第一話 巨大獣ドドンガー 東京侵略作戦! 2

「ゲグェウッ!」


 俺はいきなりどこかから落ちた。

 イテテテ……あれ? 俺生きている??


 何だか自由にならない身体をのそのそ動かしながら俺は起きあがった。

 どうやら俺はベッドから落ちたらしい。


 あれ? ウチの部屋って布団だったよな……。

 オレどっかのホテルにいるのか??


 そんな俺に可愛らしい女の声が聞こえた。


「ご主人様、お目覚めになりましたか?」


 その声はとても聞き覚えのある声で、あどけなさが抜けなく、それでいてどこか懐かしさを感じた。


 俺は起きあがって鏡を見ようとした。

 身長が届かない!?


 オイオイオイ、俺は成人男性だぜ。なぜこんな子供みたいな……。

 洗面所の踏み台を上った俺が見たものは……想像を絶する不気味な顔だった!


「何じゃこりゃぁあああああっっっ‼‼」


 俺は昔見た刑事ドラマ、『夕日に叫べ!』のジージャン刑事の殉職シーンのセリフを思わず叫んでしまった。

 ――いや、そうもなるだろう。鏡を見たら映っていたのがチビでハゲで頭が大きく顔色が悪い……いや、肌の色が青色で歯抜けの上歯並びが悪く、鼻が小さい不気味な顔が出たら誰でもオバケが出たー! と言いたくなる。


 俺は妖怪になってしまったのか? いや、この顔、見覚えがある……。


「ご主人様、どうかなさいましたか?」

「さっきからご主人様ご主人様って、お前は一体誰だ?」

「ワタシですか? ワタシはメイドロイドのマーヤでございますが。ご主人様」


 メイドロイドのマーヤ? どこかで聞いた事があるような名前……って、確か……ガッダイン5の敵軍団のメイドロボットの名前じゃないか!


 ――超電磁メカ・ガッダイン5(ゴー)――


 俺が小さい頃見ていた合体巨大ロボアニメの名前だ。

 五体のマシンが一つになり、巨大なロボットになる昔の人気ロボアニメ。


 特に敵の司令官、シャールケン提督がお姉さま方に人気が高く、彼の死亡話の後に制作会社に大量のカミソリレターが届いたという逸話もある。


 その以前の巨大ロボアニメ、『王者エメライン』の『プリンスウォーゼン』の流れをくむ悪役美形キャラで、ガッダイン5のライバルとも言えるキャラだ。


 どう考えても俺がシャールケンになったわけが無い。

 となると、この顔、この声……コレってまさか……!


「おい、お前。俺の名前を言ってみろ!」

「ご主人様の、お名前ですか? ブキミーダ様、どうかなされましたか?」


 ――そうだー! このキャラ、思い出した!

 ――ブキミーダ参謀長――このガッダイン5の中で一番の超絶不人気悪役キャラだ。

 あまりの見た目の不気味さに加え、超絶非道で外道な作戦を次々と実行し、敵だけでなく味方からも嫌われていた悪役。


 長い歴史の歴代ロボアニメワーストキャラ5、いや、ワースト3に入る超絶不人気キャラだ。

 残りの二つは侍戦士龍牙のバワード長官と装甲鉄機メタルズのクワン・ユゥー大尉。

 だがこのブキミーダの不人気ぶりはその二人すら上回る、クソオブザクソ、クソの殿堂入りレベルのキャラだ。

 俺は心底このキャラが嫌いだった。


 ――だが何故一体俺は何故このブキミーダ参謀長になってしまったのか!?

 考えても答えにはたどり着かなかった。


「ご主人様、どうかなさいましたか? お顔の色がすぐれませんが……」


 いやいやいや、顔色が悪いと言っても、元から肌の色青色でどうやって違いが分かるんだ?


「いや、大丈夫だ。気にするな」

「そうですか、ご主人様、お食事の用意が出来ております……こちらにお越し下さい」

「ああ、ありがとう」

「ピ……ガがッ……ΔΦΔΨ?」

「おい、どうした?」


 メイドロイドのマーヤはとても素敵なデザインの女性型ロボットだ。

 彼女のデザインは、今の秋葉原系メイドではなく、古代ヨーロッパの宮殿に居そうな薄布を両肩でクロスさせたような上品な姿だった。

 少し吊り目気味のエキゾチックな目にフワフワした金髪、胸は大きく、くびれてスタイルの良い身体。

 だが残念なのは上半身だけで腰から下は空中に浮いたフロートシステムになっている。


「いえ、ご主人様の口からありがとうなんて言葉が出たので……少し戸惑ってしまいました。申し訳ございません」

「大丈夫だよ、そんなに気にしないでくれ」

「ΨΔπΣ÷……」


 どうやら俺が普通の態度を取っただけなのにメイドロイドのマーヤは眼を混乱させてカラフルにグルグル回っている。


 うーむ、前途多難とはこの事を言うのか……。

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