執事服(真夜、真昼&美美子視点)

*** 真昼&美美子視点 ***


「ねぇねぇ、まひる。葉桜君たちの執事服楽しみだねー」

「ふふふ、そうね、みーちゃん。楽しみだわ」


 私たちは現在、メイド服からいつもの制服に着替えなおした。あのメイド服、物凄く可愛くって、持って帰りたくなるくらいだった。これを用意した清水君には感謝しかないわ。


 なので、教室に戻ってきた私たちは、入れ替わりで着替えている男子たちを待っている最中で、私もそうだけど、みーちゃんもそわそわしながら待っているようだった。


 ……ここ最近、みーちゃんは葉桜君とよく話してるのを目撃している。何というか、コスプレコンテストへの参加を決めた辺りから、2人の仲は急接近してるようにも思える。



(もしかしてみーちゃん、葉桜君のことが……)



 そんなかもしれないを考えていると、どうしてか、少し胸がズキっとする。だから直接、みーちゃんに尋ねてみることにした。


「みーちゃんって葉桜君のこと、?」


 それを聞いたみーちゃんは物凄い速さで顔が赤くなり、『と、突然どうしたの!?』と聞き返してくる。



「うーん、なんというかここ最近、葉桜君とよくいるなぁと思ってね」

「そ、それは……、コンテストに一緒に出るんだから、よく話すに決まってるよ。それに私たちは友達だよ? 話すくらい普通だって」

「そうなんだけどね。何というか距離が近いと思う時が……」

「ゔ……」


 まひるが鋭いことを突いてくるのでドキっとした。


 自分の事は高橋君以外鈍感のくせに、他人の事になると鈍感じゃなくなるらしい。


 そんな新しいまひるを発見してしまったが、私もいじられるばかりではなく、反撃しなければと思い、執事服について尋ねてみることにする。


「そうかな? 私は普通だと思うけどなぁ。……それよりさ、まひる。葉桜君と高橋君って言ったら、どっちが執事服似合うと思う?」

「な、なんで急にその話になるのよ……」

「いいじゃん、いいじゃん。それで、まひる的にはどっちなの? 私は葉桜君だと思うけどなぁ」


 実際、この2人でどっちが似合っているかと聞かれたら、間違いなく葉桜君だと思う。なんだろう雰囲気的にも、葉桜君はそういうの物凄くイメージに合うんだよね。


 そうしてまひるの答えを待っていると、少し恥ずかしそうにどっちが似合っているかを口にする。


「え、えと……。は、葉桜君……かな」

「おー、やっぱりまひるもそう思うんだー」

「け、健斗もかっこいいとは思うんだけど、イメージ的に似合うのは葉桜君じゃないかなって……」

「あははは。まひるも正直者だなぁ」

「……もう! からかわないで!」


 その後もまひると楽しく話していると、ガラガラと教室のドアが開く音がした。どうやらついに、男子たちが戻って来たようだ。



「「「きゃぁぁぁあ!!!」」」



 女子たちの黄色い声と共に、柊君と高橋君らが他の男子と一緒に教室へ入って来るんだけど、葉桜君はまだ来ていないようだった。


 ちなみに、高橋君の執事服は、意外と様にはなっているんだけど、やっぱりそこまで似合わないと思った。


 そんな高橋君は、すぐさままひるに、自身の格好について尋ねてきた。


「ま、真昼、どうだ? 似合ってるか?」

「あははは、なんだろう似合ってるけど、似合ってない!」

「あ、山口さんもそう思う? どうしてか、高橋は執事服が合わないんだよね」


 そんなことをみーちゃんと柊君が言っているけど、私から見れば、健斗の執事姿はとても新鮮で、それでいて大人っぽくも見える。


 確かにみーちゃんたちが言うように、健斗には少し合わないかもしれないけど、私にはそんなの関係なかった。


「ふふふ、安心して健斗! 物凄くかっこよく見えるわよ!」

「そ、そうか? それは嬉しいな。あはははは」

「まひるは高橋君に甘いねぇ。あ、柊君はちゃんと似合ってるよ」

「ありがとう。山口さん」


(……あれ? そう言えば……)


 その後も健斗たちと話していると、いつもなら会話に参加してくるはずの葉桜君がいないことに、今さらながら気がつく。


 なので、健斗に尋ねてみることにした。


「ねぇねぇ、健斗」

「ん? どうした真昼」

「葉桜君は? まだ来ていないようだけど……」

「お、ようやく藤原さんが気が付いたね。……もうそろそろ来ると思うんだけど、驚かないでね」


 私たちは柊君の言う言葉の意味を理解しきれていなかった。


(驚かないでね? それって、それだけ凄い服ってことなのかしら……)


 そう考えていると、健斗も『あれはヤバいな』と同意していて、なんだかこの後に来る葉桜君を見るのが少し怖くなってくる。


(? 急に静かに……)


 そして、さっきまでざわついていた声が一斉に消えたので、どうしたのかと思ったら、『どうやら来たみたいだね』と、柊君が言うので私たちは教室のドアに方に視線を向けたのだけど──。


「「────」」



 よく漫画とかで、貴族のお嬢様に使える執事がいるけど、本当に漫画から現実に出てきたんじゃないかと思ってしまった。


 それ程までに葉桜君の執事姿は──



(ど、どうしよう。想像以上に葉桜君の執事姿が似合い過ぎてて……、え、な、なんでこっちに来るのよ)


(え、うそ、あれが、葉桜君!? ちょちょちょちょ、情報量がヤバい。え、うそ……、こっちに来るんだけど)


「どうかされましたか、お嬢様? お顔が少し赤いようですが……」


 そして、私たちの前に歩いてきた彼は片膝をつき、真剣な眼差しで、そう優しい口調で尋ねてくる。


 そんな振る舞いを私たちにするもんだから、脳内キャパはとうとう限界を超えてしまい、思わず私は──


「「少し、熱が……」」


 と、みーちゃんも同じことを思っていたようで、2人して同じことを口に出してしまった。



*** 真夜視点 ***


 藤原さんらが俺の姿を見た途端、フリーズしたかのように固まったのを見て、お披露目としては成功だと確信した。


 それに、他の女子たちも息をのむかのように俺を見ているようだ。



 現在、眼帯の逆方向の顔が見えやすいようにハーフバックの髪型に整え、燕尾服えんびふくを着用している。もちろんモノクルも付けているぞ。


 ちなみに他の男子が着ているのはモーニング服だ。

 一応、格と言う意味では燕尾服の方が高いらしいが、日本では朝昼・夜で分ける場合もあるとか。


(それにしても、少し藤原さんたちの顔が赤いな……)


 そこでふと、ちょっとしたいたずら心が働く。


 どうせならもう少しだけドキドキさせたくなったので、ここは執事になりきろうと思い、俺は2人に向かって歩き片膝をつく。


 そして、じっと2人の方を見て優しい口調で尋ねる。


「どうかされましたか、お嬢様? お顔が少し赤いようですが……」

「「少し、熱が……」」


 どんな答えが来るかと思い、待ってみると、まさか2人とも同じこと言うとは思わなかったので、思わず笑いそうになった。


 だがここはグッと堪えてもう少しだけ続けようと考え、言葉を続ける。



「それでしたら、急いでお部屋へ戻りましょう。今日は外も寒く、風邪をひいたら旦那様も悲しみますから」


 ここまで演じきったのはいいのだが、2人の顔がどんどん赤くなっていく。どうやらさっき以上にキャパオーバーになってしまったようだ。


 と、ここまで沈黙を守っていた高橋が我慢できなくなったのか『あはははは! ダメだもう我慢できない。2人とも顔赤すぎるって!!』と言ってしまい、せっかくの雰囲気が台無しだ。


「高橋、今はその服を着ているから許容しているが、脱いだら覚悟しろ?」

「高橋、君はもう少しデリカシーを覚えることだ……」

「待ってくれ、なんでだよ!」


 情状酌量の余地はない。


 それはクラスの女子全員も同じことを思っていたようで、一斉に高橋に対して、『ちょっと、せっかくの空気を壊さないでよー』と責め始めた。


 こうなったらもう続けるのは無理なので、いまだ呆けている2人に謝ることにした。



「すまない。少し悪ふざけが過ぎたか?」

「……え、あ、う、ううん。だ、大丈夫だよ。……ねぇ、みーちゃん」

「う、うん。そうだね、まひる」

「それにしては固まってたな。そんなに似合ってたか?」


「そ、そうね。その、物凄く似合ってる。というか似合い過ぎてちょっと困るかも」

「分かる。なんかもう、これなら絶対にコスプレコンテストなんて優勝間違いなしだよ……」


 話していくうちに、2人とも少しづつ調子を取り戻しつつあるようだ。まぁでもここまで呆けてくれるほど、見惚れてくれるなら着た甲斐があったな。


「そっか。言っとくが山口、本番は山口も衣装を着るんだからな?」

「え? …………あ」


 俺の言葉の意味を理解したのか、山口はまた顔を赤くしていく。


「コスプレコンテス。山口もこのレベルだと思ってくれよ?」


 そういたずらっぽく言うと、山口は無言でただただ頷き、藤原さんも俺の言ってる意味に気が付いたのか、羨ましそうに『いいなぁ』と呟いていた。

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