心に、かなりの距離でイルミネーションが展開されてるらしい。確かにそこら中に電球がついていて眩しいし、綺麗だと思う。
それにしても今日は楽しかった。真昼と昼飯を一緒に食べたり、ゲーセンに行ったり、たまにはと思って、甘いものを食べたりした。久しぶりに真昼と一緒の時間を過ごしたと思えたよ。それに──。
(なんだか、イルミネーションに照らされてる真昼がめっちゃ可愛く見える!)
普段と変わらない制服だと言うのに、周りの環境だけでこうも変わるのかと思った。
「どうしたのよ、健斗。ぼーとしちゃって」
「え? いや、何でもないさ。ただ、真昼が普段よりも可愛いなぁってな」
「そ、そう? それは、その……、ありがとう」
真昼は俺の言葉で照れたのか、顔を赤くしてくれた。それだけでも真昼は俺の事が好きなんだと実感する。
それからも俺たちは色々な所を回り、イルミネーションを堪能した。
(イルミネーションってただ光ってる所を見て回るだけなんだよなぁ……)
流石にただ眺めるだけなので、飽きてくる。真昼はそんな事はない感じだけど、男はこういうの飽きやすいんだよなと考えていると、目の前にベンチがある事に気が付いた。
(時間もいいし、そろそろ頃合いだな)
なので、真昼にクリスマスプレゼントと告白をそろそろしようと考えた。
「真昼、一旦そこのベンチで休憩しないか?」
「そうね。確かに少し歩き疲れたわね……」
それを聞いて、ヨシ! と心の中でガッツポーズをし、俺たちはベンチに座った。
「それにしても、今日は楽しかったなぁ」
「ふふふ、そうね。久々に健斗と遊べて楽しかったわ」
「お、俺も真昼と久々に一緒に過ごせて、楽しかったよ。…………でだ、その、コレ!」
俺は緊張しながらも真昼にバッグから取り出したプレゼントを渡した。
「ありがとう、健斗。でも、今年は2人で買いに行かなかったけど、良かったの?」
「今回は1人で選びたかったからな! それよりも開けて見てくれ」
そう真昼に催促し、『分かったわ』と真昼は俺のプレゼントを開ける。
「綺麗。……ネックレスね」
「そうなんだよ!」
俺が贈ったのはシルバーのホースシューのネックレスだ。聞くに、幸せを運んで来るとかで、これからの俺たちの関係として相応しいと思ったからだ。
「本当は指輪がよかったんだけど、予算の関係でな……」
「そんなの関係ないわ。とっても嬉しい。ふふふ、健斗にしてはセンスが良いわね!」
「でだ、真昼!」
俺はそこで話を打ち切り、告白する事にした。プレゼントを贈り喜んでくれた。周りはイルミネーションで照らされてる。ムードとしては最高だ。
真昼も俺の雰囲気が変わった事を感じたのか、顔が少し赤い。
「な、何かしら、健斗……」
「この前の、延期して貰ってた事を今、言わせてくれ……」
ヤバい、めっちゃ緊張する。けどもう止まらない。
「え? あ、ま、待って健斗。あのね、私……」
真昼が何か言おうとしてるけど、俺には関係無かった。自分の気持ちを伝えたい。それだけが今の俺を支配する。
「俺はさ、ずっと真昼の事が──「健斗!」」
「なっ!?」
俺が最後の言葉を伝えようとした時に真昼から叫ばれてしまい、中断してしまった。
(え? な、なんで、止めるんだよ真昼……)
意味が分からなかった。そしてそんな俺に真昼は口を開いた。
「私、まだ健斗に何も贈ってないわ。その状態で言われても、困るのよ」
「え? あ、そ、そう、だったな」
そう告げた真昼からプレゼントを手渡されて中身を確認した。正直、まだ頭は混乱している。
「リストバンド……」
「え、ええ。健斗はサッカーしてるから、似合うかなって。それに、今持ってるのも古いでしょ?」
確かに真昼の言う通り、今使ってる奴はもう古くて捨てようと思っていた。だから真昼からプレゼントされて物凄く嬉しい。
「ありがとう、真昼! 真昼からこんないい奴貰えるなんて思わなかったぜ!」
「私だって、ちゃんと考えてるのよ」
だが、嬉しいのは本当だ。だけど、これでもう大丈夫だよな。恥ずかしいが、もう一度真昼に告白しようと思ったのだが──。
「あのね、健斗。その、もう少しだけ待ってもらえないかしら……」
「…………は?」
(健斗に酷い事を言ってるのは理解してる。でも……)
今日は健斗と色々な所に行った。始めて行った定食屋さんの海鮮丼は健斗が言うようにとても美味しかった。ゲーセンでは後ろから健斗がプレイしてる所を眺めては、彼のはしゃぎように笑った。健斗から甘いものを食べようと誘われた時は驚いたけど、それが嬉しかった。
イルミネーションを一緒に見て回ることが出来てとても楽しかったし、プレゼントのネックレスもとても綺麗で嬉しかった。健斗が私の為にしてくれてるんだって実感する。
でも、心の底から楽しかったかと言われたら、楽しめなかった気がする。多分その根幹には健斗との間に起きたあの一件と、シンヤの存在があったからだ。
「な、なんでなんだ? 真昼」
だから、健斗がこうなるのも分かる。だって、……私の時もそうだったから。
「健斗との約束は覚えてるわ。だからこうして伝えてくれようとしてるのも嬉しい。けど、今の私にはその事について、上手く返事が出来ないわ」
「な、なんでなんだ?」
「私の中にある健斗に対する想いが分からなくなって来たの……」
「想い……」
「うん」
12月始めまでは健斗の事が本当に好きだった。だけど、今はもうそれが正しかったのかが分からない。きっとシンヤがそれに気付かせてくれたんだ。
「だからもう少しだけ時間をくれないかしら。今度は私から健斗にお願いしたいの」
「……時間ってどれくらいなんだ?」
「分からないわ。でも、ちゃんと自分の中の想いを整理して、答えを出したいの……」
私は今の想いを健斗にしっかりと伝えた。健斗はそれを聞いて、辛そうな表情を浮かべているが、直ぐに元の表情に戻り、口を開いた。
「……分かった。なら、俺は待つさ! それまではまたお互いに幼馴染のままだな!」
「本当にごめんなさい。私の我儘で」
「因みにさ、それって俺以外にも気になる人が出来たとかじゃ、ないよな?」
そう健斗が尋ねるので心臓がドクンと驚いた。それは正しいんだけど、悟られないよう何とかポーカーフェイスを装い、健斗に嘘を付くことにした。
「そうじゃないわ」
「そうか。なら、いいさ。それじゃ、そろそろ帰るか」
健斗は深く追及する事はせず、帰ろうと言うのでそれに同意し、私たちはイルミネーションを後にする。
(ごめんね、健斗。でも……)
気になる相手であるシンヤに迷惑はまだかけたくなかった。きっと健斗が知ったら何かすると思うから。だから、健斗が追及しなかった事に感謝をしつつ、私たちはそのまま家に帰る事にした。
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