第四話 巨大獣ゾゾゲゲ 死の沼作戦 2

 救急搬送されたミザーリンはうわ言を言っていた。


「ア……あうぅ…………わたく……しの、か……ぉ」

「安心しろ、俺が助けてやるっ!」

「アナタ……は?」

「今は黙ってろ、大人しく寝ているんだ……」


 マーヤちゃんが麻酔薬を注射した。

 ミザーリンはそのまま眠ったようだ。


「マーヤ、今は一刻を争う、すぐにメインメディカルシステムを作動させろ」

「了解です、ご主人様!!」


 ――メインメディカルシステム――


 ガッダイン5大百科に載っていたデラヤ・ヴァイデスの見取り図に有ったのがこのメインメディカルシステム。

 これを使えば重傷者でも傷を治す事が可能だ。

 本編ではバルガル将軍がよくこれを使っていたような気がする。


 俺はメインメディカルシステムでミザーリンを治療した。

 だが、このシステムでも彼女の火傷による顔の痕は残ってしまうという計算が出た。

 それはあまりにも可哀そうだ、俺は造形用3DCG技術の亜流で、立体構成でコンピューターを駆使して彼女の顔の皮膚のマスクを作り、医療用接着剤で着けてやった。


 マーヤが何やら複雑そうな顔をしていたが、彼女も女型のアンドロイドだ。

 顔が二目と見られないものになるのは嫌だと分かっているらしく、俺の作業を忠実にアシストしてくれた。


 大手術は半日以上かかり、どうにかミザーリンの顔は元の彼女の顔に戻った。


 つ、疲れた……、

 俺はマーヤと二人でメディカルルームの椅子に座り眠りこけていた。


 その俺達に毛布を掛けてくれた奴がいたみたいだが、俺とマーヤはそれが誰かわからなかった。

 だが、うっすらと覚えているのはあの人外れた巨体、あれはバルガル将軍だったのだろう。


 オレ達が目を覚まし、ミザーリンを見ると彼女は安らかな寝息を立てていた。

 どうやら峠は越したらしい。


「ン……こ、ここは……?」

「おお、気が付いたか」

「あれ……わたくし、円盤の中で焼け死んだのでは……?」

「ご主人様が貴女を助けたんですよっ、ありがとうぐらい言って下さい!」


 いや、マーヤちゃん、助けたのはキミでしょ。

 俺一人ではあの円盤のハッチは壊せなかったんだから。


「そんな、わたくしは貴方を毛嫌いし、辛く当たっていたのに、普通なら焼け死んでせいせいしたと思うはず……」

「困っている相手、助けを求める相手を見捨てる程、俺は腐りたくない。ましてや女の人が助けを求めていて断る理由があるのかい?」


 昔見た何かのヒーローのセリフだった、何の作品で誰が言っていたかは覚えていないが。


「わたくしの顔……もう二度と元には」

「そんな事ありませんよ、これをどうぞ」


 マーヤが鏡を渡すと、ミザーリンは驚いていた。


「ま、まさか。もうあの火傷で二度と人前には出られないと思っていたのに……――これって」

「感謝してくださいよ、ご主人様がメインメディカルシステムを駆使して治してあげたんですから」


 ミザーリンの表情は憑き物が落ちたような穏やかなものになっていた。


「そんな……わたくしは……」


 そして彼女は身長の低い今の俺の手をギュッと強く握りしめてきた。


「ブキミーダ、いえ……ブキミーダ様。貴方はわたくしの命の恩人です。わたくし、貴方の事を今までバカにしてました。ですが、貴方はそんなわたくしを見返りも求めず助けてくれました」


 い、いや。見返りはしっかりあるんだけどね。


「わたくし、今まで男は利用するもの、自分の道具程度に思っていました。ですが貴方はそんなわたくしに本当の男というものを教えてくれました……」


 え? 何か変な雰囲気なんだが。


「ブキミーダ様、わたくしは貴方をお慕い申し上げます」


 え!? ええええぇぇぇえ?!?!?!


 なんだかマーヤちゃんがものすごく怖い顔でこっちを見ているんだけど、何の因果か俺は命を助けたミザーリンに惚れられてしまったようだ……。

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