子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!? 

ゆーたん(たけのこ派)

第一話 巨大獣ドドンガー 東京侵略作戦!

第一話 巨大獣ドドンガー 東京侵略作戦! 1

 この奇妙な話は俺の前の人生を語るところから始めた方が良さそうだ。


 俺は大河内おおこうち邦裕くにひろ

 某会社でロボット系エンジニアをやっている。


 俺は港の見える公園に設置する巨大ロボの設計の為、公園を訪れていた。

 明日には工事用のシートが取り外され、一般公開される事になっている。


 ――軌道装機ガンボーグ――


 まず今の日本では知らぬ人のいない伝説のロボアニメだ。

 ガンボーグのプラモデルは、ガンモデと呼ばれ、老若男女問わずに誰でも作れるよう、パーツが色分けされていて塗装技術が無くても素組みで簡単に作れる。

 その為生まれる以前のガンボーグでも知っている子供がいるくらいだ。


 子供用にSDガンボーグも存在した。

 これも人気が高く、武者ガンボーグ、騎士ガンボーグ、傭兵ガンボーグ等のシリーズが色々と存在し、OVA等から現在はDVD、ブルーレイなども作られている。


 俺が総責任者として作っているのはそんなガンボーグの等身大モニュメントだ。

 この公園に作られているのは全長18メートルの作中と同じサイズのものだ。

 長年ロボエンジニアの仕事をしている俺だが、これはやはり小さいころの夢がかなってかなり嬉しい!


 そして俺は等身大ガンボーグの頭部の目のメインカメラ部分の点灯などの確認の為にここに来た。

 今日は祝日らしく、フリーマーケットが開催中だ。


 フリーマーケットでは様々なものが売られていた。

 平成鬼面ライダーの変身ベルト……今年のライダーは鬼面ライダー雷(イナズマ)だったかな。

 他には昔の猫ネコクラブのLPレコードや、ミカ・コーラの未開封の瓶。

 ビンテージの古着に、誰が買うんだこんなもんといわんばかりの錆びついたノコギリ。

 だがそんな中で俺の目に飛び込んできたのは、とてつもなく懐かしい物だった。


 ――超電磁メカ・ガッダイン5(ゴー)DX超電磁ガッダイン合体ボックス!――


 懐かしい! 俺が子供の頃に見た合体ロボアニメだ。

 五つのマシンが一つに合体して巨大ロボになり、悪の侵略者ダバール星人軍団と戦う話だ。

 この武器の超電磁プロペラがどうみても竹とんぼなので、俺達子供は竹とんぼを回しては『超電磁プロペラー!』と叫んだもんだ。

 あまりにも流行りすぎたのと、怪我する子供が多発したので……竹とんぼの使用が禁止になった小学校もいくつもあったくらいで、番組後半になると字幕スーパーで『超電磁プロペラのマネをするのはやめましょう』と表示されるようになった思い出がある。


 いやーしかし懐かしい。

 俺はついこの少し傷んだ大きな箱を子供のような視線で眺めていた。


「おじさん、これいくらなの?」


 俺はつい好奇心で聞いてみた。


「40万円」

「!!!!」


 俺は言葉を失った。

 オイオイ、俺子供の頃これ買ってもらえなくてスタンダードのミサイルがバネで飛び出すやつしか持ってなかったんだぞ。

 大人になったら買おうと思っていたのに俺は心が折れてしまった。


 ――高嶺の花はいつまで経っても高嶺の花――


 つまり、子供の頃には高くて親に誕生日かクリスマスでないと買ってもらえないけど、他の候補も多いので結局買えない。

 だからといって大人になると現存する物が激減し、わずかに残った美品はプレミアがついてしまい結局買えない。


 俺はDXボックスを諦め、足元にあったガッダイン5大百科を見た。

 本はノリが剥がれかけていて、テープで貼り直した後がちょこちょこ見られた。

 この本の値段も3万円。買えない事は無いが、この大百科の内容、俺が小さい頃ボロボロになるまで見ていたので内容はほぼ全部覚えている。


 俺は仕方なくその場を離れ、仕事場に向かった。

 関係者以外立ち入り禁止の工事中のパネルの内側に入った俺は、垂れ幕の下をくぐり、階段を何十段と登り、ガンボーグの頭部付近に到着した。


 本来は展示用にお客様用エレベーターは設置されているが、現在は営業時間外で電源が落ちている。

 なお、ガンボーグのカメラアイとスモーク発射部分は別動力で動いているので問題は無い。

 俺はガンボーグのカメラアイを確認しようとしていた。

 その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「先輩、お疲れさまです」

「ああ、ご苦労様」


 俺の目の前にいたのは技術主任の亀木初(かめきはじめ)だった。


「ついに完成ですね、ガンボーグ」

「みんなが頑張ったおかげだろうよ。夢が叶ったんだよな。俺達の小さい頃憧れた等身大のガンボーグ……」

「俺達の、じゃなくてオレのっすけどね」


 何だ、亀木の様子がおかしい。


「先輩、何一人だけいいカッコしてるんすか、オレだってガンボーグを作りたかったんすよ。それなのに、少し早く生まれたからって……オレの親父はガンダイの専務なんすよ、本来等身大ガンモデは俺が作るはずだったんすから……」

「な、何をする! 止めろ……下手すればお前も落ちるぞ!」

「あー、オレは大丈夫っすよ、命綱つけてますから」


 !? 知らない間に俺の命綱のカラビナが外されていた!

 こ、このままでは転落してしまう……。


「センパイ、死んでくださいよ。ガンボーグはオレが完成させておきますからさー」

「や、止めろぉおおおおっ!」

「さよなら、センパイ」


 ドンッ!


 俺は嫉妬に駆られた後輩に18メートルの高さから地面に落とされてしまった。

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