女の子はコスプレ衣装を着る(真夜&美美子視点)
*** 真夜視点 ***
みんなと別れ、俺たち3人は家庭科部にある試着室へ向かった。
「ここだな」
「葉桜君、確か許可貰ってるんだよね?」
「あぁ。他の服には触らない、荒らさないという条件のもと、許可を貰っている」
ここには演劇部で使用する服などもあるので、厳重に管理されているのだが、無理を言って使わせてもらう許可を貰った。まぁその代償として、家庭科部の部長には個人的に執事服での接待を行う羽目になったがな。
「おー、ここが試着室かぁ。確かに色んな服があるね」
「雫、頼むから触るなよ?」
「流石に私だって、そんなことはしないよー」
「あははは。葉桜君、ほんと私たちとは別人みたいな対応するね」
「遠慮がないだけだ」
「むぅ、私たちにも敬意を払えー」
「はいはい……」
さて、バカ話もこれくらいにして、山口の衣装合わせをしないとな。そう考え、俺は雫にキャリーケースの中身を取り出すように催促した。
「雫、時間は有限なんだ。そろそろ始めよう」
「ふふふ、そうだね、真夜。じゃあ美美子ちゃん、今からあなた用の衣装を見せるね!」
「は、はい! 私、こういうの初めてだから物凄く楽しみなんです!」
「期待しておけ。じゃあ俺は試着室の外で待ってるから、準備が終わったら教えてくれ」
「真夜、覗いちゃだめだからね?」
雫がいたずらっ子風に俺に爆弾を投下する。山口はそれを聞いて顔を真っ赤にするので、そんなことはしないと伝えることにした。
「バカ言うな! そんなことするかよ」
「……は、葉桜君、本当に覗いちゃダメだよ?」
「覗かないから安心してくれ……」
山口、恥ずかしいならわざわざ言わないでくれ……。埒が明かないので、俺はさっさと試着室か出て、2人の準備が終わるのを待つことにした。
大体40分ほど経ち、雫から『終わったよー』と聞こえてきたので、試着室に入ると──
「ど、どうかな? ……葉桜君?」
「とてもお綺麗です。お嬢様」
物語から出てきたような、純白のドレスに身に纏った1人のお嬢様がそこにはいた。なので、ここは執事としてお嬢様を褒める選択肢しかなかった。
*** 美美子視点 ***
「────」
今私は目の前にある衣装に目を奪われていた。
純白のドレスに可愛い装飾がいくつも付いており、花嫁やお姫様というよりも、まさに外を出歩くときに着るような雰囲気を感じる。これが当時中学生の雫ちゃんが作ったって言うの?
「ふっふっふー。見とれてますなぁ」
「う、うん。だって、こんな綺麗な衣装初めて見たよ。本当に雫ちゃんが作ったの?」
「そうだよ! まぁ正確にはお母さんと一緒に作ったが正しいね。お母さん、ファッション系の仕事をしていて、趣味で服も作るから手伝ってもらったんだ」
だとしても、雫ちゃんが作ったということには違いない。本当にこんな服を私が着ていいのかと思ってしまう。そんな考えが筒抜けなのか、雫ちゃんは『気にしないでね』と言ってくれた。
「作ったはいいんだけど、私には色合いとかが合わなくてね。だから美美子ちゃんが着てくれる方が助かるんだ! この子も新しい主に着てもらえたら嬉しいだろうしね」
「ふふふ、子供っていい表現だね」
「そりゃねぇ、私が作った衣装ですから。あと、カチューシャと靴ね」
「うわぁ、どれも可愛いー!」
「でしょでしょ! いやぁこの素晴らしさが分かってくれて嬉しいよ」
衣装に合わせて、カチューシャも靴も白で合わせられている。特に靴はヒールになっており、よりこれを着た時の印象が映えそうだ。
「ほら、早速着てみようよ」
「う、うん! お願いします!」
それから40分くらい経って、調整もしつつ、衣装を着たのだけど────。
「……これが、私?」
「おぉぉぉ、私の目に狂いはなかったね! サイズも丁度いいし、美美子ちゃん、とっても似合ってるよ!」
試着室にある鏡で自分を見たんだけど、そこには本当にお嬢様がいるんじゃないかと錯覚するくらいの別人になった自分が写っていた。
(ど、どうしよう。この姿をこの後、葉桜君に見られるんだよね!?)
そう考えると一気に顔が熱くなり、ドキドキしてきた。だってこんな姿、私でさえ見たことないし、男の子、それも葉桜君に見せるだなんて……。
「ふふふ、大丈夫だよ、美美子ちゃん。真夜ならきっと褒めてくれるから」
『それに』と、雫ちゃんは私の耳元で爆弾を囁くので、余計に顔が赤くなってしまった。
「真夜に好きになってもらいたいなら、これくらいしないとね!」
「ふぇ!? え、あ、あう、あの、そ、その……」
「あははは。物凄く照れてるー」
「だ、だって、いきなりそんな……。私もまだ自分の気持ちも分かってないのに……」
「真夜は罪だねー。真昼ちゃん以外にもこんな可愛い娘がいるんだから」
「っーーーー!」
もう心臓が煩くってどうにかなりそうだった。心の準備すらできていないのに、雫ちゃんは雫ちゃんで『終わったよー』といきなり言ってくるので、私はもう色々と限界だった。
そして、そんな私の事など露知らず、葉桜君は試着室に入って来てしまい、もう私はどうにでもなれと思い、『ど、どうかな? ……葉桜君?』と尋ねるしかなった。
(何を言ってくるんだろう? ど、どうしよ。これで似合ってないなんて言われたら……)
そんな心配を余所に、葉桜君は私が想像していた答えから斜め上の回答を持ってして私の心を壊してきた。
──とてもお綺麗です。お嬢様
そんなことを言われたら、もうダメだよ。自分の中で葉桜君に対する気持ちがどんどん溢れてくる。多分まだ好きという感情まで行ってないと思いたいけど、それもきっと時間の問題だ。だって今私、生まれてきた中で一番、この瞬間が幸せだって思えてしまったんだから。
*** 真夜視点 ***
「流石、雫だな。完璧だ」
「どうよー」
「あぁ、凄い凄い」
雫が撫でろと催促するので、撫でてやることにした。裕也が見たら怒りそうだ。
「山口も、衣装ばっちりだな。純白のドレス、山口のイメージにもぴったりだ」
「────」
「山口?」
山口が顔を真っ赤にした状態で、フリーズしている。これはやっちまったか?と思いつつも、山口の気持ちを聞いていない時点では判断することは出来ない。なので、あえて気づかない振りをすることにした。
「おーい、大丈夫か?」
「え、あ、う、うん。私は大丈夫だよ」
「そうか」
雫に視線を向けると、ニンマリした顔になっているので、多分雫は察しているんだなと予測することが出来た。ひとまず、視線で『何もするなよ?』と伝えると、グッとサムズアップをしたので、多分通じたと信じよう。
「これで、明日のコスプレコンテストは優勝だな」
「……葉桜君は確か、今着てる執事服で行くのよね?」
「そうだよ。ちなみに明日は俺が手を引いて誘導するから、それも今のうちに練習するか」
「え、練習?」
「そりゃな。練習しないと、よりお嬢様には見えないだろ?」
「真夜は凝り性だからねぇ。きっと演出も考えてるよ?」
「当たり前だろ? 明日は──」
そこで明日の演出について話したのだが、そこまでやるのかと言われてしまった。まぁ優勝するだけなら今でも十分なんだけど、やっぱり文化祭と言う舞台で楽しみたいんだ。なので、俺はやれることはなんだってするんだ。それに、いいネタにもなるしな。
そこから更に30分ほど、雫の監修も入れつつ、明日に向けた練習も終えた所で、俺のスマホから着信が鳴っていることに気が付いたので、着信主を確認した。
「……裕也?」
「なになに、どうしたの?」
「裕也からの電話だ。なにかあったのか?」
雫がいるのに、俺の方に電話すると言うことは何かあったのかと思い、俺は電話に出ることにした。
『どうした、裕也。なんで雫にかけないんだ?』
『悪い、それどころじゃないんだ』
……なんだ? 裕也の声色から少し焦りを感じる。
『いったい、どうした?』
裕也に尋ねてみると、思いもしない回答がやって来た。
『お前のクラスで不味いことが起きた、直に来てくれ』
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