第三話 巨大獣ガガビビ なぜだ! 合体不能 2

「一体何してたの、遅いわよ」

「すまない。こちらも作業をしていたので」

「本当にグズね、いやアンタはグズじゃなくてクズだったわね。ホホホホ……」


 コイツ、言いたい放題言いやがって。

 予定の十五分前に来ていて遅いとか言われる筋合いはない。

 俺は社会人の五分前行動より早く来ているじゃないか。


 こういう奴はマジで上司にしたくないタイプのお局様というべきキャラだ。


 コイツの名前はミザーリン諜報官。

 ダバール星人のスパイ担当だ。


 原作では北原未来要塞ベースの職員に成りすまして内部潜入したり、平和活動家のフリをしてガッダイン5反対運動を行うような女だった。


 まあ変装のプロで、その女の部分を利用して神出鬼没で情報を手に入れる諜報戦のスペシャリストというべきか。

 前線で戦う事は少なく、そういう意味ではこの第三話は珍しくミザーリンが前面に立って出撃する話だ。

 どうやらまだキャラの方向性が決まる前だったので、三幹部の一人としての出番を用意したのだろう。


「それで、もう用意は出来てるのかしら?」

「い、いえ。まだ巨大獣は完成しておりませんが」

「マダなの? 今回の作戦、わたくしの言った通りの子を用意してもらわないと困るんだけど」

「はっ。ミザーリン殿のご命令通り、この巨大獣は電磁波遮断システムを搭載したモノになっております」


 ――巨大獣ガガビビ――

 全長56.6メートル、体重1340トン


 電子戦に特化した巨大獣でコンピューターを狂わせる電波を発する。

 怪音波でレーダーを狂わせるのでミサイル系の武器が通用しない。

 だが特化しすぎた部分が多く、その部分を破壊されるとほとんど無力であり、怪電波発射装置をマグネットランサーで破壊され、超電磁スマッシュで爆発。


 これがガッダイン5大百科に書かれている巨大獣ガガビビのデータだ。


 電子戦特化をこの時代の作戦で出すなんて、先見の明有りすぎだろ、浜野監督。


 この11年後の作品、ガッダイン5を下請けで作っていた創幻社が、日本サンシャインに社名変更後の成田監督による作品、飛行戦記バリグナーでは、主人公チームのB-3が電子特化戦の頭部がドーム状の機体だったが、それを敵の雑魚ロボで出すってセンスが素晴らしい。


「それで、この子きちんと使い物になるようにできるんでしょうね?」

「はい。ワシに任せればきちんと完成させてみせますわ」


 最近はブキミーダのフリも慣れてきたとはいえ、この冷たい目線で見降ろされるのはどうも良い気がしない。

 この女が俺(ブキミーダ)に対して良い感情を持つわけが無いからな。


「あ、そうそう。今回の作戦、アンタもついて来なさい」

「え? 何故ですか? ミザーリン殿」

「そんなの決まってるでしょ、もし出先でその子が傷ついたらどうするのよ。修理できるのアンタだけなんでしょ」


 おや、意外だ。

 この女、ひょっとしてロボに対して愛情でもあるのだろうか? 巨大獣の事をこの子呼ばわりしている。


「成程、確かに一理ありますな」

「ご主人様、ご主人様が出るならワタシも行きます」


 あら、マーヤちゃん。居たのね。


「あらそう、まあせいぜい足手まといにならないようにね。あ、アンタって足なかったっけ……ホホホホ、それは失礼」

「……」


 マーヤちゃんが悲しそうな顔をしている。


 ピシャッ!


 俺は思わずカッとなり、ミザーリンの頬をジャンプして引っ叩いてしまった。


「な……何をするのよ、このクズッ!!」

「あ、謝れ。マーヤをバカにした事を、謝れっ!!」


 俺はミザーリンにマーヤちゃんに謝るように叫んだ。


「何よ、このクズッ! 女の顔に手を上げるなんて! 最低ねっ!」

「お前がマーヤをバカにするからだ! 俺の部下をバカにするなっ!」


 険悪な俺とミザーリンの様子を後ろから大男が現れて見ていた。


「何だ何だ? 一体何があったのだ??」


 それは、罰として便所掃除をさせられていたバルガル将軍だった。

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