第2話:廃れたスタンド
目の前に広がるセルフスタンドは、現実世界とほとんど変わらない設備が整っていた。給油機や冷蔵庫、モニターにPOSシステム、どれも見覚えがあるものばかりだ。異世界に来たはずなのに、どうしてこんなに馴染み深い設備が並んでいるのか、不思議で仕方なかった。
「これは…一体、どうなってるんだ?」
思わず口に出して呟く。いくつかのボタンやレバーを試してみるも、特に変化はない。何も起こらないし、ただただ周囲が静まり返っている。そんなとき、ふと視界に入ったのはPOS本体の青いボタン。直感的に、これが何か重要な役割を持っている気がした。
手を伸ばして、そのボタンを押してみる。すると、何もないと思っていた設備が動き出し、モニターに映像が映し出された。反応を見て、驚きと共に一瞬息を呑む。そして、心の中で小さな安堵が広がった。どうやら、何かが始まったらしい。
「すごい…!」
だが、すぐにその静けさを破る足音が聞こえてきた。振り向くと、そこには人型の魔物が立っていた。普通の人間とは明らかに違うその姿。目が合うと、無表情なままじっとこちらを見つめている。
「うそだろ…?」
体が動かなくなり、冷や汗が背中を伝う。魔物はゆっくりと近づいてきて、あっという間に目の前に迫った。恐怖が襲い、どうするべきか一瞬考える暇もなかった。背後のスタッフルームが目に入り、すぐさまそちらに駆け込むことにした。
「まずい…!」
無我夢中でスタッフルームに飛び込んだ。そして、ドアを閉め、すぐに鍵をかける。息を荒げ、動揺を隠せないまま、ドアの隙間から外を覗き込んでみる。
すると、目の前に広がっていたのは、現実世界そのものだった。スタッフルームの中から覗き込む先に、見慣れた風景が広がっていた。あのセルフスタンドの裏側の景色――地球の風景だ。
「戻ってきた…!」
つい、声を漏らしてしまう。安心感が一気に広がり、胸が軽くなる。異世界に来たと思っていたが、どうやら元の世界に戻っていたらしい。まだ状況を完全に把握できていないが、少なくとも一息つける場所に戻ってきたのは確かだった。
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