看病と自覚
何かがおかしい真昼さん
なんだか、真昼の調子がここ最近変だ。何というか遠慮がなくなったと言うか、俺に対して頼る? いや、違うな。甘えに似た態度を取るようになった。
先々週の金曜日、真昼は高橋に告白しようとして、失敗した。それで俺が慰めた所まではいい。その後、真昼の超絶可愛い笑顔を魅せられて、俺の心が完全に鷲掴みにされたのもいい。いつかそうなったらいいなと思ってた訳だしな。
そして先週の初め、真昼は高橋にあの時の怒りをまさかのビンタで表現するという大胆な行動を取った。多分そこからだ。真昼が俺に対してそんな態度を取るようになったのは……。
「一体、真昼の心情に何があったのか……」
転機としては休日の間に何かがあったと考えるのが普通だ。だとすると、春香さん辺りが真昼に何か助言でもしたのだろうか……。それで真昼は自分を変えていこうと考えているのかもしれない。
「まぁ、考えても仕方ないか」
一旦、真昼の変化については棚上げして、朝の教室に入ると、既にミミが自分の席に座っている。そして俺が来た事に気が付くと、ミミは俺の方に近寄って来る。
「おはよう、真夜君!」
「ああ。おはよう、ミミ。ここ最近は俺よりも早いな」
「そうかな? 何だか、最近は早く来たくなったんだよね」
「ほう? 来週から中間だと言うのに、勉強もせず、ただボケーとするとは、随分と余裕そうだな」
そう告げてみると、ミミは目を泳がせながら、『べ、勉強は、まひるや真夜君が教えてくれるから』と既に自分で勉強をする事を放棄していた。
「はぁ、これは真昼から1度、キツく言ってもらうか」
「ねぇ、なんでそんな酷いことが言えるの!? まひるの勉強モードって怖いんだよ?」
「すまん、俺には分からない気持ちだ」
「うわぁぁん! 勉強出来るアピールは酷いよぉぉ」
「あはははは」
ミミとだけ話すこの時間は、既に俺にとって1つの日常としての楽しみになっていた。そしてこの後に雄太が登校し、最後に真昼と高橋が一緒に登校する。それがこれまでの日常の風景だったのだが──。
「おはよー、みーちゃん!」
「おはよう、まひるぅ! ……あれ? なんでまひるがこの時間に来てるの?」
「それは後で話すね。でも、その前に。……おはよう、シンヤ!」
「あぁ。おはよう、真昼。ミミも言っていたが、なんでこの時間に? 高橋はどうした」
俺もミミ同様、真昼がこの時間帯に来た事に驚いた。先週は高橋にビンタするために普段よりも早く登校していたが、今日はそれよりも早い。
まるで俺たちが来るであろう時間に合わせたかのように思える。そして、どうやら俺の考えは正しかったようで、真昼は今朝の事を話した。
「今日から健斗とは一緒に登校しないことにしたのよ。ほら、この間、色々あったじゃない? だから少し整理したくてね」
「あー、なるほどね、それは分かるかも」
「納得だな。1度、真昼の中の感情を整理するのは大切だな」
つまるところ、あの1件により、真昼の高橋への感情に変化が発生したということだ。それはマジで喜ばしい限りだ。
(クリスマスも近い。一気に気持ちを傾けさせるべきか?)
だが、流石にそれは早すぎると思い、却下した。
少なくとも真昼の気持ちに整理が付くまでは、あまり変化を付けない方が良いと判断し、それまでは今まで通りの接し方で行こうと決めた。
……ヘタレじゃないからな?
「でもね、それ以外にも理由はあるのよ」
俺が思考の海に沈んでいると、ふと真昼はそんな事を呟いた。
何だろうと思い、ミミと一緒に真昼の言葉を待つことにしたのだが、流石の俺もこれにはやられた。
「私ね、前から朝、2人だけで話してるのが羨ましかったのよね。私もシンヤと話したかったから! だからこれからは私も混ざっていいかしら?」
「……ほへぇ?」
ミミがそんな面白い口調で真昼の言葉に反応する。
いや、当事者である俺も、思わずそんな声が出そうになったが、無理やり抑えつけただけに過ぎないだけなのだが……。
「真昼がそんな事を言うなんて珍しいな……」
「珍しいは酷いわよ、シンヤ。だって、いつもいつも楽しそうに朝、2人だけで話してるのよ? そんなの嫉妬するわ」
「…………へ?」
(いやほんと、今日はどうしたんだ、真昼さん!?)
嫉妬だなんて、そんなの今までの真昼なら絶対に口にしない言葉だぞ!?
だがそれ以上に驚く事があった。
(つーか、ミミに嫉妬って、……え、マジで!?)
この状況に、頭が若干混乱していると、同様に混乱しているミミがクイクイッと袖を引っ張るので、後ろに振り返る。するとミミが小声で話し始めた。
「ねぇねぇ、真夜君! まひるがおかしいよぉ」
「おおおおお落ち着け、ミミ。確かになんかおかしいけど、誰がどう見ても真昼だ。きっと高橋の一件で、何かが真昼の中で変化したんだ。きっとそうだ」
「そ、そうだよね……。まひるはまひるだもんね」
「それに、これは俺にとっても良いことだ。高橋から意識が変わりつつあるという証明にもなる」
「……そうだね、うん。私も、そう……、思うよ。………………バカ」
(しまったぁぁ! これはミミにとっての禁句だった!)
ミミはミミで、どんどん俺に対する想いに蓋をすることが出来なくなってきている。俺もここ最近の真昼のよくわからないテンションの前に混乱していたようだ。
「2人してどうしたの?」
そんな俺たちを不思議がったのか真昼が俺たちに尋ねてきた。
「え、あぁ、いや。ミミと3人で話すのもいいよなって話をしてたんだ。な!」
「う、うん。そうだよ、まひる! これからは3人でいっぱい話そうよ」
「ふふふ、ありがとね、2人とも!」
「「あはははは……」」
まぁだが、せっかくこうして真昼が俺たちのために早く登校してくれてるんだ。話さないだなんてもったいない。なので、他のメンバーが来るまで俺たち3人で楽しく談笑を始めた。
ちなみに、もちろん勉強をしながらだ。ミミに拒否権がなかったのは言うまでもない。
***
「なぁ、真夜……」
「なんだ、高橋……」
「真昼、なんかおかしくないか?」
「高橋にしては、妙に冴えてるね。確かに今日の藤原さんは何か様子が少しおかしい気がするよ」
「雄太もそう思うか? 俺は朝から思ってたよ。それよりも高橋、妙に冴えてるな」
「なぁお前ら、俺の事バカにしてないか?」
「「そうだが?」」
何、当たり前の事を。
「何でだ!?」
「まぁ、それは置いといて、確かに今日は何だかおかしい。気持ちが昂っている? いや、ブレーキが上手く効かなくて、空回りしてるように思える」
「置くんじゃねぇ!」
「あ、それ分かるかも。止めどころを失って、動き続けてるみたいな感じがするよね。高橋は何か知らないのかい?」
「知ってたら聞かねぇよ。今日は真昼から、これからは別々に登校しようと言われるしで訳が分からん」
それはお前の自業自得だ。
そして真昼は今日、仲良しグループの人らと飯を食べている。時折真昼に視線を向けているのだが、やっぱり何かが違う。普段よりも元気だし、よく笑う。それは別にいい事なんだけど、なんというか心配だ。
そして、雄太たちにバレないよう、ミミたちの会話に耳を澄ましていると、こんな会話が聞こえてきた。
「そういえば、真昼ちゃん、今日はなんだか顔が赤いですけど、もしかして風邪とかですか?」
「そう? 咳も出てないし、私は大丈夫だけど……」
「念のため、今日は早めに帰った方がいいかもですね、真昼さん」
「そうだねぇ、ここ最近寒いし、体調には気を付けないとだね、まひる!」
「ふふふ、分かったわ。そこまで言うなら今日は学校終わったら直ぐに帰るわ。心配してくれてありがとね」
と、そんな会話が俺の耳に入って来た。確かに今思えば朝から少し顔が赤かったかもと思い返してみて、気が付いた。
(まさかな……)
それ以降も真昼はなんだかテンションが高いまま、その日を終えていった。
────────────────────────
気づいた方もいるかと思いますが、本章よりタイトルに付けていた青年・少女等の記載は、真昼と言った名前へと変更となります。
今更ですが、1章以降のタイトルの記載方式はこんな感じです
まぁ全部がこれに当て嵌まる訳ではないですが、目安程度になれば幸いです
青年 → 真夜
少女 → 真昼
幼馴染 → 健斗
女の子 → 美美子
妹 → 優花
それでは、また明日の投稿をお楽しみに。
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