第四話 巨大獣ゾゾゲゲ 死の沼作戦 6
毒エキスが完成し、俺はそれを見ていた。
なんとも言えない色、まさに魔女の鍋にでも入っていそうな毒々しい紫と茶色の中間のなんとも言えない酷い色だ。
例えるなら、居候の未来ロボットが出てくる作品でのガキ大将がトチ狂って作ったシチューと同じような色、効果音を付けるとするならば、ドローリとしか言えない。
「ご主人様、丹精込めて作ったんです、是非とも味見してください」
「え? マーヤちゃん、それって……まさか!」
「はい、ワタシの作りたての愛情たっぷりの分です、たーんとお召し上がりください」
マ、マーヤちゃん、それって冗談だよね。
マジそんなもん口に入れたら俺どうなっちゃうのよ……!
「まま、ま、待て、話せば、話せばわかる」
「ご主人様、好き嫌いはよくありませんよ、さあアーン」
マジでやめてー! 誰かボスケテー!
俺はつい後ろにつまづき、尻もちをついてしまった。
「はい、パクッ」
「!!?!」
俺はマーヤのすくったスプーンで笑いエキスたっぷりの毒を飲んでしまった。
「ッゲホッゲホゲホゲホ! うげれれおえろろろえれえっれれれえ……」
クソ不味い! そして苦くて甘くて辛くてとにかく悪夢を見そうな味だ。
俺はどうにか井の中の物を全部嘔吐しようとしたが、時すでに遅かった。
「ギャハハハハハハハハッッ! マーヤ、ハハハハハハ、どうするるハハハハんだよハハハハッ」
ダメだ、マジで笑いが止まらん!?
とにかく水を飲まないと、少しでも薄めてどうにか収めない事には……。
だが俺の笑いはしばらく続き、この苦しみは続く事になった、確かに命に別状は無いがこれはマジで死にそうになるレベルだ、酸欠が苦しい……!
「ご主人様、ワタシ何かいらない事しましたか?」
「と、とにかく中和剤を作ってくれ! アハハハハハハアッ」
ダメだ、マジで起き上がれない……。
マーヤちゃんはポンコツで俺の事をどうにもできずに調べものしてるし、誰か……マジで助けてくれー!
「ブキミーダ様、大丈夫ですか?」
バシャッツ。
横たわる俺の全身を誰かが水をかけた。
この声は……ミザーリン?
「ブキミーダ様、わたくしスパイ活動の中で各種の毒の中和法を知っております、さあこれを飲んでください」
ミザーリンが渡してくれたのはどう見ても青汁にしか見えないような色だった。
俺はどうにか苦しみから逃れる為、それを飲んだが、――クソ不味い!
「ウゲェエエエエエッ!」
俺は目を白黒させながらその場に倒れて気を失ってしまった。
「ン……俺は?」
「ブキミーダ様、目を覚ましたのですね」
俺の目の前には泣きそうな表情のミザーリンと困り眉毛のマーヤちゃんがいた。
ミザーリンって、こんなに可愛らしかったのか? メイクの無い彼女は安川美人そのものとも言える清楚な女性といった雰囲気だった。
「このオバハン、ご主人様に何を飲ませたんですか!」
「アンタこそ、ブキミーダ様のメイド失格なんじゃないの!?」
お願いキミ達、俺を巡って争わないで。
どうにか起きあがった俺は毒の抜けたのを体で実感した。
「あー酷い目にあった」
「ご主人様、ごめんなさい」
マーヤちゃんが何度も何度も謝っている。
「大丈夫だ、それに自分の身体でこの毒薬の効果も実感した。これなら作戦に使えるだろう」
「本当ですか! ご主人様」
マーヤちゃんが俺に抱き着いてきた、でもあまり力入れないで、痛いから。
「ブキミーダ様はもう大丈夫みたいね、それではわたくしは部屋に戻りますわ」
そう言ってミザーリンは格納庫から立ち去った。
さて、この笑いエキスの毒液を満タンにまで詰め込んだ巨大獣ゾゾゲゲの準備も終わった。
それでは地球に向かうとしよう。
俺とマーヤは機動要塞ドグローンに巨大獣ゾゾゲゲとグローン円盤を詰め込み、デラヤ・ヴァイデスを後にした。
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