第二話 巨大獣ゲスラー 母の悲劇! 3

 バルガル将軍が部屋に入るなり大声で叫んだ。


「ブキミーダッ! 貴様、地球人を人質に取ったそうだな! 卑怯な事をするくらいならいっそその場で首をはねるべきではなかったのか!」


 バルガル将軍は卑怯な事を嫌う武人だ。

 そんな彼が人質を取るなんてやり方を認めるわけが無い。


「い、いえ。バルガル将軍殿、この者はガッダインチームの関係者で、あの巨大ロボガッダイン5の秘密を知っておるのです」

「尚更に悪いわっ! こちらだけがコソコソと相手を調べ上げて姑息なやり方だと思わんのか! 恥を知れ恥をっ。地球人はどこだ、吾輩が引導を渡してくれるわ!」


 バルガル将軍は愛剣を握り、みどりさんのいる部屋に踏み込んできた。


「貴様が地球人の人質か! 生き恥をさらすくらいなら吾輩がっ……!」


 勢いよく入ってきたバルガル将軍は、目の前のみどりさんを見てつい剣を落としてしまった。


「か……可憐だ。なんという……」


 青肌のバルガル将軍が傍から見てわかるくらい真っ赤になっている。

 あーあ、これはゾッコンだな、まあその気持ちわからんではないが……。


「私ですか? 私に何か……?」


 みどりさんはバルガル将軍を怯える事も無く、その目をキッと見返した。

 

「い、いえ。貴女は……地球人ですか?」

「はい、私は地球人の北原みどりと申します」

「みっ……みどりっさん。わ……吾っ輩は……バルガルっ将軍ともっも申ししますっ」


 あれだけ普段は猛将と呼ばれるようなバルガル将軍が今はたじたじだ。

 だが実は、俺はこの光景を知っている。


 ガッダイン5に敗れ、捕虜になった時のバルガル将軍の面倒を見たのがみどりさんの娘の千草だった。

 その千草に看病された際のバルガル将軍の態度がまさにこんな感じで顔を真っ赤にしてしどろもどろだったのだ。


 ――ダメだ、笑ってはいけない……。

 だが、俺よりも笑っているのが後ろにいた。

 マーヤちゃん、お願いだから空気読んで。


「バルガル様ですね、何と立派なお姿ですかしら」


 これは間違いなくみどりさんの処世術だ。

 とりあえず相手を褒める事で今の自分の立ち位置を良くする正しいやり方。

 だが、バルガル将軍はそういう事にはまるで免疫がなさそうだな。


「い、いえっ! このようなむさ苦しい所に貴女のようなご婦人を居させてしまい、申し訳ないっ……!」


 むさ苦しい所で悪かったな。

 そんでバルガル将軍はこの後どうするつもりなんだ。

 マーヤはマーヤでさっきからずっとニコニコしたままなんだが……。


 全くわけがわからん。


 まあこの後バルガル将軍が地球に攻め込みに行くのは流れ的には変わらないだろうが。


「ブキミーダ! 貴様、このご婦人を客人として丁重にもてなせっ! 拷問や自白なんてさせようものなら……オレが、殺すっ!」


 コイツもわけわからんキャラだ。

 一人称がオレになったり吾輩になったり……まあ流石にボクは無かったけど。

 そんな空気を変える呼び出しのテレビ電話が鳴り響いた。


「バルガル! それにブキミーダよっ! 直ちに余の元に参れっ!」

「はっ! シャールケン様!」


 どうやら第二話の地球侵略会議が始まるらしい。


「みどりさん、これからは吾輩がお客人として貴女の事をお守りします。どうぞゆっくりして下さい」

 

 みどりさんはきょとんとした表情でバルガル将軍を見つめていた。

 そんな彼女をマーヤはニコニコした表情で生暖かく見守っている。


 マジで何が一体どうなってるんだか、わけがわからん……。


「ブキミーダ、シャールケン様がお呼びだ。すぐに向かうぞ」

「かしこまりました、バルガル将軍殿」


 俺とバルガル将軍は地球侵略会議の為、シャールケン提督の待つ謁見の間に向かった。


「来たか! 二人共。遅いぞっ!」

「はっシャールケン様、申し訳ございません。ほれっブキミーダ、貴様も謝れ」

「ははっ、申し訳ございません」


 そして、会議が始まった。

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