クロノスチルドレン

厨二病患者

クロノスチルドレン

# 新たな文明の夜明け


時は2040年。

人類は脳と機械を繋げるインターフェースとしてのチップ「ニューロドライブ」を開発した。

この技術は、医療、エンターテインメント、軍事分野で飛躍的な発展をもたらし、思考するだけで機械を操作することを可能にした。

人々は新たな神器だと歓喜。

世界は希望へと満ち溢れていた。


しかし、この希望の光には影も生み出す。

およそ15歳未満の子供たちにニューロドライブを装着すると、未知の化学反応が脳内で発現し、「高速思考」という特殊能力が生まれることが判明。

1秒間で1分以上の思考が可能となり、その能力を駆使してスポーツや学問で類まれな成果を挙げる。

彼らの動体視力はまるで、時間を止めて行動しているかのようだった。

高速思考を発現した子供たちは「クロノスチルドレン」と呼ばれるようになった。


だが、一部の子供たちはその力を悪用し始め、犯罪組織に加担したり暴走行為に及ぶ者も現れた。

社会の治安は急速に悪化し、政府はこの危険な存在を制御するため、極秘政策を進めることとなる。


# 精一杯のしつけ


チルドレン1人が捕縛され、政府の研究対象としてモルモットとなってしまう。

その結果、チルドレンが目を大きく見開き瞳孔が開くことで能力は発動することが判明。

人権を無視した研究を口外されぬようチルドレンは消されてしまう。


このチルドレンの死と引き換えに、政府は彼らを制御する方法を考案。


政府はクロノスチルドレンたちを幽閉する施設を設置した。

この施設では常にまばゆい光を与え続ける部屋となっている。


光は彼らの瞳孔を強制的に開き、高速思考を発動させ続ける。

目を閉じても、まぶたを貫通するほどの光が彼らを照らし続け、休む暇も与えられない。


チルドレンたちの興味を惹きつける施策を謳い、全国にいるクロノスチルドレンと認められた子供たちを幽閉することに成功。

チルドレンたちははなす術がない。

彼らは高速で思考することはできるが、肉体は他の人間と変わらない。

牢獄より強固な施設を脱出することは不可能であった。


その結果、チルドレンたちは2ヶ月で約10年分の思考を強いられる。

娯楽もないこの施設で、暇を潰すことさえできない。


精神も脳も急速に老化を始めた。


幽閉施設の中、チルドレンたちは孤独と苦痛の中で後悔と反省を繰り返していた。

そう。これは大人達が武力では到底勝てない子供達への精一杯のしつけでもあった。


# 10年の孤独


幽閉施設内では、クロノスチルドレンたちがそれぞれ孤独に耐えながらも、わずかな希望を模索していた。


同じ施設にいる仲間たちとわずかな情報を共有しながら、精神的な支え合いを続ける。

だが、10年間の思考に匹敵する時間を強制される中で、何人かの仲間は精神を病み、耐えられなくなっていく。

ランダムに選別された子供は研究対象として別部屋へ移動させられ、何が行われているかは教えられない。

移動させられた者は戻ってこないということだけはわかっていた。


一方で、とあるチルドレンは高速思考の中で外部からのWi-Fi信号があることに気づく。

脳に埋め込まれたニューロドライブ、このチップの本来の目的は脳と機械を接続し操作するためのもの。


外の世界にアクセスする可能性があることに気づいたチルドレンは、その突破口を探り始める。


# 反抗


外部では、チルドレンたちを救おうとするレジスタンスが活動を開始していた。

施設の周囲にインターネット接続可能なデバイスを散りばめ、施設内のニューロドライブとリンクを試みる。


チルドレンたちは、外部からの微弱なWi-Fi信号をキャッチし、自分たちのニューロドライブが外部デバイスと通信できることを発見する。

これにより、外部との情報交換が可能となり、インターネットを経由して施設内のシステムをハッキングし、光の檻の解除を目指す。


クロノスチルドレンを幽閉するために突貫工事で作られたこの施設には綻びがあった。


仲間たちと分担して、高速思考を駆使してセキュリティを突破。

チルドレンたちはついに施設を脱出し、自由を手にする。

だが、その自由は決して単純なものではなかった。


# 子供から大人へ


脱出に成功したチルドレンたちは、政府と対峙する。

圧倒的な思考速度と、機械との連携により大人たちを武力で制圧。

軍の武力を持ってしても、政府は対抗することができなかった。


だが、彼らは自分たちが国の治安を破壊し、新たな混乱を生む可能性に気づく。

いましている行動は、過去に自分たちが行なっていた悪事、つまり武力で治安を壊すことそのもの。

長年の高速思考によって精神が成熟していた彼らは、自分たちが暴力によって政府を倒せば、それが新たな争いを生むだけだと悟る。


チルドレンたちは政府の折衝案を受け入れ、自分たちの能力を制御・封印する治療を受けることを決意する。

この数ヶ月間の幽閉されたこと、人権を無視した研究が進めらていたことは世間に公表しないことを条件に、超法規的措置により罪は免除されることとなる。


ニューロドライブを無効化された彼らは、いつもの日常へと戻っていった。

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クロノスチルドレン 厨二病患者 @tyuni-byou

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