第五話 巨大獣アビンゴ 謎の怪物を追え 4
俺は巨大獣アビンゴを作る作業に取り組んだが、気が散って仕方が無い。
そりゃああんな巨大なおっぱいが眼前でゆっさゆっさたゆんたゆんしてたら男なら誰でも手が付かなくなるってもんだ。
しかも本人自覚があるのかないのかもよくわからん。
ただ言えるのは、手伝ってくれているのかもしれないけどむしろ足を引っ張られている様な気がして仕方が無い。
「ブキミーダ様ー。わたくし何をすればいいでしょうか?」
「そ、そうだな。それじゃあ向うの方にある蛇みたいな形のパーツを持って来てもらえるか?」
「はい、わかりましたぁ。すぐに持ってきますわ」
あの性格、ツンケンしたキツいオバサンから恋する乙女になってしまっている。
まああの見た目は確かに美人でとても目の保養にはなるが。
「アンタ達、邪魔なのよ。さっさとそこを退きなさい、パーツ集めが出来ないでしょ! あ、そうそう。アンタ達もブキミーダ様の事きちんと手伝いなさいっ」
「「「ハイ、ミザーリン様!」」」
あらあらあら、まるで女王アリと働きアリだ。
ミザーリンは俺には恋する乙女モードで、シャールケンには憧れのアイドルモードだが、それ以外のモブな兵士達にはあまり今までと態度が変わらないようだ。
だがそれでもあの兵士達の顔、見るからにだらしなく鼻の下を伸ばしているので今までよりは過ごしやすい環境なのかもしれない。
美人が職場にいるとやる気が出るってのはあながち間違いじゃないのかもしれない。
俺が巨大獣アビンゴの整備を進めていると、バルガル将軍が姿を現した。
「おおブキミーダ殿。巨大獣の調整は進んでおるか?」
「はい、バルガル将軍殿こそ、もう地球に行く準備は出来ておりますか?」
「うむ、それで……みどりさんに地球の食事が欲しいと言われたのでな、今回は地球の襲撃のついでに彼女の食べたいという食材を確保してこようと思うのだ。どうも彼女、イタリア料理とやらが食べたいというらしいので、捕虜にイタリア料理店のシェフがおるみたいだから食材さえあれば作れるそうだ」
このバルガル将軍がイタリア料理なんて言うと、グルメ漫画のアニメのイタリア料理部主任の恰幅の良いオッサンを思い出す。
「そ、そうですか? それで、捕虜たちはどのように扱っておるのですか?」
「そうだな、捕虜は一日三回の食事と適度な労働をさせておる。病気の者はメインメディカルシステムを使う事も許しておるから体調の管理は完璧だ!」
この状態なら地球とダバール星での全面戦争での大量の殺し合いは無さそうだ。
なんせ原作のブキミーダと来たら、人質の食事と称して人質鍋なる恐ろしい物を作ったヤツだ。
この人質鍋、口にするのも憚れるが――まともな食事を与えず餓死した人質を材料にして煮込み、別の人質に食べさせる――といった何とも悍まし過ぎる所業だった。
浜野監督モブに厳しいにも程がありますよ!
今の時代なら絶対に放送コードでアウトの深夜帯放送ですらモザイクがかかるようなレベルだ。
だが今のバルガル将軍は北原みどりさんという地球人にメロメロになっているので、地球人に対して辛辣苛烈な事をすればみどりさんが悲しむからとそういった行動は見られない。
この流れなら比較的大きな被害も出さずに地球とダバール星の平和的な解決も見えるかもしれない。
なんせ原作で平和のきっかけを全部潰した本物のブキミーダがいないのだから。
この流れなら人格者の三島防衛長官とシャールケン提督がきちんとお互い平和協定を結べれば、火星へのテラフォーミング計画等で物語が無事に完結しそうだ。
「ブキミーダ様、材料を揃えました」
「あ。ああ。ご苦労様」
「やーん、褒めて。もっとわたくしを褒めて下さいませー」
……マジで人ってここまで性格変わるものなのな。
俺はミザーリンと整備班の兵士達の協力で、思ったより早く巨大獣アビンゴを完成させた。
そして拗ねてボイコットしたマーヤちゃんは、今日も本来の部屋の主人である俺を部屋に入れてくれなかった。
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