第二話 巨大獣ゲスラー 母の悲劇! 4

「ブキミーダよ、申し開きがあるなら言ってみるがよい!」


 シャールケン提督は俺に対してそう言った。

 原作ではブキミーダが、――ミザーリンがきちんと協力しないから作戦が上手く行かなかった――と弁明していたが、俺はそんな事を言う気は無い。


「い、いえ。シャールケン様、――特にございません……」

「何! 特にないだと!? 貴様、余を愚弄しているのか? 普段の貴様なら何か言うだろうが、それを何も言わぬと申すか!」

「はい、シャールケン様。一つ言わせていただけましたら、この件はワシの失態。是非ともマーヤには寛大な処置をお願いしたく御座います」


 俺のこの態度を見ていたバルガル将軍が助け船を出してくれた。


「お待ちくださいシャールケン様。この者が本当にここまで言い訳をしないのは、そのガッダイン5という敵のロボットが強敵で為すすべがなかったからかと……」


 原作ではこのような展開は無かった。

 むしろ、この小物が……便所掃除でもして出直してこい! と罵倒するくらいだった。


「う、うむ。バルガルがそう言うなら、そなたの顔に免じて今回は許そう」

「お待ちくださいシャールケン様!」

「ミザーリンか、どうした?」


 この女、何かまた俺のいらない事を言うんじゃないのだろうな……。


「この者は地球人の人質を取りながら、その際に敵の戦闘機を鹵獲するチャンスが有ったにも拘らず、それをみすみすと見逃しております、これは許されざることかと」

「何!? 人質だと。ブキミーダ、それは本当か?」

「はい、ガッダインチームの一人の母親を人質にしております」

「でかした、では早速その女を使ってガッダインとやらをおびき寄せろ!」


 その時焦った様子のバルガル将軍がシャールケンに願いを申し出た。


「お言葉ですがシャールケン様!」

「どうした、バルガル将軍。何か不服なのか?」

「はい、次の作戦は吾輩が出ます、その際に人質のような卑劣な方法は取りたくないのです」

「何、そなたは余の作戦が不服と申すか!」

「はい、シャールケン様にはもっと大きな目で戦局を見ていただきたく存じます」


 マジでバルガル将軍……みどりさんを守りたいようだな。

 だがシャールケンがどのような態度に出るか……。


「良かろう、ダバール一の猛将、バルガルの願いだ。そなたの好きにするがよい!」

「はっ、寛大な処置、誠に有難うございます」


 バルガル将軍が深々と頭を下げた。


「ブキミーダよ。そなたも今回の件、弁明をせず部下を守ろうとするとはあっぱれ、見直したぞ!」


 ほっ、これで少しは俺の立ち位置マシになったのかな。


「だが失態は失態だ、貴様には便所掃除を命ずる!」


 なんじゃそりゃ!?


「はっ……しかと、聞き届けました……」


 そして俺は原作通りに便所掃除をさせられる事になった。

 まあ処刑よりはよほどマシか。


「ご主人様、お手伝いに来ました」

「マ、マーヤ、ここは男子便所、お前は向うの女子便所に行ってくれ」

「はい、わかりましたご主人様。でも人間って不便ですね。こんな風に廃棄物を出さないといけないなんて」

「わかった、わかったからこちらに使用済みのブラシを向けないでくれっ‼」

「す、すみませんご主人様!」


 ――あの……マーヤちゃん、謝ろうと下向いた瞬間、ブラシが俺の顔をこすったんですが……。

 やはりこの子はポンコツだ。


 俺は罰当番の便所掃除を終わらせ、ロボット格納庫に向かった。

 そこにはバルガル将軍がいて、巨大獣ゲスラ―を眺めていた。


「おお、ブキミーダ殿。もう便所掃除は終わったのか?」

「はい、終わらせて参りました」

「そうか、それでは早速地球侵略用の巨大獣の制作を頼むぞ」

「はい、承知いたしました」


 ブキミーダの本来の立ち位置はこの巨大獣作成にある。

 だから俺は今から巨大獣ゲスラーの調整をする事になるわけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る