第五話 巨大獣アビンゴ 謎の怪物を追え 2

 うーむ、どうもやはり何だか俺は自分自身がラブコメの主人公になったような感覚がイマイチよくわからん。


 俺を巡って今はメイドロイドのマーヤちゃんと本来うわキツな女幹部だったミザーリン諜報官が女の争いをしている。

 ハッキリ言って転生しておいて何だがこのブキミーダ、どう考えても女にモテる要素0どころかマイナス、傍にいるだけで嫌悪感しか湧かないレベルの容姿だ。


 だからヤツはコンプレックス解消の為に自分の言う事には何でも素直に従うメイドロイドのマーヤを作ったのだろう。

 マーヤの説明はこれでつくが、問題はミザーリンだ。

 彼女は女スパイとして女の色香を武器にガッダインチームを翻弄した。


 他の作品で言えば光速超神ゴッドマグマの副官ミラージュとか、超魔術限界ロボ・バンガイザーのサロンとか、ミザーリンもどちらかと言うとそういう系のうわキツな女幹部だった。

 だが今の彼女からはそんな雰囲気はまるで感じられない。

 まるで恋する乙女だ、昔のアニメでは目がハートマークになる演出が有ったが、今の彼女はそれよりも昨今の瞳の中にハートマークがある状態のようなもんだ。


 何というか……愛が重い。


 だがこんな事を言えるのは彼女いない歴三十数年の俺にはぜいたくな悩みなのかもしれない。

 二人共はっきり言って安川美人の清楚系な中に母性のあるようなデザインだ。

 とくにミザーリンはあの溶解人間デラのような厚化粧をしなくなり、本当に美人なお姉さんといった雰囲気だと言える。


 人に言わせれば羨ましい悩み?

 いやいや、最近マジで胃が痛いんだよ。


 あーもうとりあえずこのままこの要塞基地に居ても心労が貯まる一方だ。

 そんな時、テレビ電話からいつもの呼び出しだ。


 そしていつもの作戦会議が始まった。


「ブキミーダよ、何か申し開きはあるか?」

「いいえ、特にございません、今回もワシの失態でございます」

「あのなあ、それが通用するのは一度二度だけだ、三度目は無いぞ。心してかかるように!」


 まあ何だ言いながらシャールケン提督はブキミーダ(俺)を斬れないわけで。

 その理由は、俺がいなくなると巨大獣を作る事が出来なくなる。

 だから罰は与えてもブキミーダは最終回近くまで生き残ったわけだ。


 だからこそ視聴者は――コイツ死ねばいいのに!――のヘイトを最終回近くまで抱える事になったわけで。


 まあそのおかげで今の俺が生き残ってるわけだ。

 だから今のうちにどんどん腐れ外道な計画を変更する事でどうにかアピールして俺の味方を増やす必要があるわけだ。

 ――ところで、さっきから何でずっとミザーリンが後ろからしがみついて俺の後頭部におっぱいを押し付けているのだ?


 彼女はもうあの溶解人間メイクは完全にやめたようで、素顔の美人そのものの姿で会議に参加している。


「ところでミザーリンよ、そちは何だか雰囲気が変わったな」

「はい、シャールケン様。わたくしは今まで一人で行動しておりました、ですがそれで失態を犯してしまい、そんなわたくしを助けてくれたのがブキミーダ様だったのです。ですからわたくしは彼と協力して作戦を遂行したいと思っております。この顔の化粧を取ったのは、一人だけで戦う必要性が無くなった為です」


 成程ねぇ。あの溶解人間デラみたいなメイクは一人だけで戦う彼女の心のバリケードだったわけか。


「うむ、そうか。力を合わせて我等ダバールの民の願いを遂行するがよい! ミザーリンよ、今のそちは美しいぞ」


 シャールケンの言葉にミザーリンが顔を真っ赤にして手を当てていた。

 あ、これ完全にアイドルにコンサートで名指しされたファンの心境だ。


「それでは地球侵略作戦会議を始める!」


 シャールケン提督の号令でいつもの作戦会議が始まった。

 参加者はいつもの、バルガル将軍、ミザーリン、そして俺(ブキミーダ)だ。

 どうやらこれからツチノコ騒動の話が始まるわけだ。

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