青年は親友と学友を紹介する

 今日は文化祭の2日目。今日から一般の人らも来るので、昨日以上に忙しくなるだろう。そして、昨日の占いの一件からか、若干藤原さんの俺に対する態度がおかしい。何というかそわそわしている。心配した山口が俺に尋ねてきた。


「葉桜君、まひると何かあったの?」

「多分、一緒に行った占いだろうな」

「あぁ、あそこの占いよく当たるらしいからねー。何言われたの?」

「内容と言うより、その前だな。俺たちの誕生日について伝えたんだが──」


 山口に俺たちの誕生日が一緒であることを伝えると、『ほんとに!?』と驚かれてしまった。まぁ無理もないか。


「あぁ、流石に俺たちも驚いたよ」

「確かに、それならああいう態度になるのも分かるかも。ふふふ、なんというか運命的だね!」

「やめてくれ。多分藤原さんもそれを意識してるんだから……」

「あははは、確かに。じゃあまひるからは私の方からフォローしておくね」

「頼む」


 山口が藤原さんのフォローをしてくれるとの事なので、何とかなることを祈ろうと決め、今はこれから来る客らの対応について気合を入れることにした。



***



「お客様、当店ではナンパ及び、それに該当する行為は禁止となっております。ご理解いただけない場合は、先生もしくは警察を呼ぶことになりますので、ご遠慮ください」

「な、なんだよ。文化祭だろ? これくらい──「これ以上は少し痛い目に合いますが」」


 そう、強く脅してみれば向こうは流石にこれ以上は無理と判断したのか、逃げるように教室を後にしたので、ため息が出る。


 一般の人らが来ていることもあって、やはりと言うべきか、そういう目的で来る輩は多い。なので、こうして俺たちで目を光らせてる訳だしな。


「葉桜君、助かったわ」

「村田さんも無事でよかった。少し強引な客だったからな」

「今の客についてはもう横溝が先生に報告しに行ってたよ。だからもう大丈夫だと思う」

「そうか、教えてくれてありがとな、雄太」


 俺たちのクラスでは"ナンパ死すべし"という危なっかしいスローガンを掲げている。女子のレベルが他よりも高いんだからまぁ無理もない。


 ちなみに午前中のローテに高橋と藤原さんはいない。今日の午後、俺と山口は明日に向けた衣装合わせがあるので、参加することが出来ないからだ。そのため、俺は接客をしつつ、雫たちが来るのを待っている。


「そういえば、真夜の親友たちが来るんだよね?」

「そうだぞ。2人ともいい奴らだから、期待しておけ」

「葉桜君の親友ってくらいだから、なんだか凄そうだね」

「俺をなんだと思ってるんだ……」


 そんな話を待機場で話していると、廊下がざわざわと騒ぎだすので、俺はあいつらが来たんだと確信した。


「どうやら来たようだ。少し見てくる」

「え、あのざわつきだけで分かるの!?」

「目立つからな」


 そして教室を出て、列の後ろを見て見れば案の定あいつらがいたので、彼らの番になったら俺が案内することを他のメンバーに伝え、20分後、あいつらの番になったので、俺が対応する。


「旦那様、奥様、おかえりなさいませ。既に料理の準備は出来ておりますので、ご案内いたします」

「「────」」


 こいつら限定対応だ。見事、裕也たちの目を点にすることに成功したので、心の中でガッツポーズをする。ちなみにそれを聞いた他の生徒やらは羨ましそうに俺を見ているが、笑顔を見せるだけにする。


 とりあえず、こいつらを席に案内し終わったので、サービス対応はここまでとし、いつもの口調に戻すことにした。


「ずいぶんと早かったな」

「いきなり口調戻さないでよ、真夜! さっきの奥様ってもう一回呼んでよぉ」

「真夜。何か企んでるとは思ってたけど、あれは流石に心臓に悪いよ」

「一度やりたかったんだ。でも、悪い気はしなかっただろ?」


 そうニヤリを言えば、裕也も雫も顔を赤くしながら頷く。まったく、バカップルの癖にこういうのは弱いんだから。


「それよりも、何にする? AセットとBセットがあるが、お前らにはBセットがいいだろうな」

「何々、かぼちゃのケーキかぁ。じゃあBセットだね!」

「そうだね、雫。じゃあ真夜Bセットで、飲み物は紅茶でお願い」

「あぁ、任せろ」


 注文を受けて俺は待機場へ戻り、注文を村田さんらに伝えると、皆して俺をマジマジと見ている。なんだ?と思っていると、山口が口を開いた。


「葉桜君ってあんな顔するんだね。物凄く柔らかい表情だったよ。まひるにもまだ見せてないよね?」

「あの表情を普段から見せていたらもっと人気が出てたでしょうに……」

「俺、そんなに柔らかい表情だったか?」


 そう尋ねてみると、皆一斉に頷く。自分と言うのは他人に言われない限り気づかないものだが、そうか……俺、そんな表情なのか。


「でも、彼らが真夜の親友かぁ。美男美女なのは言うまでもないけど、何というかあの幼馴染カップルが作る空気よりも甘い気が……」

「実際甘いぞ。あいつらのバカップル力は測りしえない。さっきブーストもかけたから余計に甘いな」


 チラッと除くと既にあの空間だけ、あまあま空間が出来上がっていた。


「あとで話すのが楽しみだよ」

「あぁ、楽しみにしておけ」



***



 あいつらの接客も終わり、午後のローテーションメンバーが来たので、早速雄太たちと共に、教室の外で待っている裕也らに会いに行くと、既に高橋と藤原さんが裕也らと話しているようだった。


「あ、葉桜君、お疲れ様! 雫ちゃんたちもう来てたんだね」

「葉桜、こいつらが?」

「そうだ。裕也と雫。俺の無二の親友たちだ」

「裕也、雫。こっちが俺の友人の柊雄太山口美美子やまぐちみみこだ」

「よろしく」

「よろしくね、雫ちゃん!」


 軽い自己紹介をすると、雫が山口の方を見て、ほうほうと頷いている。


「ほほぉ、写真では見てたけど、こっちも可愛いね、真夜!」

「お前が何目線なのかは知らないけど、まぁ可愛いのは認めるよ」

「へ!? な、なに急に?」

「ふふふ、みーちゃん照れてるね。葉桜君、雫ちゃんや月城君の前だと思ってることを今まで以上に口に出すから気を付けてね!」

「それ、どうしようもないじゃん!」


 藤原さんはそう言っているが、俺ってこいつらの前だとそんな素直になるのか? そんなことを考えているのを感じ取ったのか、裕也は俺に事実を突きつける。


「真夜は知らないと思うけど、昔からだよ」

「……マジで?」


 雫も頷くので、本当らしい。知らなかったぁ。


「あははは。真夜がこうなるなんて、新鮮だなぁ」

「確かに、葉桜のこんな顔中々見れないな。あははは」

「はぁ、お前ら後で覚えておけ」


 そう脅して見せると、2人とも苦笑いをし、それを見ている裕也らは『これが今の真夜かぁ』と笑っている。


「ま、これでようやくお前らにも今の友人を紹介することができたよ」

「うんうん。真夜も楽しそうで、私は嬉しいよ! ねぇ、裕也!」

「そうだね。ほんと楽しそうで何よりだ」

「お前らは俺の親か……」


 まったく、この親友たちは……。


 そして、藤原さんたちは俺たちのやり取りを見て、ニヤニヤしている。


「なんだ?」

「ふふふ。やっぱり葉桜君は雫ちゃんたちといるのが一番楽しそうだなって」

「えー、真昼ちゃん、真夜はこっちでも十分楽しそうにしてるよ! だってねぇ──」


「雫?」


 口を滑らそうとしてる奴にはキツイお仕置きが必要かなと思い、呼んでみると、『あははは』と苦笑いして裕也の後ろに隠れていった。まったく。


「はぁ、それよりもさっさと準備を始めよう」

「それも、そうだね! じゃあ、美美子ちゃんだっけ? 早速衣装合わせと行こうか」

「あ、……は、はい!」

「雫、頑張ってね」

「裕也は来ないのか?」

「せっかくなら、明日までの楽しみにしようかなって。それとこっちの柊君とも話したいしね」

「そうだね。俺も月城君と話したい気分だ」


 こいつらは馬が合うだろうとなんとなく感じていたが、どうやら本当に気が合うようだ。


「分かった。じゃあ藤原さん、高橋。俺たちは行くから、午後頑張ってな」

「えぇ、みーちゃんの衣装楽しみにするわ!」

「行ってらー」


 そこで俺たちは別れ、家庭科部の部室に向かって行った。

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