俺は朝から真昼の家へ行く
「ん? ……こんな時間から誰だ?」
時間はまだ朝の6時。朝飯の準備をしていたのだが、スマホからLIMEのメッセージが来て通知音が鳴った。この時間帯に来るのは滅多にないので、誰からだろと思い、送信者を確認したら優花ちゃんの名前がそこには表示されていた。
「優花ちゃん? なんでこんな時間に……」
俺が優花ちゃんに出した問題の解答確認は今日の放課後だ。それの確認にしても、こんな時間に来る事はないだろう。とは言え、考えても仕方ないので、一旦朝飯の準備を中断して、優花ちゃんのメッセージを確認することにした。
:おはようございます、先輩
:ごめんなさい、こんな時間帯に
:今時間は大丈夫ですか?
:おはよう、優花ちゃん。 あぁ問題ないよ
:ありがとうございます
:直ぐに電話かけます
優花ちゃんからそうメッセージが来ると、直ぐに着信がかかってきたので、それに出た。
『もしもし? どうしたんだ、優花ちゃん』
『先輩、お願いします。お姉ちゃんを助けてくれませんか?』
『…………は?』
突然、優花ちゃんからそんなことを言われて、一瞬頭が真っ白になった。
(助けて? 真昼を? 何があったんだ? 誘拐? 事故? なんだ?)
そんな言葉がずっと頭の中でぐるぐるする。だけど、直ぐに優花ちゃんが詳細を話してくれて、そういうのは杞憂だったと知れた。
『ごめんなさい。説明が足りなさ過ぎました。実はお姉ちゃん、昨日の夜から熱を出してしまいまして……』
『あぁ、熱か……。よかったぁ、真昼の身に何かあったのかと思ったぞ。あぁいや、熱は熱で大変なんだけど……』
『いえ、自分の説明が悪かっただけなので、気にしないでください』
『それで、どうしてそれが助けてに繋がるんだ? 春香さんや哲也さんが居ると思うんだけど……』
『うちの両親って共働きなんです。それで、お父さんは今日、取引先との大事な話があって休む事が出来なくて……』
『お母さんの方も、運悪く職場でインフルエンザが流行していて人手が足りず、どうしても仕事を休むことができないんです』
『……だから、私が休むと言ったんですけど、お姉ちゃんは『絶対にダメ!』と言って、聞いてくれなくて……』
真昼は優しいからな。自分の所為で休むのが許せないんだろう。それに優花ちゃんは受験生でもあって、今は俺たちの高校に行くために死ぬ気で勉強している。だから1日だって無駄にだってさせたくないと思っているんだろうな。
『優花ちゃんの言いたい事は理解できた。春香さんらには?』
『私の方から絶対に説得します』
『分かった。これから直ぐに準備するから、8時前にはそっちに向かうようにする。春香さんはその時間、まだいるかな?』
『お母さんは8時には家を出ちゃうので、その前に来てもらえると助かります』
『分かった。7時半までに着くようにする』
『ごめんなさい、先輩。先輩だって来週にはテストがあるのに……』
『それこそ気にするな。多少点数を落とした程度で、そんなに困ることでもないしな。……でも、高橋には言わなくていいのか? 俺に連絡したって言うことは高橋には連絡してないんだろ?』
今はまだ寝てるだろうけど、高橋の家族の人なら起きてるはずだ。
『瞳さん──けんにいさんのお母さんには伝えましたが、看病してくれる人はいると伝えてます。……私は瞳さんや、けんにいさんじゃなくて、葉桜先輩にお姉ちゃんの看病をして欲しいんです!』
そう力強く優花ちゃんは俺に看病してくれと頼んでくる。
そう頼られたら断ることなんてできないさ。そもそも俺は真昼のためになるなら断るなんて絶対にしないしな。
『ありがとう。直ぐに準備してそっちに向かう』
『ありがとうございます! 待ってますね』
そう話を区切り、俺たちは電話を切った。
「さて、準備するか……」
物置用のクローゼットから氷枕を引っ張り出し、それ以外にも看病に必要な物を準備していき、家を出ることにした。
(おっと、忘れるところだった……)
家を出る直前、ミミに連絡するのを忘れていたので、LIMEでメッセージを送った。ミミの事だ、この時間は既に起きてるだろう。
:悪いミミ、真昼が熱を出したらしい
:え、それほんと!?
案の定、ミミは起きていたが、即レスか……。
:あぁ、さっき優花ちゃんから連絡があった
:そっかぁ、じゃあ昨日まひるの様子がおかしかったのって
:熱の前兆だったかもな
たまに熱の前兆があると、テンションが高くなるときってあるよな。俺にも覚えがある。
そして、突然スマホから電話が鳴る。ミミからだった。
『もしもし、真夜君! 今日は放課後直ぐにまひるのお家にお見舞いに行くでいいんだよね?』
『それなんだが、真昼の家族は皆、用事があって真昼が1人らしいんだ』
『そうなの!?』
『だから優花ちゃんから俺に看病してくれないかって連絡が来てな』
『じゃあ、看病しないとじゃん!』
『だから今日はサボると、雄太に言っておいてくれないか?』
『分かった! 私の方から柊君に伝えておく』
『すまん。高橋には適当に言っておいてくれ』
『あははは、任せておいてよ!』
『んじゃ、放課後のお見舞い、待ってるわ』
『うん!』
そう伝え俺たちは電話を切った。こういう時、ミミは本当に頼りになる。いや、ずっと前から頼りになってたか……。
やることも済ませ、今度こそ家を出て、真昼の家に小走りながら向かう事にした。
***
時間は7時半前、途中コンビニで必要なものを追加で購入してから、真昼の家のインターフォンを押す。すると、直ぐに優花ちゃんがドアを開けて、出てくる。
「あ、先輩! おはようございます」
「あぁ、おはよう。真昼は?」
「さっきお薬を飲んで寝ました。それと、熱は39℃もありまして……」
「かなり高熱だな。インフルの可能性は?」
「まだ、分かりません……」
「これ以上、熱が上がるようなら、起きた後に病院へ連れていくしかないな。春香さんは?」
「リビングに居ます」
それを聞き、俺は真昼の家にお邪魔し、春香さんが待つリビングに向かった。
「おはようございます、春香さん」
「あ、葉桜君……。優花から聞きました。ごめんなさい、娘がわがままを……」
「いえ、気にしないでください。優花ちゃんも真昼のためと思っての行動ですから」
「真昼……」
そう言えば、春香さんの前で真昼呼びは初めてだったな。しくじったか? と思っていたが、『ふふふ、順調そうね』とほほ笑んでいたので、そっと息を吐いた。
「あ、それと、色々持ってきました。ゼリーなどもあるので、冷蔵庫に入れてもいいでしょうか」
「あら、そこまで。……本当にありがとうね、葉桜君」
「気にしないでください。春香さんもこの後お仕事ですし、真昼の事は俺に任せてください」
「本当に助かります」
「もしこれ以上、熱が上がるようなら病院に連れていく必要があるので、保険証と鍵の場所だけ教えてもらってもいいですか?」
「そうね、保険証と鍵はここに置いておくわね」
春香さんは自身の財布から真昼の保険証と家の鍵をダイニングテーブルの上に置く。流石に不用心じゃないかと思ったが、それだけ信用してくれていると言うことか。
「ありがとうございます。それと、放課後になったら友人が真昼のお見舞いに来ると思いますので、玄関のカギは開けたままにして頂けると助かります」
そう伝えると、春香さんは頷いてくれた。そして、食器や調理器具の場所を教えてもらっていると、既に8時近くになっており、優花ちゃんから『お母さん、そろそろ』と伝えてくれた。
「それじゃあ、葉桜君。娘の事、よろしくお願いします」
「お姉ちゃんの事、お願いします。先輩!」
「任せてください。2人とも真昼の事が心配だと思うけど、今日1日頑張ってください」
そう伝え、2人を見送った。
「さて……」
それから水筒などの準備をし、真昼の部屋の前に来た。
(そういえば、真昼の部屋に入るのはこれが初めてだな……)
正直、かなり緊張する。春香さんから許可を貰ってるとは言え、相手は女の子。それも好きな子の部屋に入るんだ。緊張しない方がおかしい。一度深く深呼吸をし、ドアとトントンとノックする。
(反応なし、寝てるのは本当のようだな……)
「真昼、入るぞ?」
何度かノックしても返事が来ないので、入ることを伝え、そっとドアノブを回し、中を覗きつつ、部屋に入る。
(……ここが真昼の部屋、か)
部屋に入ると俺の部屋みたく、大きな本棚が置かれており、そこには色んな小説や漫画が入っていた。そして、流石は女の子だなと思うほど、可愛らしい内装で、ベッドには俺がプレゼントしたぬいぐるみが仲良く2つ並んでいる。そして、真昼は布団の中ですやすやと寝ているようだ。
(寝顔、可愛いな……)
起こさないようにそっと真昼の寝顔を覗く。熱の所為で顔が赤く、辛そうだが、そこには可愛い寝顔姿の真昼がいた。流石に声をかける訳にもいかないので、ひとまず起こさないよう、冷えピタを真昼のおでこに張り付けることにした。
その後は真昼を起こさないよう、ベッドに背を向けるように座り、持ってきた小説を読みつつ、時折顔の汗を拭いたりして、看病しながら真昼が起きるのを待つことにした。
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